2019年7月18日 (木)

◆テーマ
「3拍子 4拍子 5拍子」で音楽遊び
 
 
◆実施日
2019年7月17日
 
 
◆担当
山口賢治
 
 
◆概要
周期の異なるリズムや音形パターンの同時演奏を様々なバリエーションを試みた。単純の繰り返しでも周期をずらすことにより、より大きな周期で音楽的変化を自動的に得ることができる。3拍子、4拍子、5拍子の繰り返しパターンを素材や構成の枠組みとした。以前に同様の方法による授業は何回か行ったことがあるが(パターンミュージックの応用 〜各奏者の周期や時間進行の異なる音楽づくり〜 2013年7月17日 他)、今回はさらにこの方法を発展させたワークショッププログラムを実施した。
 
 
◆実施プログラム





YouTube: 「3拍子 4拍子 5拍子」で音楽遊び

 0:00〜0:40
3グループに分かれ、それぞれ3拍子、4拍子、5拍子で拍子頭で手拍子をする同時演奏を行った。
 

 0:40〜1:20
リズムに合わせて、下記に言葉を当てはめた。
Aグループ:きく◯│きく◯│きく◯│きく◯│←3拍子
Bグループ:さくら◯│さくら◯│ さくら◯│さくら◯│←4拍子
Cグループ:あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│←5拍子
(◯は休み)

 
 1:20〜2:22
②を基に、4小節の繰り返しの冒頭に手拍子を入れた。フレーズの繰り返しの冒頭部分が明確にすることを狙う工夫をした。
 
 
 2:22〜3:27
③を基に、4小節に渡りfからpへディミヌエンドさせてくり返した。これによりフレーズ感をより出すことができた。
 
 
 3:27〜3:51
③を基に、4小節に渡りpからfへクレッシェンドさせてくり返した。
 
 
 3:51〜5:02
②の構造を基に各グループの繰り返しの後に1小節の休みを付け加えて、演奏した。休符小節が入ることで、無音の箇所が発生したり、音の厚みの変化を聴き取ることが出来るようになった。
Aグループ:きく◯│きく◯│きく◯│きく◯ │◯◯◯│←3拍子
Bグループ:さくら◯│さくら◯│さくら◯│さくら◯│◯◯◯◯│←4拍子
Cグループ:あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│◯◯◯◯◯│←5拍子
 
 
 5:02〜6:24
③と同様の試みであるが、手拍子の代りにトーンチャイムを使用した。手拍子と異なり、和音の変化が周期的に表れるので、より音楽的な響きとなった。
 
 
 6:24〜7:34
②と似た構造を設定した。
Aグループ:きく 休│きく 休│きく 休│きく 休│ ←1ブロック3秒
Bグループ:さくら 休│さくら 休 │さくら 休 │さくら 休│ ← 1ブロック4秒
Cグループ:あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│ ←1ブロック5秒
その上で、下記の設定条件を課し、試演した。
・各言葉の発音箇所は必ずブロックの先頭にする。
・設定単語の発音は1ブロック当り1回のみ。例えば1ブロック内で『さくら、さくら』と複数回単語を発声してはいけない。但しメリスマ的音の動きや『さ、ささ、くくく、、ら』などの分割や単語構成している音の繰り返しは許可とする。
・言葉はリズムに合わせても、合わせなくてもどちらでも良い。
・声の高低やニュアンス、声色は自由に作って良い。なるべく様々な表情をつくる。
・ブロック内で発声が終了したら、次のブロックの先頭になるまで休みとする。 必ずブロック内で発声を終了させる。ブロックを超えて声を繋げてはならない。
 
 
 7:34〜8:34
下記の構成で⑧と同様の試演を行った。
Aグループ:きく 休│きく 休│きく 休│きく 休│全休│ ←1ブロック3秒
Bグループ:さくら 休│さくら 休 │さくら 休 │さくら 休 │全休│ ←1ブロック4秒
Cグループ:あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│全休│←1ブロック5秒
 
