2019年7月13日 (土)

箏による音楽づくり 〜メタトナリティ(超調性)による音楽〜

◆テーマ
箏による音楽づくり 〜メタトナリティ(超調性)による音楽〜

◆担当
山口賢治

◆実施日
2019年7月10日

◆概要
フランスの作曲家、 Claude Ballif クロード・バリフ(1924年5月22日 - パリ - 2004年7月24日)が提唱したメタトナリティ(超調性)の手法を箏に援用した音楽づくりを試みた。メタトナリティとは、シリアスで無調的な音響と調性的な響きの中間的な音楽的性質を目指すシステムである。

◆目的
箏は柱を動かすことにより、様々な旋法や微分音程など自由な音律設定が容易に行えることから様々な音楽づくりワークショッププログラムが試され、実践されている。必要な音や求める音列配置を予めプリセットできるので、簡易的に演奏音の選択が可能である。箏のこの性質を用いれば、メタトナリティシステムも比較的簡易に具現化することができると考え、箏による音楽づくりプログラム教材をひとつ提供することを目的とした。

◆ メタトナリティシステムの解説
1、調性楽曲の主音ような中心となる基礎音を設定する。(今回はC)
2、設定した基礎音に対して増四度(減五度)の音程関係になる音(F♯)は除外し、11音を使って構成する。
3、基礎音に対して完全四度(完全五度)関係にある音(今回はFとG)を調的不変素と呼ぶ。この音が調的な部分を担う。
4、基礎音と調的不変素の間に挟まれた音を旋律的変素と呼び、旋律や旋法の性格を決める要素となる。

Photo




図1 メタトナリティの構成(下記よりダウンロードできます。)
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◆メタトナリティシステムの箏への適応方法
箏2面で1セットとする。基礎音(C)と調的不変素(F、G)は共通とし、旋律的変素の組合せが異なる下記の3セットを用意した。

A









図2 箏調絃セットA(下記よりダウンロードできます。)
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B


     

 
 
 
  
 

図3 箏調絃セットB(下記よりダウンロードできます。)
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C



 
 
 
 
 
 
 
 
図4 箏調絃セットC(下記よりダウンロードできます。)
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演奏効果を考慮し、箏Ⅱは箏Ⅰより一オクターブ低く調絃した。
 
◆実施プログラム





YouTube: 箏を使ったメタトナリティ(超調性)による音楽づくり


①各箏セット(A 図2、B 図3、C 図4)の旋法を提示した。0:00〜1:41

②各セットごとに試演。箏Ⅰの4小節アドリブ→箏Ⅱの4小節アドリブ→箏Ⅰと箏Ⅱの4小節アドリブを行った。ピアノによる基礎音Cの連打音を背景音とした。
 Aセット…1:41〜2:25 Bセット…2:25〜3:09 Cセット…3:09〜3:51

③ピアノに変わり基礎音(C)をトーンチャイムで鳴らしながら、各セットごとに点描的もしくは無拍節的な演奏をしてもらった。
 Aセット…3:51〜4:21 Bセット…4:21〜4:55 Cセット…4:55〜5:26

④これまでの試演を踏まえて各グループごとに自由に創作発表を行った。もし可能であれば、システムの主旨を尊重し、アドリブ旋律を奏でる際には中心の基礎音を留意してもらうよう伝えた。
 Aセット…5:26〜6:46 Bセット…6:46〜8:36 Cセット…8:36〜10:54

Aセットの演奏では、中心となる基礎音をドローンとし、箏Ⅰと箏Ⅱの各旋法が共に明確に伝わる演奏だった。Bでは、主に箏Ⅰが旋律的アドリブと担い、箏Ⅱが装飾的音を絡める構成になった。Cでは前半は中心音(基礎音)感じさせない無調的な音空間を形成させ、後半は旋律感を全面に出し、システムを巧みに活用した演奏であった。

◆考察
メタトナリティをテーマとした授業は今回が初めてであった。無調と調性の中間的な響きを求めるシステムなので、演奏の際、音の選択の仕方や抽出方法により旋法感を出したり、十二音技法的な音楽にもすることもできた。この方法論による音楽づくりでは、音楽的効果を明確にするために、演奏者がシステムを良く理解し、演奏をコントロールするためのある程度の技術や知識が必要となると思われる。邦楽ワークショップ受講生は当然、音大学内学生なので、このプログラムに対応できた。ワークショップの内容としては高度な分類になると思われる。

日本の伝統的な旋法には陰旋法、律旋法、民謡旋法、琉球旋法の4種類があり、どれもが完全四度からなる二つのテトラコルドの全音連結からなっている。テトラコルドを成す各音は核音と呼ばれ、核音で挟まれたテトラコルド内に音がひとつ配置される。この配置音の音程の違いにより各種の旋法に特徴づけられる。メタトナリティも基礎音と調的不変素の音程関係が完全四度で、且つ全音で連結されてる部分では日本の伝統音楽の旋法と共通である。なので日本の音楽の旋法から発展させてメタトナリティに繋ぐ教材プログラムへの応用も期待出来る。

今回は参加人数の関係もあり、調絃の組合せセットを3つ選んだが、組合せは全部で36通り考えられる。この試みは視点を変えればポリモードによる演奏になるが、主眼は無調的響きと調的な音響の中間的な音楽を実現することなので、そのための工夫や仕組みを考えることが今後の課題である。

◆参考文献
「はじめての〈脱〉音楽 やさしい現代音楽の作曲法」
 木石岳 編著/川島素晴 監修/自由現代社 刊

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コメント

授業の教室に入り、まず最初に驚いたのがお琴が沢山並んでおり、
音階が少しずつ異なっていた事だ。
その音階は、音楽をやっている人でも普段耳にする事のない違和感を覚える
なんとも言えないものであった。
二人一組で、試演を行なったがシリアスで調のバランスがつかみにくく、
即興といえど少し難易度が高く思えた。
次にルールを追加した。一人が4拍で行い、そのあともう一人のペアの人も4拍で演奏する。そして二人で同時に4拍の演奏を奏でる。すると少しルールが明確になったのでいくらか演奏が出来るようになってきた。

そして最後に創作発表を行った。追加ルールとしては、中心の基礎音を留意する事だ。僕はペアの人と会話をしたり、基礎音を交互にバトンタッチしていった。
定型はそのままにアレンジする人を交代していくシステムや、だんだん合わさったり引き離したりもして即興の中でも音楽的な要素を取り入れてみた。

今回のテーマのメタトナリティは、無調と調の間のもので非常に難しいものだったが、普段耳にする音階とは異なる新鮮な音での授業であった。
少しずつこういうような音階にも触れて、慣れ親しんで行きたい。