2018年11月17日 (土)

サウンド・ペインティング

■実施日:2018年11月14日
■ワークショップ担当:音楽音教デザインコース学生3名
■テーマ:「サウンド・ペインティング」による音楽づくり
■概要:サウンドペインターと呼ばれる指示役が様々な演奏サインを出して、音楽を紡いでいく音楽創作の方法論をサウンド・ペインティングと呼ぶ。受講学生に様々な楽器を持参してもらい、段階を踏みながら、多様な音響や音楽を産み出すことを試みた。


YouTube: サウンド・ペインティング


■まとめ
ロングトーン、点描音、パターン音形、音量や音密度の変化、即興演奏など今まで邦楽ワークショップで学んできた様々な要素の組合せであり、集大成的な意味合いを持つテーマであった。今回は多くの種類の楽器を持ち寄ることにより豊かな色彩感の音響を実現できたところに興味を持てた。またワークショップリーダーが段階を踏んで分かりやすく全体を導くことができていた点で評価できた。各自が持っている音楽性を発揮しつつ、今までの音楽づくりの体験を活かすことができる方法論であることが確認できた。
サウンド・ペインティングを行うに当たり、前提初期条件として使用できる音やモードを指定することにより、音楽の方向性を明確にすることを今後、機会があれば試したい。[担当教員:山口賢治]

2018年11月 1日 (木)

■テーマ 声による音色旋律の試み ~「かえるのうた」を題材に~
■実施日 2018年10月31日
■担当 山口賢治
■対象 中学生以上
■ねらい
通常、旋律とはリズムと音程の変化とその組合せによるが、これに音色の要素を加え、旋律に対する概念を拡張した方法論である。アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg, 1874年9月13日 - 1951年7月13日 オーストリアの作曲家・指揮者・教育者。 調性音楽を脱し無調に入り、十二音技法を創始したことで知られる。)提唱した概念であり、彼や同じ新ウィーン学派のアントン・(フォン・)ヴェーベルン(Anton (von) Webern 1883年12月3日 - 1945年9月15日)らによって実践され、十二音技法との組み合わせにより、後のセリー音楽へと繋がった。 今回は、誰でも知っている童謡「かえるのうた」を題材に声を使って音色旋律による音楽づくりを試みた。

■プログラム
① 「かえるのうた」の練習の練習を行った。オーミングアップであり、歌を専攻する参加者がいれば、発声の指導をここでしてもらうことも考えられた(次回の課題)。
② 輪唱を試みた。 2小節づつ、 1小節づつ、2拍づつ、1拍づつのズレの輪唱を行った。ここをアイスブレイクとして、参加者同士が打ち解けてもらう箇所とすることが想定される。
③ 音色旋律の概念の説明した。
鑑賞1 シェーンベルク 作曲「5つの管弦楽曲」第3楽章 同一和音を異なる楽器編成の間で継続して受け渡す。同じ和音でも音色が変化し、響きの質感に変化を与える効果を確認した。
鑑賞2 ヴェーベルン編曲「音楽の捧げもの」より「6声のリチェルカーレ」 オーケストラ版





YouTube: J.S. Bach/A. Webern: Ricercar a 6 ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Antonello Manacorda

旋律が様々な楽器に受け渡されながら奏でられるところを聴いてもらい、旋律に音色の変化とその組み合わせの要素が組込まれていることを確認してもらった。
④ ヴェーベルン編曲版を参考に「かえるのうた」を題材に旋律の受け渡しを試みた。下記の譜例メモが示すように歌詞の区切り方を変えて、様々な旋律の受け渡しを行った。譜例メモの中に記載がある A→B→C・・・のアルファベット記号順に歌い手が変わっていくことにより、音色(声色)が変化しながら旋律が進行して行く様子を実感してもらった。