 
 8:34〜9:14
各グループの繰り返しのフレーズの先頭にトーンチャイムを鳴らしながら⑨を行った。
 
 
 9:14〜10:05
②と同じ構成で「きく」「さくら」「あじさい」の言葉の代りにドレミファで歌唱した。リズムや音程のズレの音楽的効果を確認することができた。
 
 
 10:05〜
これまでの試行を基に学生のアイディアで音楽づくりをしてもらった。演奏の一例を示す。
 
 
◆まとめ
今回の方法はとてもシンプルであるが、手拍子、バディーパーカッション、声、器楽など様々な応用が期待出来る。このワークショップを通じて周期の概念や最小公倍数について考えることができるので、音楽と理科や算数教科と関連させれば、総合的学習の教材プログラムとしての活用も可能と思われる。
⑧ ⑨ ⑩については、初めての試みであったが、とても面白い結果となった。部分的にはリズムに嵌らず、フリーリズム的ながらも、大きな枠組みでは繰り返しの構造が把握できるので、今後はこの方法を発展させてプログラムを研究課題としたい。

2019年7月13日 (土)

◆テーマ
箏による音楽づくり 〜メタトナリティ(超調性)による音楽〜

◆担当
山口賢治

◆実施日
2019年7月10日

◆概要
フランスの作曲家、 Claude Ballif クロード・バリフ(1924年5月22日 - パリ - 2004年7月24日)が提唱したメタトナリティ(超調性)の手法を箏に援用した音楽づくりを試みた。メタトナリティとは、シリアスで無調的な音響と調性的な響きの中間的な音楽的性質を目指すシステムである。

◆目的
箏は柱を動かすことにより、様々な旋法や微分音程など自由な音律設定が容易に行えることから様々な音楽づくりワークショッププログラムが試され、実践されている。必要な音や求める音列配置を予めプリセットできるので、簡易的に演奏音の選択が可能である。箏のこの性質を用いれば、メタトナリティシステムも比較的簡易に具現化することができると考え、箏による音楽づくりプログラム教材をひとつ提供することを目的とした。

◆ メタトナリティシステムの解説
1、調性楽曲の主音ような中心となる基礎音を設定する。(今回はC)
2、設定した基礎音に対して増四度(減五度)の音程関係になる音(F♯)は除外し、11音を使って構成する。
3、基礎音に対して完全四度(完全五度)関係にある音(今回はFとG)を調的不変素と呼ぶ。この音が調的な部分を担う。
4、基礎音と調的不変素の間に挟まれた音を旋律的変素と呼び、旋律や旋法の性格を決める要素となる。

Photo




図1 メタトナリティの構成(下記よりダウンロードできます。)
fig1.jpgをダウンロード

◆メタトナリティシステムの箏への適応方法
箏2面で1セットとする。基礎音(C)と調的不変素(F、G)は共通とし、旋律的変素の組合せが異なる下記の3セットを用意した。

A









図2 箏調絃セットA(下記よりダウンロードできます。)
A.jpgをダウンロード
 

B


     

 
 
 
  
 

図3 箏調絃セットB(下記よりダウンロードできます。)
B.jpgをダウンロード

 

C



 
 
 
 
 
 
 
 
図4 箏調絃セットC(下記よりダウンロードできます。)
C.jpgをダウンロード

演奏効果を考慮し、箏Ⅱは箏Ⅰより一オクターブ低く調絃した。
 
◆実施プログラム





YouTube: 箏を使ったメタトナリティ(超調性)による音楽づくり


①各箏セット(A 図2、B 図3、C 図4)の旋法を提示した。0:00〜1:41

②各セットごとに試演。箏Ⅰの4小節アドリブ→箏Ⅱの4小節アドリブ→箏Ⅰと箏Ⅱの4小節アドリブを行った。ピアノによる基礎音Cの連打音を背景音とした。
 Aセット…1:41〜2:25 Bセット…2:25〜3:09 Cセット…3:09〜3:51

