2021年4月30日 (金)

■実施日 2020年9月23日

 

■担当 山口賢治

 

■テーマ 

オンライン上でパターンミュージック 

~通信遅延の問題と時間の共有をテーマに~

 

■概要

コロナウィルスの蔓延状況下において、近日は中学、高校でクラスター感染が広がるなど事態の収束が見込めていない。今後、PCR検査陽性者数の増加に伴い、オンラインによる授業の常態化の可能性もある。

現在の通信環境下でオンラインによる学校教育を実施する場合、最も障害を受ける科目は音楽となる。歌唱や器楽演奏を行う場合、特殊な作品を除き通常はリズムすなわち時間の共有を前提とするが、オンラインの場合は通信遅延や音質の問題があり、大きな制約を受ける。

現在でもヤマハのSYNCROOMなどに代表されるデバイスを介することにより、通信の遅延時間を小さくして、オンライン上でのアンサンブルは可能である。しかし学校の音楽教育の現場においてこのような音楽デバイスを生徒全員に配備することは現実的でない。

今後5G,6Gと通信技術が進めば、特別なデバイスを用意しなくても通信遅延が限りなく小さくなり音質の向上も見込め、オンラインでの音楽活動や教育も制約なく行える環境が整えられると考えられる。しかし、暫くは通信環境の制約を前提とした音楽オンライン教育プログラムの研究と実践が求められる。

昨年度の「~ メトロノームで音楽づくり ~」続いての音楽づくりオンラインワークショッププログラムの試行になった。

 

■準備

ストップウォッチ、各自が声や音が出せる環境

■課題

ストップウォッチによる時間共有の中で音声通信の遅延を織り込んで上で、どのような音楽づくりが可能か探る。

■実施プログラム

①リーダーの合図で手拍子を打つ 

確認事項として遅延時間、遅延時間のズレを調べた。全員同じようにズレるのか、つまり同じ遅延時間で手拍子が揃うのか、それとも受講学生ごとに遅延時間が異なり、手拍子がバラバラに

なってしまうのかを確認した。結果は判然としなかった。手拍子が揃う場合とバラバラになる場合の両方があり、揃わない原因が通信の遅延時間の違いなのか、手拍子を叩くタイミングそのものが合っていないのか、もしくは両方なのか判断できなかった。 

リーダーの合図に対して手拍子を叩く人数を変えて試したが、現在の大学のmeetのシステムだと3~4名くらいまでの妥当な参加人数だと判断した。

②リーダーの合図でストップウォッチのスタートスイッチを押し、10秒後に手拍子を叩く試行を行った。

③ ②でストップウォッチで時間を共有する方法がある程度うまくいくことがわかったので、10秒後、12秒後、14秒後、16秒と2秒毎に手拍子や掛け声を出してみた。これによりオンライン上でのパターンミュージックの実施が可能である判断できた。

④ リーダーと3名の参加者(A,B,C)で次のルールでパターンミュージックを試みた。

   A…10秒から0,1を繰り返しカウントする。

   B…15秒から0,1,2,3,4を繰り返しカウントする。

   C…20秒から0,1,2,3,4,5,6,7,8,9を繰り返しカウントする。

⑤ ④で0の時に手拍子を入れたり、数字を唱える声質をかえてみた。

オンラインの場合、声の強弱変化はマイクのミュートやブースト機能によりあまり効果が出ないので、避ける方が無難に思えた。

⑥ ④や⑤の試行に以下のDの要素を加え、さらなる変化のヴァリエーションを加えた。

   D…30秒、1分、1分30秒、2分になったら数秒拍手を入れる。

⑦適宜即興的に音程を変化させて数字を唱えた。但し、0の時は必ずDの音程にすることをルールとした。その際にD音程が確実に捉えられるようチューナでDの持続音を鳴らす対応をした。このような仕組みにより様々な変化が生じ、かつ音楽的な秩序を感じさせる構成の音楽が表出された。