1








譜例メモ1

2









譜例メモ2

3











譜例メモ3

4














譜例メモ4

⑤ グループに分かれ、各グループごとに音色構成を自分達で組み立てて、発表してもらった。

Photo











作成楽譜メモ





YouTube: 声による音色旋律の試み ~「かえるのうた」を題材に~

⑥ 音色旋律での輪唱も試みたが、これは複雑になってしまい、今回はあまり上手くいかなかった。

■まとめ
誰でも知っている「かえるのうた」を題材としたので、導入はしやすかった。声を積極的に出してくれる人を対象とすれば、有効な方法論だと感じた。声を出すことに躊躇する人も一部にいることも考えられるので、その場合にはふたりで一緒に声を出すなどの工夫と配慮も行った。 歌の実習の場でこの方法論によるワークショップを再び試みてみたい。さらに声色の変化がポイントとなるので、様々な出身の歌い手(クラッシック、邦楽、ポップス)が混ざった参加者構成であれば、発声や歌い方の特徴が明確となり、音色旋律の効果がより顕著に表出すると思われ、興味深い結果がもたらされると思われる。またハーモニカ、鍵盤ハーモニカ、リコーダーなど旋律楽器を用いる応用も可能であるので、次の課題としたい。

■考察
近現代の楽曲においては本テーマで取り上げた音色旋律の他に、様々な打楽器の導入や電子音楽の導入、発展など音色に対する重要性が増してきていると思われる。日本の代表的な伝統楽器のひとつである尺八においては、音色と旋律との関係が密接につながっており、不可分な関係性にある。特に尺八古典本曲においてその特性が顕著に表れており、演奏者にとっても奏でられる旋律と音色の連なりのコントロール法や美意識の持ち方は大きな研究課題である。戦後、当時の作曲技法の最先端を知り、実践していた諸井誠や廣瀬量平らが尺八に注目し作曲し始めたのも、こうした音色に対する認識の変化や高まりと関係があるのではないかと推測できる。本ワークショッププログラムを通じて、こうした音楽における音色に対する姿勢や文化面からの考察に立ち入るきっかけとして、日本ぼ伝統音楽に踏み込んでいく方法も考えられる。

2018年10月18日 (木)

■実施日 9月19日

■担当:山口賢治

■テーマ:尺八のアタック法(アタリ)と各種技法を用いた音楽づくり

■用意する楽器:アダプター付き尺八

■概要とねらい。
全員、音が出せるように原則尺八アダプター(尺八歌口部に装着するリコーダーの吹き口のような吹奏補助具)をつけた楽器を用いた音楽づくりを行った。アダプターを装着すると尺八の吹奏法の特徴である顎の動きが制限されてしまうので、フィンガリングのみの技法を音素材とした。
尺八は原則としてタンギングを行わないので、フィンガリングによるアタック法を用いる。このアタック法の体系をアタリを呼ぶ。アタリは曲や流派、奏者によって様々であり、この技法と息の使い方で曲調が左右される。
具体例を示しながらアタリの技法の説明と実践を通じて、西洋の管楽器の基本技術であるタンギング奏法とは異なるアタック法について知ってもらうことと、その他各種の尺八技法を組み合わせて音楽づくりを試みた。

■プログラム
①尺八の持ち方、吹き方の復習をした。
②フィンガリングによる連続音の処理やアタック法の説明を行った
③それらの技法を用いた曲の演奏例として古典本曲「本手調子」を演奏した。
④「本手調子」の中で頻繁に出てくる”ツレ(FG)”の音形を例アタリの実例を示し、アダプター付き尺八で真似をして貰った。
⑤トレモロやトリルの奏法に該当するコロコロ、カラカラなどの技法の説明と実践した。
⑥2群に分けて、上で試した技法による音の集積音群の音量変化により音楽づくりを行った。さらにソリスト(独奏尺八やピアノをソロ楽器に指定)を決め、集積音群を背景にソリストによるアドリブ演奏も試みた。集積音群をコントロールする指揮役とソリストやソロ楽器の組合せを変えて、何回か試奏した。
⑦ ここまでを参考に各自が特殊技法や手を作って一人ひとり発表してもらった。重音とトレモロの組合せなど様々なアイディアで一本の尺八出る音の多様性を感じてもらった。

■まとめ
⑦のプログラムセクションで、他人が発した音や音響に対して、他の学生にランダムに指名して、何かしらのコメントをしてもらった。ワークショップで大切ことのひとつのコメント力が求められる。受講学生は各々専門の音楽知識と技術を持っており、それを元に音楽表現する経験は積んでいるが、コメント力はまた経験が浅く未熟な面があると感じられた。次回より学生がリーダーとなってワークショップを行うが、リーダーには特にこのコメント力が必要に迫られるので、今後、この点を学ぶ機会として各学生に頑張ってもらいたいと思っている。