③ピアノに変わり基礎音(C)をトーンチャイムで鳴らしながら、各セットごとに点描的もしくは無拍節的な演奏をしてもらった。
 Aセット…3:51〜4:21 Bセット…4:21〜4:55 Cセット…4:55〜5:26

④これまでの試演を踏まえて各グループごとに自由に創作発表を行った。もし可能であれば、システムの主旨を尊重し、アドリブ旋律を奏でる際には中心の基礎音を留意してもらうよう伝えた。
 Aセット…5:26〜6:46 Bセット…6:46〜8:36 Cセット…8:36〜10:54

Aセットの演奏では、中心となる基礎音をドローンとし、箏Ⅰと箏Ⅱの各旋法が共に明確に伝わる演奏だった。Bでは、主に箏Ⅰが旋律的アドリブと担い、箏Ⅱが装飾的音を絡める構成になった。Cでは前半は中心音(基礎音)感じさせない無調的な音空間を形成させ、後半は旋律感を全面に出し、システムを巧みに活用した演奏であった。

◆考察
メタトナリティをテーマとした授業は今回が初めてであった。無調と調性の中間的な響きを求めるシステムなので、演奏の際、音の選択の仕方や抽出方法により旋法感を出したり、十二音技法的な音楽にもすることもできた。この方法論による音楽づくりでは、音楽的効果を明確にするために、演奏者がシステムを良く理解し、演奏をコントロールするためのある程度の技術や知識が必要となると思われる。邦楽ワークショップ受講生は当然、音大学内学生なので、このプログラムに対応できた。ワークショップの内容としては高度な分類になると思われる。

日本の伝統的な旋法には陰旋法、律旋法、民謡旋法、琉球旋法の4種類があり、どれもが完全四度からなる二つのテトラコルドの全音連結からなっている。テトラコルドを成す各音は核音と呼ばれ、核音で挟まれたテトラコルド内に音がひとつ配置される。この配置音の音程の違いにより各種の旋法に特徴づけられる。メタトナリティも基礎音と調的不変素の音程関係が完全四度で、且つ全音で連結されてる部分では日本の伝統音楽の旋法と共通である。なので日本の音楽の旋法から発展させてメタトナリティに繋ぐ教材プログラムへの応用も期待出来る。

今回は参加人数の関係もあり、調絃の組合せセットを3つ選んだが、組合せは全部で36通り考えられる。この試みは視点を変えればポリモードによる演奏になるが、主眼は無調的響きと調的な音響の中間的な音楽を実現することなので、そのための工夫や仕組みを考えることが今後の課題である。

◆参考文献
「はじめての〈脱〉音楽 やさしい現代音楽の作曲法」
 木石岳 編著/川島素晴 監修/自由現代社 刊

2019年7月 4日 (木)

7月3日 邦楽ワークショップ

今回は、箏を全音音階に調弦して、拡大と縮小をテーマにして音楽づくりをした。
最近の学生の作品を聴いていると、フィーリングだけで音楽をつくっている傾向になっているので、構造に着目したテーマを与えて音楽をつくってみた。

内容は以下です。


使用楽器 箏10面 発表の時に一人はピアノにまわった。
調弦 全音音階 A B C♯ D♯ F G A~
参考楽曲 ドビュッシー作曲 「映像」第2集 1曲目

内容
1、全音音階の紹介
2、上記の参考楽曲をピアノ科の生徒に弾いてもらう
3、箏で拡大(2倍ゆっくり弾く)と縮小(2倍速く弾く)を練習して、重ねてみる。
4、逆行(音型を逆に弾く)を練習して、さらにそれを拡大、縮小して重ねてみる。
5.箏の奏法の確認
6、独自の奏法を考えて、それを使って対話してみる。
7、今までの技を使って、拡大縮小をテーマに2つのグループに別れて音楽づくり
8、発表、感想を言い合う