■考察

ストップウォッチによる時間共有は上手く機能した。各自の遅延時間が同じであれば問題は生じない。もし遅延時間が受講者によって異なる場合が生じた時には、遅延時間が僅かに長い参加者はリーダーの合図より少し早めにスタートボタンを押す対応方法が考えられる。受講生は音楽大学学生で訓練されているので、僅かな始動タイミング調整の能力は有している。

メトロノームを使わずストップウォッチを用いた理由は、メトロノームの場合、スタートボタンを押してから作動するまでに幾ばくかのタイムラグがある機種があるためである。

大勢の参加者の場合、全員が同時に参加することは難しいか、少しずつルールを変えたり加えたりして、ローテーション制を取れば対応できる。

数字を唱える代わりに音具を用いることも考えられ、今後の課題としたい。

2020年10月10日 (土)

■実施日 2020年9月23日

■担当 山口賢治

■テーマ 

箏による音楽づくり 〜武満徹 作曲「11月の菊と霧の彼方から」で使用されている二つのモードを活用して〜

■概要

第2回日本音楽国際コンクール、ヴァイオリン部門の課題曲として作曲されたヴァイオリンとピアノの二重奏曲である武満徹 作曲「11月の菊と霧の彼方から」で使用されているモードを活用し、箏による音楽づくりに当て嵌めてみた。この作品ではモードA(B♭、C、E、F♯、G、A♭)の六音が主となる空間的素描となり、残りの六音によるモードB(D、E♭、F、A、B、C♯)が影のように扱われている。この二つのモードで調絃した箏を用意し、音楽づくりを試みた。参考作品の曲想に寄り添うように爪は嵌めずに指(ピッチカート奏法)で試演した。


YouTube: 箏による音楽づくり 〜武満徹 作曲「11月の菊と霧の彼方から」で使用されている二つのモードを活用して〜

■概要

基本的な動機やモチーフ、中心音は今回設定しなかったので、音楽に捉え所が無い雰囲気となった。これはこれで面白みがあると思われるが、二つのモードの絡み合わせなど再度、工夫をしてより効果的な音楽効果が得られるよう再挑戦してみたいと感じた。

2020年8月15日 (土)

■テーマ
音楽づくりオンラインワークショッププログラムの試行
〜 メトロノームで音楽づくり 〜

■実施日
2020年8月12日

■担当
山口賢治

■概要
コロナウィルス蔓延の状況下では、大勢の人が集まるイベントは難しい。音楽づくりワークショップにおいても同様に多くの人が密集し、声を出したり、体を触れ合う場合もあるため対面での実施には慎重を期す必要がある。
通常の講義授業ではオンライン講義でも充分な学習効果が期待できるが、ワークショップの場合には様々な制約(通信のタイムラグ、画質、音質など)があり対面実施と比較してワークショッププログラムの実行に多くの困難がある。具体的にはリズム遊びなど参加者全員がリズムを共有することを前提としたプログラムは現在の通信環境ではできない。
暫く、まだ人の移動や接触自粛の状態が続くと予想されるので、音楽づくりオンラインプログラムの作成が喫緊の課題となる。
今回は音楽づくりオンラインプログラムの一例としてメトロノームを用いたオンライン上での音楽づくりを試みた。

■プログラム
参考作品としてリゲティ 作曲「100台のメトロノームのためのポエム・サンフォニック」や一柳慧 作曲「電気メトロノームのための音楽」を鑑賞した後、これを参考に各自が用意したメトロノームで音楽づくりを試みた。