■授業日:9月26日
■担当教員:山口賢治
■ワークショップリーダー:ロック&ポップス学生
■テーマ:メロディーのくっつけっこ遊び 
 〜短い音形断片の連結による旋律づくり〜
■実施概要
ひとり一人がつくった短いリズム断片や旋律断片を数珠繋ぎにして、フレーズを紡ぎ出す方法による音楽づくりを行った。

参加者Aの提示音形 ♩♩♩✓
参加者Bの提示音形 ♪♩♪♩✓
  ↓
AとBを繋げて ♩♩♩✓│ ♪♩♪♩✓
    ↓
参加者Cの提示音形 ♬♬♫♩♩
  ↓
AとBとCを繋げて ♩♩♩✓│ ♪♩♪♩✓│♬♬♫♩♩
  ↓
参加者Dが提示音形 ♬♪♬♪♫♩
  ↓
AとBとCとDを繋げて ♩♩♩✓│ ♪♩♪♩✓│♬♬♫♩♩│♬♪♬♪♫♩
以下同様

上記の原理に従い、様々なヴァリエーションで音楽づくりを行った


YouTube: リレー形式による旋律作りとその応用

 

■考察
フレーズの連なりが、長くなるにつれてメロディーが憶え切れなくなることが予想されるので、4〜5名までに留める予定であった。しかし受講生は訓練を受けた音大生なのでどこまでフレーズを長く記憶できるかにチャレンジしてみた。リーダーを務めたヴァーカルの稲川さんは大変優秀で、どんなに旋律断片の連なりが長くなっても、すべて順番通り記憶し、再現して歌うことができた点に高い評価が与えられる。リズムや旋律の記憶と再現の訓練に役立つ方法論であった。

2018年6月27日 (水)

「春の海」による音楽づくりはたびたびしていましたが、今回は春の海の音楽づくりに最適な調弦を考案してそれを使って音楽づくりをしました。

調弦

ミ、シ、レ、ミ、ラ、シ、レ、ミ、ファ、ラ、シ、レ、ミ(一と四は同音)

下の一、二、三絃は「春の海」の冒頭のミーシレの音でドローン絃とする。

四絃は主音のミとして、五絃以降は原曲の調弦のままで、旋律づくりなどに使う。

内容

1今回の調弦の説明をして、春の海の冒頭を少し練習してみる。

2、春の海に出て来る、海や波を表現している部分の技やフレーズを練習する。

3、独自の考える海を箏で表現してみる。

4、2人で1面で向き合い、今まで練習したものをの重ねてみる。

5、グループに別れて創作、発表。


YouTube: 「春の海」の音楽づくり2018-3


YouTube: 「春の海」の音楽づくり2018-2


YouTube: 「春の海」の音楽づくり2018-1

感想

やはり今回の調弦で音楽づくりをするとすぐに春の海の音楽づくりができた。

ドローン絃と旋律絃を決めているので役割もはっきりしていて、向かい合って音楽をすることでいつもより相手の音が聴きやすいためだと思う。

箏の調弦が自由自在に替えられるという特性をいかしたワークショップだと思う。

授業担当 吉原佐知子

2018.6,6実施

箏で「雨」による音楽づくり

箏曲には「雨」を題材にした作品が多いのでその作品を参考に音楽づくりをしてみました。

筝の調弦は

半分は「水の変態」と同じ調弦(雲井調子より巾は九の甲)

半分は坂本勉「雨」と同じ調弦(平調子より巾は十の甲、為は八の甲。斗は七の甲)

内容

1、まず、何も聞かないで、自由に「雨」の音をイメージした音やフレーズを探してもらい、発表してもらう。(2人で向い合わせで合わせて作っても良い)

2、宮城道雄「ロンドンの夜の雨」を吉原が演奏したのち、雨を連想するフレーズや技をみんなで練習する。

3、宮城道雄「水の変態」の雨から雪の部分の手事を吉原が演奏したのち、同様に雨を連想するフレーズを練習する。

4、坂本勉「雨」という曲を吉原が演奏したのち、同様に雨を連想するフレーズや技を練習する。

5、吉原のドローンの上で旋律を作って回してみる。

6、今まで練習した自分なりの「雨」をイメージした技やパターン、旋律を持ち寄り、グループに別れて音楽づくり、発表(調弦を替えても良い)