YouTube: 箏による「全音音階」による音楽づくり

感想
2つのグループのうち、拡大縮小をわかり易く発表してくれたグループの作品のみアップした。
ピアノ科の生徒がピアノで参加してくれて、音楽的に幅が広がった。
拡大縮小をテーマにしたことで、いつもはフィーリングのみで作ってしまいがちな学生たちがちゃんと構造を考えて良く聴き合って、それぞれの役割がはっきりした音楽ができた。
これからの音楽づくりにも是非役立てていただきたい。

授業担当 吉原佐知子 記

2019年6月 6日 (木)


6月5日邦楽ワークショップ

題名「巣ごもり地による箏ワークショップ」

対象 大学生五名
使用楽器 箏五面
調弦 平調子
題材 「松竹梅」

内容
1、邦楽曲の古典曲に用いられる地(繰り返しの伴奏パターン)の一種である巣ごもり地(ツルテンツルテン~)の説明と練習をする。
2、学生の一人に巣ごもり地を弾いてもらい(二ス三の繰り返し)、その上で吉原が古典曲「松竹梅」の手事を重ねて弾いて聴かせる。
3、古典奏法の練習(すくい爪、割り爪、かけ爪、流し爪、引き連、後押し、割連、サーラリン、コロリンなど)を練習。
4、習った技を使いながら、巣ごもり地の上でメロディを作って重ねてみる。
5、巣ごもり地の上で対話したり、メロディのほかにも飾りを足してみる。
6、巣ごもり地の速さを色々変えてみて、それに反応して音を重ねてみる。
7、グループで巣ごもり地がどこかでなっているという約束で曲づくり。
8、発表と感想。





YouTube: 巣ごもり地による 箏ワークショップ

感想

今回の作品は巣ごもり地とメロディを一人ずつ交替でまわしてつくりました。良く聞きあってたくさんの技を駆使して古典的でありながら現代の感覚も感じられる作品となりました。
巣ごもり地h、同じく古典の地の一種で良くワークショップで使われる「さらし」より単純なパターンなので、より簡単に音楽づくりができるような感覚でした。
学生も、巣ごもり地があると作りやすかったという感想でした。
三味線でもすぐ弾ける手なので、今後もまた色々な場面で取り入れてみたいと思います

授業担当 吉原佐知子

2019年4月29日 (月)

箏による「さらし」による音楽づくり

実施日2019/4/24

前回は初めての箏による音楽づくりを体験した学生たちでしたが、今週はまた基本的な「さらし」をモチーフにした音楽づくりをして、更に箏に親しんでもらいと共に独自の奏法を使いながら、拍のない音楽も作ってみようという目的で音楽づくりをしてみました。

内容
1.前回の復習で基本奏法の練習、「さらし」の音型練習やさらしを変形して弾いてみる。
2.特殊奏法の復習
3.独自の奏法を発表したり、それを使って対話してみる。
4.さらしのドローンの上で拍ありで重ねたり、拍なしで重ねたりして盛る
5.グループに別れて音楽づくり。(さらしがどこかで鳴っていることと、拍のない部分も必ずいれることを約束とする。)
6.感想を言い合う


YouTube: 箏によるさらしの音楽づくり 2019,4-3


YouTube: 箏によるさらしの音楽づくり 2019,4-2


YouTube: 箏によるさらしの音楽づくり 2019,4-1


授業者感想
1番目のグループは箏専攻の学生が混ざっていたのでとてもきっちりした作品でしたが、筝専攻の学生もすすんで面白い奏法を加えていて画期的だった。まわりの学生も負けずに旋律を重ねていたし、終わり方もまとまっていた。
2番目のグループは全員箏は初心者でしたが、かえって既成概念にとらわれず、独自の奏法も自分の音楽の表現にたくさん取り入れていて、とても感性豊かでよく聴き合っていて良かったと思う。
3番目のグループもほとんど初心者でしたが、2番のグループと同様に、さらしのモチーフの速さを工夫したり、音色を工夫したり、最後に無拍の部分も良く聴き合って素敵な作品ができた。
画像が途中で反転してしまい、失礼いたしました。
先週よりさらに箏を自在に使っている作品ができ、これからますます楽しみになりました。