YouTube: メトロノームで音楽づくり〜オンラインでのワークショッププログラム〜

■課題
ひとり暮らしで大きな音は出せない部屋、家族が同居している部屋、野外やカフェ、駅構内からなどオンラインで受講している学生の環境がまちまちであった。学内のカフェからオンライン受講している時にはメトロノーム音と共に周りの楽器の練習音や会話が入り込んでしまう現象が起きてしまった。プログラムの計画実施に際して、オンライン受講している学生の環境を考慮に入れることが重要であることがわかった。なるべく周りの音が入らない環境で受講するのが理想であるが、逆に周りの環境音も音楽に取り入れてしまう方法論も考えられる。
音楽づくりオンラインプログラム教材の開発はこれからの重要で大きな課題である。

2020年6月 2日 (火)

2019年度最後の授業です。
1月8日のワークショップはR&PドラムコースのY君がリーダーでブルースを題材に音楽づくりをしました。
箏の調弦とピアノの伴奏譜は坪能先生からいただいたプリントを使いました↓

Photo_3

流れと授業者の感想は以下です。

ワークショップ流れ

ブルースの特徴の説明
(スケールや12小節で回すことコードのテンプレートなどの説明)

実際にブルースの名曲を聴いてもらう。

まとめ
実際に即興で用意したオケや
ピアノバッキング合わせてみる(参加者が慣れてきたら12小節でソロ回しなどしてみる)
ソロ回し↓





YouTube: trim 83EAA239 BE76 452D 9D5C 9B01AD79C685


全体合奏↓





YouTube: trim 778C0759 9B07 48DE A4F2 D7FA4279AA90


ワークショップリーダ学生の感想

琴×ブルースの前例を全然目にした事がなく、今日どうなってしまうのやろうと思ってましたが、意外とみんな
各自のセンス、各自のグルーブでソロ回しなども弾いてくれて、ブルースセッションの新しい可能性なんじゃないか。もしくはブルースセッションに琴って実はめちゃくちゃいいアクセントなんじゃないか。と思ってしまうくらいでした。

反省点としては、もう少しブルースのついて深く掘り下げられたら良かったかなと思いました。ブルースのプレゼンとしての背景が少し薄かったのは今回の1番の反省です。

担当講師の感想
一年間の総決算の授業としてふさわしく、みんなでブルースの音階でピアノや打楽器も加えて様々な奏法を駆使してよく聴き合って音楽づくりが出来ていた。
それぞれの学生が自分の専門分野に戻った時にも邦楽器に触れつつ、この1年間で体験した様々な音楽の構造や様式を思い出して、活躍してくれたら嬉しいです。

吉原佐知子 記

2019年10月17日 (木)

■テーマ
ミュージックコンクレートによる音楽づくり体験
 
■実施日
2019年10月16日

■ワークショップリーダー
音楽音響デザインコース学生3年生

■実施概要
”サウンドスケープ(音風景)”や”ミュージックコンクレート(具体音の組合せによる音楽)”の概念説明や作品例の鑑賞から入り、実際に短いミュージックコンクレートの作成を試みた。予め用意した具体音源10種類の中から5つの音源を選択し、音を組合せて簡易的ではあるが、音楽作品を作った。