2018年6月20日


YouTube: 箏による「雨」の音楽づくり2018-1


YouTube: 箏による「雨」の音楽づくり2018-3


YouTube: 箏による「雨」の音楽づくり2018-2

感想

「雨」を題材にすることで擬音ばかりにならないか心配でしたが、そんなことはなく、それぞれのグループは個々の「雨」の音を持ち寄り、それをうまく組み合わせて構成をよく考えながら音楽づくりをしてくれていました。全体ワークショップでそうならないようにパターンを重ねたり、対話して合わせる練習をした効果だとおもいます。

学生の感想も「雨」の題材が筝によく合っていて作りやすかったとのこと。

自然の音は和楽器に合うことを再認識しました。

授業担当 吉原佐知子

2018年5月31日 (木)

今回は2018年度二度目の箏を使った授業でした。

一回目は箏が初めてという学生が多かったので、「さくら」を練習して簡単な音楽づくりをして終わりました。

2度目の今回は特殊奏法と、独自ので見つけた新しい奏法を探してもらい、常に「さらし」がどこかで鳴っているということと、拍がある部分と拍のない部分を考えて音楽づくりをするという約束で音楽づくりをしました。

4つのグループがありましたが、そのうちの2グループをアップします。

1つ目のグループは全員違う国籍の学生でした(日本、韓国、中国、ノルウェー)が国境をこえた素晴らしい作品になっています。

2つ目のグループは無拍→有拍→無拍のABA形式が自然な流れで出来ており、良く聴きあっているのがわかります。

どの学生も箏をさわるのは2度目とは思えないほど自由に箏で音楽づくりにチャレンジしてくれています。

今年の学生はそれぞれ個性的で新しいことを喜々として披露してくれるので、これからもとてもたのしみです。


YouTube: 箏による「さらし」による音楽づくり2018-1


YouTube: 箏による「さらし」による音楽づくり2018-2


授業担当 吉原佐知子

2017年10月27日 (金)

今回は5音音階で弾ける「夏祭り」を題材に、箏と打楽器で音楽づくりをしてみました。

曲の伴奏づくりではなく、夏祭りの一部分をモチーフにして音楽づくりができるように指導しました。

そうすると5音音階のありものの曲ならどんな曲でも全曲弾けなくても音楽づくりをすることによって親しめるということが実感できれば良いとおもいました。

授業担当 吉原佐知子


YouTube: 箏で「夏祭り」による音楽づくり

今回はピアノ科2年生のK君によるワークショっぷです。

内容は以下です

箏を使った「もみじ」を題材にしたワークショップ

対象、小学校六年生

目的、
・箏に親しむ
・みんな仲良く、親睦を深める。
1,秋のイメージを1人五個ずつあげる。
2,様々な箏の技を復習
3,1であげたイメージを箏で弾いて表現してみる。まずは1人ずつ、次に二人で重ねてみる。最後に3人で重ねてみる。(メロディ、ベース、合いの手)
4,もみじの曲を練習
5,「もみじ」による音楽づくり。どんな情景のもみじなのか話し合いながらつくる。もみじの曲を必ずいれなくても良い。
6,発表、感想を言い合う。

https://youtu.be/HLJHNSULpow

私も一緒に作品づくりに入ったので、イメージにかたよって、情景を音楽にすることで終わってしまいそうだったので軌道修正して盛り上がる部分をいれて発表しました。

最初の秋のイメージを1人ずつ箏で色々な手法で発表するところまでは素晴らしいアイディアでしたが、それを数人で音楽づくりにするところの誘導が難しい、ワークショップリーダーの腕のみせどころ、と再確認して終わりました。
でもとても進め方は良かったのでまたKくんがワークショップリーダーをする機会があればよいな、と思いました。

授業担当 吉原佐知子

2017年10月12日 (木)

■実施日:2017年10月11日 

■担当:山口賢治 

■ゲスト:山本和智(作曲家)

■テーマ:扇風機による音探し、音楽づくり 〜尺八と扇風機で《鹿之遠音》〜

■想定対象者

演奏家、作曲家やそれを目指す人。もしくは実験的、先鋭的な試みに興味がある者。

 