授業担当 吉原佐知子記

「初めての!箏による音楽づくり」
実施日2019/4/17

まず、2019年の授業は1回目の4/10はオリエンテーションを行いました。
邦楽ワークショップの概要と手拍子や声、ボディを使った音楽ゲームで大いに盛り上がり、にぎやかなスタートをきりました。

そして本時、2回目の4/17は初めて箏を用いての授業で、オーソドックスな「さくら」を導入とした音楽づくりを行いましたが、グループ発表では、さくらのメロディーは一切使用するグループはなく、学生独自のメロディーや奏法が満載の素敵な音楽が出来ました。

内容
1.箏の準備説明
2.基本奏法の練習(さくらを弾いてみる)
3.特殊奏法の練習
4.独自で考案した奏法の発表
5.今までやってきた奏法を重ねたり対話したりしてみる。
6.グループの別れて音楽づくり(「さくら」のメロディーは入れても入れなくても良い)
7.感想を言い合う






YouTube: 箏によるさくらによる音楽づくり 2019,4-1






YouTube: 箏によるさくらの音楽づくり 2019,4-2






YouTube: 箏によるさくらの音楽づくり 2019,4-3


授業者感想

3グループとも、既存の「さくら」のメロディーは使わずに独自のメロディーを使っていること、また、こちらでなにも言わないのに柱を動かして調弦を変えたり(1番目の画像)、同じ奏法で音楽を構築したり(2番目画像)、踊りを入れたり(3番目画像)と、とても個性的な作品が出来ました。
来週からもどんどん新しい音楽が生まれることが期待できて、好調なスタートで乞うご期待です!


授業担当 吉原佐知子 記

2018年11月17日 (土)

サウンド・ペインティング

■実施日:2018年11月14日
■ワークショップ担当:音楽音教デザインコース学生3名
■テーマ:「サウンド・ペインティング」による音楽づくり
■概要:サウンドペインターと呼ばれる指示役が様々な演奏サインを出して、音楽を紡いでいく音楽創作の方法論をサウンド・ペインティングと呼ぶ。受講学生に様々な楽器を持参してもらい、段階を踏みながら、多様な音響や音楽を産み出すことを試みた。


YouTube: サウンド・ペインティング


■まとめ
ロングトーン、点描音、パターン音形、音量や音密度の変化、即興演奏など今まで邦楽ワークショップで学んできた様々な要素の組合せであり、集大成的な意味合いを持つテーマであった。今回は多くの種類の楽器を持ち寄ることにより豊かな色彩感の音響を実現できたところに興味を持てた。またワークショップリーダーが段階を踏んで分かりやすく全体を導くことができていた点で評価できた。各自が持っている音楽性を発揮しつつ、今までの音楽づくりの体験を活かすことができる方法論であることが確認できた。
サウンド・ペインティングを行うに当たり、前提初期条件として使用できる音やモードを指定することにより、音楽の方向性を明確にすることを今後、機会があれば試したい。[担当教員:山口賢治]

2018年11月 1日 (木)

■テーマ 声による音色旋律の試み ~「かえるのうた」を題材に~
■実施日 2018年10月31日
■担当 山口賢治
■対象 中学生以上
■ねらい
通常、旋律とはリズムと音程の変化とその組合せによるが、これに音色の要素を加え、旋律に対する概念を拡張した方法論である。アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg, 1874年9月13日 - 1951年7月13日 オーストリアの作曲家・指揮者・教育者。 調性音楽を脱し無調に入り、十二音技法を創始したことで知られる。)提唱した概念であり、彼や同じ新ウィーン学派のアントン・(フォン・)ヴェーベルン(Anton (von) Webern 1883年12月3日 - 1945年9月15日)らによって実践され、十二音技法との組み合わせにより、後のセリー音楽へと繋がった。 今回は、誰でも知っている童謡「かえるのうた」を題材に声を使って音色旋律による音楽づくりを試みた。