Onsozai


                                                                                                                            用意した音源

下記の譜例のようにグループで話し合って、簡単な楽譜を作成し、これに基づきパソコンで音源を構成し、音を聴きながら修正、追加などの作業を行って作った。
 

Hurei



                                                                                                          
譜例


YouTube: ミュージックコンクレートで音楽づくり体験


■まとめ
日本の伝統音楽作品には、例えば宮城道雄 作曲「谷間の水車」にある水車の軋む音を模した尺八の演奏箇所や「虫の武蔵野」の中で虫の鳴き声を描写したと思われる箏の表現などに見られるように、自然の音や音風景を音楽の中に取り入れた作品がある。そう言った意味で、身の周りの音と自分たちの関わりや環境音と文化の関係を改めて考えることは、音楽作品のより深い理解や鑑賞にも役立つと考えられる。ミュージックコンクレート作品の試作体験は、その創作過程を通じて、環境の中で音と私たちのかかわり考えるきっかけとなる良い教材になったと思われる。
当初の計画では、ミュージックコンクレート作品で使用する音素材の採取作業から始める予定であったが、時間や当日の天候のよる理由でワークショップリーダーが予め用意した音源を使用することとした。90分1枠では時間的制約により、まずはそれぞれの音素材をじっくり聞いてみるステップを省略せざろう得ず、充分な音選択の吟味ができなかったが、一応短い作品でも形にすることができたのは意義深い。作品をつくる過程で、それぞれの音素材の持つイメージや意味、象徴に思いを巡らしたり、音によるストーリーを推考する貴重な体験の場を設けることができた。
1954年に設立されたNHK電子音楽スタジでやっていたような内容が、今や学生が一台のパソコンを使って模擬授業形式で、気軽に作って体験できる時代になりテクノロジーの進化を示す授業であったと感じた。充分に時間を確保し、中学生くらいを対象とする教材カリキュラムにまとめると面白いと思われる内容である。

■執筆
山口賢治

2019年9月25日 (水)

◆実施日 2019年9月25日
◆担当ワークショップリーダー:邦楽コース学生
◆テーマ:日本の箏と中国の箏による音楽づくり 〜箏の音色の違いを体感する〜
◆用意した楽器:箏、古箏、打楽器(桶胴、鈴)
◆実施概要:今年度最初の学生によるワークショップは現代邦楽コース所属の中国からの留学生が担当。古箏(中国箏)の奏者で日本の箏を勉強するために来日し、研鑽を積んでいる。音楽づくりを通じて、日本の箏と比較しながら古箏について知ってもらい、日本の箏との合奏も試みた。打楽器と組み合せることにより箏の即興演奏をしやすくする工夫が行われた。

Img_0001













古箏と日本の箏の組合せは邦楽ワークショップの授業では初めてであり、絃、爪、楽器の構造、奏法などの違いを知ることができ、参加学生の興味を惹くことに成功した。下の写真は古箏の爪を装着している様子。日本の箏は爪に装着された皮の輪っかに指を押し込むの対して、古箏は爪をテープで指に巻き付ける装着する。

Img_0004


   
   
   
   
   
   
 

  
  
  


事前に資料(プリントや視聴覚資料)を事前に用意して、分かりやすい解説とワークショップリーダー自身による古箏の見本演奏があれば、より充実した内容になったと思われる。このワークショッププログラムを完成させれば、日本では古箏、中国では日本の箏について知ってもらえる教材として活用が期待出来る。


YouTube: 日本の箏と中国の箏による音楽づくり 〜箏の音色の違いを体感する〜

      

ワークショップリーダーを務めるのは今回が初めてであり、不慣れな点が見受けられたが、経験を積めば古箏および日本の箏の両方を弾く奏者としてオリジナリティのあるワークショップが実施できると感じた。将来母国中国での実施を望む。

記載:山口賢治

2019年9月19日 (木)

【実施日】2019年9月4日  
【担当】山口賢治
【テーマ】打楽器を使って音楽づくり 〜コール&レスポンスとその応用〜
【概要】
手拍子および現代邦楽コースの備品として保管してある様々な打ち物(太鼓、鼓、木鉦、木魚 等)を使って音楽づくりを行った。コール&レスポンスの手法を使い、徐々に小節の拍数が減じてゆく構造やランダムにアドリブを指名する等、参加者の緊張感を誘う工夫を試みた。