Misco2014img399x5331503735996pnnkur

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

■実施のねらい

 1931年フランス生まれのアメリカ人作曲家Edgard Varèseが西洋音楽史上初のパーカッション・アンサ ンブル曲とされるイオニザシオンにおいて打楽器に加えてサイレン音を楽曲に取り入れた。また1940年代 からPierre Schaefferらにより音響・録音技術を活用し、人工音や自然界から発せられる音などを録音、加 工し、再構成して作品化するミュージックコンクレート(具体音楽)が生み出されるようになった。 通常、音楽は声や楽器から発せられる音(楽音)によって音楽が組み立てられているが、楽器以外の物体 から発する音や環境音、機械音などの噪音を音素材とする音楽が生み出されるようになった。現在はテクノ ロジーの発展により容易にサンプリングによって様々な音素材を音楽の中に組み込むことができる。

 こうした具体音楽の歴史を紐解けば、古くはベートーヴェン 作曲「ウェリントンの勝利」(1813年)や チャイコフスキーの序曲「1812年」(1880年)では式典楽曲として大砲や小銃が使われ、エリック・サティ 作曲のバレエ音楽「パラード」(1917年)ではピストルやラジオノイズ、タイプライターなどから発せられる音が楽曲中で使用されている。

 一方、日本の伝統音楽では、とりわけ尺八音楽の中でムラ息やカザ息のノイズ音等の非整数次倍音を含む音が積極的に音楽表現に取り入れられいる。尺八では一音成仏という言葉があり、たったひとつの音にも宇宙が存在するとされる思想があり、これは音楽を構成する一つの音自体に多くの情報量が含まれることを意味している。そのような性質を有する尺八と具体音楽にはある種の共通点や親和性があると思われる。

 今回は具体音楽を導入にして、山本和智 作曲「翦断/歪」〜Violist & Percussionistのための〜を手掛かりに、風を起し、叩いたり擦るなど方法で様々な音色が得られる発音素材として扇風機を用いて、音探しから音楽づくり、そして尺八との合奏試演を試みた。このワークショップを通じて、楽音、噪音、自然音、人工音など様々なカテゴリーに分類される音や音響と音楽の関係を考える切っ掛けを与えることが本ワークショップの狙いであった。

 

■実施プログラム

①具体音楽の説明と参考音源を鑑賞した。

 【参考音源】

  エリック・サティ 作曲 「パラード」

  エドガー・ヴァレーズ 作曲「イオニゼーション」

  ピエール・シェフェール 作曲「Études de bruits 」

 

②山本和智 作曲「翦断/歪」〜Violist & Percussionistのための〜を鑑賞と作曲家による作品解説をして頂いた。扇風機からどのようにして様々な音を探し出し、その音がどのように記譜され、ヴィオラとの二重奏に結実したについて作品成立までの試行や思考過程についてお話し頂いた。

Photo

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏法解説は下記

souhoukaisetsu.pdfをダウンロード

 

③扇風機演奏法の実演および受講学生達による扇風機による音づくりを行った。

 

④尺八音楽における音の特性と尺八古典音楽の代表である「鹿之遠音」の曲構成(2本の尺八の応答形式)の解説を行った。

 

⑤「鹿之遠音」を参考に扇風機と尺八で演奏を試みた。

 

⑥演奏家にとって音に対する向かい合い方について考えてもらった。


YouTube: 扇風機による音楽づくり 〜尺八と扇風機の為の《鹿之遠音》〜

■授業を振り返って

 音探しの題材が扇風機なので、ワークショップ受講者や後にワークショップ動画を見た人達からの反応は大きく二分された。とても面白く興味を持ってくれた人達がいた反面、まったく興味を示さなかったり拒否反応を示す人もおり、受講者や実施場所を選ぶワークショップテーマであった。しかしながら、今回は受講学生全員が具体音楽についての知識がなかったので、少なくとも具体音楽の概念を知る意味では、皆にとって意義ある授業になったと思われる。

 以前の授業で音や音響と音楽の違いについて考えたことがあった。少し視点を変え、世の中に存在する音について”音楽の音”と”音楽でない音”の曖昧な境界線をどのように捉えるかについて問題意識を持ってもらえたとすれば本ワークショップは成功である。その意味で、このプログラムは音楽に対する概念を広げるワークショプの一つに位置付けられるように思われる。

 今回はまったく初めての試みであった。尺八との扇風機の二重奏について、時間の制約や学生の躊躇いにより、充分な試行錯誤ができなかったため満足な演奏結果には至らなかった。しかし何度かの練習機会と適切なアンプリファイが得られれば、面白い音楽が産み出せそうな感触を得ることができた。