■プログラム
① 「かえるのうた」の練習の練習を行った。オーミングアップであり、歌を専攻する参加者がいれば、発声の指導をここでしてもらうことも考えられた(次回の課題)。
② 輪唱を試みた。 2小節づつ、 1小節づつ、2拍づつ、1拍づつのズレの輪唱を行った。ここをアイスブレイクとして、参加者同士が打ち解けてもらう箇所とすることが想定される。
③ 音色旋律の概念の説明した。
鑑賞1 シェーンベルク 作曲「5つの管弦楽曲」第3楽章 同一和音を異なる楽器編成の間で継続して受け渡す。同じ和音でも音色が変化し、響きの質感に変化を与える効果を確認した。
鑑賞2 ヴェーベルン編曲「音楽の捧げもの」より「6声のリチェルカーレ」 オーケストラ版





YouTube: J.S. Bach/A. Webern: Ricercar a 6 ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Antonello Manacorda

旋律が様々な楽器に受け渡されながら奏でられるところを聴いてもらい、旋律に音色の変化とその組み合わせの要素が組込まれていることを確認してもらった。
④ ヴェーベルン編曲版を参考に「かえるのうた」を題材に旋律の受け渡しを試みた。下記の譜例メモが示すように歌詞の区切り方を変えて、様々な旋律の受け渡しを行った。譜例メモの中に記載がある A→B→C・・・のアルファベット記号順に歌い手が変わっていくことにより、音色(声色)が変化しながら旋律が進行して行く様子を実感してもらった。

1








譜例メモ1

2









譜例メモ2

3











譜例メモ3

4














譜例メモ4

⑤ グループに分かれ、各グループごとに音色構成を自分達で組み立てて、発表してもらった。

Photo











作成楽譜メモ





YouTube: 声による音色旋律の試み ~「かえるのうた」を題材に~

⑥ 音色旋律での輪唱も試みたが、これは複雑になってしまい、今回はあまり上手くいかなかった。

■まとめ
誰でも知っている「かえるのうた」を題材としたので、導入はしやすかった。声を積極的に出してくれる人を対象とすれば、有効な方法論だと感じた。声を出すことに躊躇する人も一部にいることも考えられるので、その場合にはふたりで一緒に声を出すなどの工夫と配慮も行った。 歌の実習の場でこの方法論によるワークショップを再び試みてみたい。さらに声色の変化がポイントとなるので、様々な出身の歌い手(クラッシック、邦楽、ポップス)が混ざった参加者構成であれば、発声や歌い方の特徴が明確となり、音色旋律の効果がより顕著に表出すると思われ、興味深い結果がもたらされると思われる。またハーモニカ、鍵盤ハーモニカ、リコーダーなど旋律楽器を用いる応用も可能であるので、次の課題としたい。

■考察
近現代の楽曲においては本テーマで取り上げた音色旋律の他に、様々な打楽器の導入や電子音楽の導入、発展など音色に対する重要性が増してきていると思われる。日本の代表的な伝統楽器のひとつである尺八においては、音色と旋律との関係が密接につながっており、不可分な関係性にある。特に尺八古典本曲においてその特性が顕著に表れており、演奏者にとっても奏でられる旋律と音色の連なりのコントロール法や美意識の持ち方は大きな研究課題である。戦後、当時の作曲技法の最先端を知り、実践していた諸井誠や廣瀬量平らが尺八に注目し作曲し始めたのも、こうした音色に対する認識の変化や高まりと関係があるのではないかと推測できる。本ワークショッププログラムを通じて、こうした音楽における音色に対する姿勢や文化面からの考察に立ち入るきっかけとして、日本ぼ伝統音楽に踏み込んでいく方法も考えられる。

2018年10月18日 (木)