YouTube: 打楽器を使って音楽づくり 〜コール&レスポンスとその応用〜

【実施プログラム】
① 0:00〜0:18
A,Bの二つのグループに分け、4/4拍子で2小節(8拍)づつA,B交互に自由なリズムで手拍子を叩いてた。
② 0:18〜0:40
A2小節(8拍)→B2小節(8拍)→A&B1小節(4拍)の繰り返しで手拍子を叩いた。
③0:40〜1:00
 A(8拍)→B(8拍)→ A(4拍)→B(4拍)→ A(2拍)→B(2拍)→ A(1拍)→B(1拍)の区切りで手拍子を試みた。交互の手拍子の拍数を順次縮めることにより集中力が求められる工夫をした。
④ 1:00〜1:24
A(8拍)→B(8拍)→ A&B(4拍)→A(4拍)→B(4拍)→  A&B(4拍)→ A(2拍)→B(2拍) → A&B(4拍) → A(1拍)→B(1拍)と叩いた。 ③の発展系で、拍数の変わる境に A&B(4拍)を挿入した。
⑤ 1:24〜2:22
A(8拍)→B(8拍)→ A&B(4拍)→ A(7拍)→B(7拍)→ A&B(4拍)→ A(6拍)→B(6拍)→ A&B(4拍)→ A(5拍)→B(5拍)→ A&B(4拍)→ A(4拍)→B(4拍)→ A&B(4拍)→ A(3拍)→B(3拍)→ A&B(4拍)→ A(2拍)→B(2拍)→ A&B(4拍)→ A(1拍)→B(1拍)。順次拍数が減じる形式とした。
⑥2:22〜3:05
A(8拍)→B(8拍)→ A(7拍)→B(7拍)→ A(6拍)→B(6拍)→ A(5拍)→B(5拍)→ A(4拍)→B(4拍)→ A(3拍)→B(3拍)→ A(2拍)→B(2拍)→ A(1拍)→B(1拍)。⑤の構成から A&B(4拍)を抜いた形。
⑦ 3:05〜3:17
打楽器選び。
⑧ 3:05〜3:39
打楽器を使って②を実施した。
⑨ 3:39〜4:22
打楽器を使って⑥を実施した。
⑩4:22〜4:55
 全員で4拍→aさん個人の8拍のアドリブ→ bさん個人の8拍のアドリブ→全員で4小節→ cさん個人の8拍のアドリブ→ dさん個人の8拍のアドリブ→全員で4小節→以下同様。アドリブを行うaさん、bさん、cさん、dさんはランダムに指名した。何時自分にアドリブの順番が回ってくるか予測出来ないので、各自緊張感を持って演奏に参加できる仕組みとなっている。アドリブ奏者の指名が1人に重なることがあるが、その際は8拍×2回=16拍のアドリブを行うこととした。

【考察】
今回はコール&レスポンスの応用の一つとして試みとして、様々な応答の枠組みでリズムによる音楽づくりを行った。参加者の音楽的レベルに合わせて応答の枠組みを設定することにより、様々な場で活用出来る方法論であることが確認できた。特に ⑩ の方法はある種のゲーム性があるので、参加者にとって良い意味で緊張感や緊迫感があり、場を盛り上げることができた。反省点としては、打楽器を選ぶ際に各自が自由に好きな楽器を選んでため、AグループとBグールプで音群として音色の違いが明確でなかったが悔やまれた。例えばAグループは高音、Bグループは低音の楽器でまとめるなど、予め音楽的効果を計算して楽器選択の仕掛けや準備をすることにより、より面白く構成が明確な音楽になると思われる。

2019年7月18日 (木)

◆テーマ
「3拍子 4拍子 5拍子」で音楽遊び
 
 
◆実施日
2019年7月17日
 
 
◆担当
山口賢治
 
 
◆概要
周期の異なるリズムや音形パターンの同時演奏を様々なバリエーションを試みた。単純の繰り返しでも周期をずらすことにより、より大きな周期で音楽的変化を自動的に得ることができる。3拍子、4拍子、5拍子の繰り返しパターンを素材や構成の枠組みとした。以前に同様の方法による授業は何回か行ったことがあるが(パターンミュージックの応用 〜各奏者の周期や時間進行の異なる音楽づくり〜 2013年7月17日 他)、今回はさらにこの方法を発展させたワークショッププログラムを実施した。
 
 
◆実施プログラム





YouTube: 「3拍子 4拍子 5拍子」で音楽遊び

 0:00〜0:40
3グループに分かれ、それぞれ3拍子、4拍子、5拍子で拍子頭で手拍子をする同時演奏を行った。
 

 0:40〜1:20
リズムに合わせて、下記に言葉を当てはめた。
Aグループ:きく◯│きく◯│きく◯│きく◯│←3拍子
Bグループ:さくら◯│さくら◯│ さくら◯│さくら◯│←4拍子
Cグループ:あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│←5拍子
(◯は休み)

 
 1:20〜2:22
②を基に、4小節の繰り返しの冒頭に手拍子を入れた。フレーズの繰り返しの冒頭部分が明確にすることを狙う工夫をした。
 
 
 2:22〜3:27
③を基に、4小節に渡りfからpへディミヌエンドさせてくり返した。これによりフレーズ感をより出すことができた。
 
 
 3:27〜3:51
③を基に、4小節に渡りpからfへクレッシェンドさせてくり返した。
 
 
 3:51〜5:02
②の構造を基に各グループの繰り返しの後に1小節の休みを付け加えて、演奏した。休符小節が入ることで、無音の箇所が発生したり、音の厚みの変化を聴き取ることが出来るようになった。
Aグループ:きく◯│きく◯│きく◯│きく◯ │◯◯◯│←3拍子
Bグループ:さくら◯│さくら◯│さくら◯│さくら◯│◯◯◯◯│←4拍子
Cグループ:あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│◯◯◯◯◯│←5拍子
 
 
 5:02〜6:24
③と同様の試みであるが、手拍子の代りにトーンチャイムを使用した。手拍子と異なり、和音の変化が周期的に表れるので、より音楽的な響きとなった。
 
 
 6:24〜7:34
②と似た構造を設定した。
Aグループ:きく 休│きく 休│きく 休│きく 休│ ←1ブロック3秒
Bグループ:さくら 休│さくら 休 │さくら 休 │さくら 休│ ← 1ブロック4秒
Cグループ:あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│ ←1ブロック5秒
その上で、下記の設定条件を課し、試演した。
・各言葉の発音箇所は必ずブロックの先頭にする。
・設定単語の発音は1ブロック当り1回のみ。例えば1ブロック内で『さくら、さくら』と複数回単語を発声してはいけない。但しメリスマ的音の動きや『さ、ささ、くくく、、ら』などの分割や単語構成している音の繰り返しは許可とする。
・言葉はリズムに合わせても、合わせなくてもどちらでも良い。
・声の高低やニュアンス、声色は自由に作って良い。なるべく様々な表情をつくる。
・ブロック内で発声が終了したら、次のブロックの先頭になるまで休みとする。 必ずブロック内で発声を終了させる。ブロックを超えて声を繋げてはならない。
 
 
 7:34〜8:34
下記の構成で⑧と同様の試演を行った。
Aグループ:きく 休│きく 休│きく 休│きく 休│全休│ ←1ブロック3秒
Bグループ:さくら 休│さくら 休 │さくら 休 │さくら 休 │全休│ ←1ブロック4秒
Cグループ:あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│全休│←1ブロック5秒
 
 
 8:34〜9:14
各グループの繰り返しのフレーズの先頭にトーンチャイムを鳴らしながら⑨を行った。
 
 
 9:14〜10:05
②と同じ構成で「きく」「さくら」「あじさい」の言葉の代りにドレミファで歌唱した。リズムや音程のズレの音楽的効果を確認することができた。
 
 
 10:05〜
これまでの試行を基に学生のアイディアで音楽づくりをしてもらった。演奏の一例を示す。
 
 
◆まとめ
今回の方法はとてもシンプルであるが、手拍子、バディーパーカッション、声、器楽など様々な応用が期待出来る。このワークショップを通じて周期の概念や最小公倍数について考えることができるので、音楽と理科や算数教科と関連させれば、総合的学習の教材プログラムとしての活用も可能と思われる。
⑧ ⑨ ⑩については、初めての試みであったが、とても面白い結果となった。部分的にはリズムに嵌らず、フリーリズム的ながらも、大きな枠組みでは繰り返しの構造が把握できるので、今後はこの方法を発展させてプログラムを研究課題としたい。