■実施日 9月19日

■担当:山口賢治

■テーマ:尺八のアタック法(アタリ)と各種技法を用いた音楽づくり

■用意する楽器:アダプター付き尺八

■概要とねらい。
全員、音が出せるように原則尺八アダプター(尺八歌口部に装着するリコーダーの吹き口のような吹奏補助具)をつけた楽器を用いた音楽づくりを行った。アダプターを装着すると尺八の吹奏法の特徴である顎の動きが制限されてしまうので、フィンガリングのみの技法を音素材とした。
尺八は原則としてタンギングを行わないので、フィンガリングによるアタック法を用いる。このアタック法の体系をアタリを呼ぶ。アタリは曲や流派、奏者によって様々であり、この技法と息の使い方で曲調が左右される。
具体例を示しながらアタリの技法の説明と実践を通じて、西洋の管楽器の基本技術であるタンギング奏法とは異なるアタック法について知ってもらうことと、その他各種の尺八技法を組み合わせて音楽づくりを試みた。

■プログラム
①尺八の持ち方、吹き方の復習をした。
②フィンガリングによる連続音の処理やアタック法の説明を行った
③それらの技法を用いた曲の演奏例として古典本曲「本手調子」を演奏した。
④「本手調子」の中で頻繁に出てくる”ツレ(FG)”の音形を例アタリの実例を示し、アダプター付き尺八で真似をして貰った。
⑤トレモロやトリルの奏法に該当するコロコロ、カラカラなどの技法の説明と実践した。
⑥2群に分けて、上で試した技法による音の集積音群の音量変化により音楽づくりを行った。さらにソリスト(独奏尺八やピアノをソロ楽器に指定)を決め、集積音群を背景にソリストによるアドリブ演奏も試みた。集積音群をコントロールする指揮役とソリストやソロ楽器の組合せを変えて、何回か試奏した。
⑦ ここまでを参考に各自が特殊技法や手を作って一人ひとり発表してもらった。重音とトレモロの組合せなど様々なアイディアで一本の尺八出る音の多様性を感じてもらった。

■まとめ
⑦のプログラムセクションで、他人が発した音や音響に対して、他の学生にランダムに指名して、何かしらのコメントをしてもらった。ワークショップで大切ことのひとつのコメント力が求められる。受講学生は各々専門の音楽知識と技術を持っており、それを元に音楽表現する経験は積んでいるが、コメント力はまた経験が浅く未熟な面があると感じられた。次回より学生がリーダーとなってワークショップを行うが、リーダーには特にこのコメント力が必要に迫られるので、今後、この点を学ぶ機会として各学生に頑張ってもらいたいと思っている。

■授業日:9月26日
■担当教員:山口賢治
■ワークショップリーダー:ロック&ポップス学生
■テーマ:メロディーのくっつけっこ遊び 
 〜短い音形断片の連結による旋律づくり〜
■実施概要
ひとり一人がつくった短いリズム断片や旋律断片を数珠繋ぎにして、フレーズを紡ぎ出す方法による音楽づくりを行った。

参加者Aの提示音形 ♩♩♩✓
参加者Bの提示音形 ♪♩♪♩✓
  ↓
AとBを繋げて ♩♩♩✓│ ♪♩♪♩✓
    ↓
参加者Cの提示音形 ♬♬♫♩♩
  ↓
AとBとCを繋げて ♩♩♩✓│ ♪♩♪♩✓│♬♬♫♩♩
  ↓
参加者Dが提示音形 ♬♪♬♪♫♩
  ↓
AとBとCとDを繋げて ♩♩♩✓│ ♪♩♪♩✓│♬♬♫♩♩│♬♪♬♪♫♩
以下同様

上記の原理に従い、様々なヴァリエーションで音楽づくりを行った


YouTube: リレー形式による旋律作りとその応用

 

■考察
フレーズの連なりが、長くなるにつれてメロディーが憶え切れなくなることが予想されるので、4〜5名までに留める予定であった。しかし受講生は訓練を受けた音大生なのでどこまでフレーズを長く記憶できるかにチャレンジしてみた。リーダーを務めたヴァーカルの稲川さんは大変優秀で、どんなに旋律断片の連なりが長くなっても、すべて順番通り記憶し、再現して歌うことができた点に高い評価が与えられる。リズムや旋律の記憶と再現の訓練に役立つ方法論であった。