2019年7月13日 (土)

◆テーマ
箏による音楽づくり 〜メタトナリティ(超調性)による音楽〜

◆担当
山口賢治

◆実施日
2019年7月10日

◆概要
フランスの作曲家、 Claude Ballif クロード・バリフ(1924年5月22日 - パリ - 2004年7月24日)が提唱したメタトナリティ(超調性)の手法を箏に援用した音楽づくりを試みた。メタトナリティとは、シリアスで無調的な音響と調性的な響きの中間的な音楽的性質を目指すシステムである。

◆目的
箏は柱を動かすことにより、様々な旋法や微分音程など自由な音律設定が容易に行えることから様々な音楽づくりワークショッププログラムが試され、実践されている。必要な音や求める音列配置を予めプリセットできるので、簡易的に演奏音の選択が可能である。箏のこの性質を用いれば、メタトナリティシステムも比較的簡易に具現化することができると考え、箏による音楽づくりプログラム教材をひとつ提供することを目的とした。

◆ メタトナリティシステムの解説
1、調性楽曲の主音ような中心となる基礎音を設定する。(今回はC)
2、設定した基礎音に対して増四度(減五度)の音程関係になる音(F♯)は除外し、11音を使って構成する。
3、基礎音に対して完全四度(完全五度)関係にある音(今回はFとG)を調的不変素と呼ぶ。この音が調的な部分を担う。
4、基礎音と調的不変素の間に挟まれた音を旋律的変素と呼び、旋律や旋法の性格を決める要素となる。

Photo




図1 メタトナリティの構成(下記よりダウンロードできます。)
fig1.jpgをダウンロード

◆メタトナリティシステムの箏への適応方法
箏2面で1セットとする。基礎音(C)と調的不変素(F、G)は共通とし、旋律的変素の組合せが異なる下記の3セットを用意した。

A









図2 箏調絃セットA(下記よりダウンロードできます。)
A.jpgをダウンロード
 

B


     

 
 
 
  
 

図3 箏調絃セットB(下記よりダウンロードできます。)
B.jpgをダウンロード

 

C



 
 
 
 
 
 
 
 
図4 箏調絃セットC(下記よりダウンロードできます。)
C.jpgをダウンロード

演奏効果を考慮し、箏Ⅱは箏Ⅰより一オクターブ低く調絃した。
 
◆実施プログラム





YouTube: 箏を使ったメタトナリティ(超調性)による音楽づくり


①各箏セット(A 図2、B 図3、C 図4)の旋法を提示した。0:00〜1:41

②各セットごとに試演。箏Ⅰの4小節アドリブ→箏Ⅱの4小節アドリブ→箏Ⅰと箏Ⅱの4小節アドリブを行った。ピアノによる基礎音Cの連打音を背景音とした。
 Aセット…1:41〜2:25 Bセット…2:25〜3:09 Cセット…3:09〜3:51

③ピアノに変わり基礎音(C)をトーンチャイムで鳴らしながら、各セットごとに点描的もしくは無拍節的な演奏をしてもらった。
 Aセット…3:51〜4:21 Bセット…4:21〜4:55 Cセット…4:55〜5:26

④これまでの試演を踏まえて各グループごとに自由に創作発表を行った。もし可能であれば、システムの主旨を尊重し、アドリブ旋律を奏でる際には中心の基礎音を留意してもらうよう伝えた。
 Aセット…5:26〜6:46 Bセット…6:46〜8:36 Cセット…8:36〜10:54

Aセットの演奏では、中心となる基礎音をドローンとし、箏Ⅰと箏Ⅱの各旋法が共に明確に伝わる演奏だった。Bでは、主に箏Ⅰが旋律的アドリブと担い、箏Ⅱが装飾的音を絡める構成になった。Cでは前半は中心音(基礎音)感じさせない無調的な音空間を形成させ、後半は旋律感を全面に出し、システムを巧みに活用した演奏であった。

◆考察
メタトナリティをテーマとした授業は今回が初めてであった。無調と調性の中間的な響きを求めるシステムなので、演奏の際、音の選択の仕方や抽出方法により旋法感を出したり、十二音技法的な音楽にもすることもできた。この方法論による音楽づくりでは、音楽的効果を明確にするために、演奏者がシステムを良く理解し、演奏をコントロールするためのある程度の技術や知識が必要となると思われる。邦楽ワークショップ受講生は当然、音大学内学生なので、このプログラムに対応できた。ワークショップの内容としては高度な分類になると思われる。

日本の伝統的な旋法には陰旋法、律旋法、民謡旋法、琉球旋法の4種類があり、どれもが完全四度からなる二つのテトラコルドの全音連結からなっている。テトラコルドを成す各音は核音と呼ばれ、核音で挟まれたテトラコルド内に音がひとつ配置される。この配置音の音程の違いにより各種の旋法に特徴づけられる。メタトナリティも基礎音と調的不変素の音程関係が完全四度で、且つ全音で連結されてる部分では日本の伝統音楽の旋法と共通である。なので日本の音楽の旋法から発展させてメタトナリティに繋ぐ教材プログラムへの応用も期待出来る。

今回は参加人数の関係もあり、調絃の組合せセットを3つ選んだが、組合せは全部で36通り考えられる。この試みは視点を変えればポリモードによる演奏になるが、主眼は無調的響きと調的な音響の中間的な音楽を実現することなので、そのための工夫や仕組みを考えることが今後の課題である。

◆参考文献
「はじめての〈脱〉音楽 やさしい現代音楽の作曲法」
 木石岳 編著/川島素晴 監修/自由現代社 刊

2019年7月 4日 (木)

7月3日 邦楽ワークショップ

今回は、箏を全音音階に調弦して、拡大と縮小をテーマにして音楽づくりをした。
最近の学生の作品を聴いていると、フィーリングだけで音楽をつくっている傾向になっているので、構造に着目したテーマを与えて音楽をつくってみた。

内容は以下です。


使用楽器 箏10面 発表の時に一人はピアノにまわった。
調弦 全音音階 A B C♯ D♯ F G A~
参考楽曲 ドビュッシー作曲 「映像」第2集 1曲目

内容
1、全音音階の紹介
2、上記の参考楽曲をピアノ科の生徒に弾いてもらう
3、箏で拡大(2倍ゆっくり弾く)と縮小(2倍速く弾く)を練習して、重ねてみる。
4、逆行(音型を逆に弾く)を練習して、さらにそれを拡大、縮小して重ねてみる。
5.箏の奏法の確認
6、独自の奏法を考えて、それを使って対話してみる。
7、今までの技を使って、拡大縮小をテーマに2つのグループに別れて音楽づくり
8、発表、感想を言い合う


YouTube: 箏による「全音音階」による音楽づくり

感想
2つのグループのうち、拡大縮小をわかり易く発表してくれたグループの作品のみアップした。
ピアノ科の生徒がピアノで参加してくれて、音楽的に幅が広がった。
拡大縮小をテーマにしたことで、いつもはフィーリングのみで作ってしまいがちな学生たちがちゃんと構造を考えて良く聴き合って、それぞれの役割がはっきりした音楽ができた。
これからの音楽づくりにも是非役立てていただきたい。

授業担当 吉原佐知子 記