2019年10月17日 (木)

ミュージックコンクレートによる音楽づくり体験

■テーマ
ミュージックコンクレートによる音楽づくり体験
 
■実施日
2019年10月16日

■ワークショップリーダー
音楽音響デザインコース学生3年生

■実施概要
”サウンドスケープ(音風景)”や”ミュージックコンクレート(具体音の組合せによる音楽)”の概念説明や作品例の鑑賞から入り、実際に短いミュージックコンクレートの作成を試みた。予め用意した具体音源10種類の中から5つの音源を選択し、音を組合せて簡易的ではあるが、音楽作品を作った。

Onsozai


                                                                                                                            用意した音源

下記の譜例のようにグループで話し合って、簡単な楽譜を作成し、これに基づきパソコンで音源を構成し、音を聴きながら修正、追加などの作業を行って作った。
 

Hurei



                                                                                                          
譜例


YouTube: ミュージックコンクレートで音楽づくり体験


■まとめ
日本の伝統音楽作品には、例えば宮城道雄 作曲「谷間の水車」にある水車の軋む音を模した尺八の演奏箇所や「虫の武蔵野」の中で虫の鳴き声を描写したと思われる箏の表現などに見られるように、自然の音や音風景を音楽の中に取り入れた作品がある。そう言った意味で、身の周りの音と自分たちの関わりや環境音と文化の関係を改めて考えることは、音楽作品のより深い理解や鑑賞にも役立つと考えられる。ミュージックコンクレート作品の試作体験は、その創作過程を通じて、環境の中で音と私たちのかかわり考えるきっかけとなる良い教材になったと思われる。
当初の計画では、ミュージックコンクレート作品で使用する音素材の採取作業から始める予定であったが、時間や当日の天候のよる理由でワークショップリーダーが予め用意した音源を使用することとした。90分1枠では時間的制約により、まずはそれぞれの音素材をじっくり聞いてみるステップを省略せざろう得ず、充分な音選択の吟味ができなかったが、一応短い作品でも形にすることができたのは意義深い。作品をつくる過程で、それぞれの音素材の持つイメージや意味、象徴に思いを巡らしたり、音によるストーリーを推考する貴重な体験の場を設けることができた。
1954年に設立されたNHK電子音楽スタジでやっていたような内容が、今や学生が一台のパソコンを使って模擬授業形式で、気軽に作って体験できる時代になりテクノロジーの進化を示す授業であったと感じた。充分に時間を確保し、中学生くらいを対象とする教材カリキュラムにまとめると面白いと思われる内容である。

■執筆
山口賢治

トラックバック

このページのトラックバックURL: http://bb.lekumo.jp/t/trackback/241071/34193348

ミュージックコンクレートによる音楽づくり体験を参照しているブログ:

コメント

最近はデクストップミュージックなどのデジタルミュージックが流行っているが、それより一歩先へ踏み入った環境音を取り入れるのは、
またひじょうに興味深いというか、真新しい音楽の時代を感じる。
赤ちゃんの声や風の音、水の音、夏の扇風機の音やセミの鳴く声。
わざわざイヤホンで聞かなくても、自然と耳に入ってくる音もまた
音楽と言えるかもしれない。

今回は天候の影響で事前に用意したものということであったが、
自分達で音楽の素材を集めるところから始めるのは、また
面白く人の興味をそそるような教材でとっても良い。

サウンドスケープについて、カナダの作曲家・音楽教育家であるマリー・シェーファーはこう提唱している。「私は音の環境をサウンドスケ ープと呼ぶ。私たちがどこにいようとも、そこの音の場の すべて。それがサウンドスケープである。」と唱えている。また、世界の調律については、「サウンドスケープ・デザインとは私にとって、「上からのデザイン」や「外からのデザイン」を意味するものではない。 それは、「内側からのデザイン」である。できるだけ多くの人々が、自分の周りの音をより深い批評力と注意力をもって聴けるようにすることによって達成される「内側からのデザイン」なのである。」と。また、日常で聞こえる音を録音編集、エフェクト処理して制作する音楽ジャンルを、コンクレートミュージックという。そんなミュージックコンクレートを学ぶ授業は中々無いと思われるので、見出しからとても興味を持ちました。一般的な音楽では、短調・長調や、コード進行等によって、ある程度その曲のイメージが纏まると思うのですが、この授業で使った音そのものは、聴いた人 一人一人が違うイメージや物語を創るので、録音された音そのものが作品となる。未知数でとても面白い物だと思いました。
初期においては円盤が用いられたが、テープレコーダーの発達によって、後にはテープを用いるのが当然となり、現在ではコンピュータソフトウエアで制作される様になった。そんな背景も考えさせられる授業内容です。

人や動物が生活する音だったり、自然の音は、普段聴く音楽よりも具体的な情景が頭に思い浮かぶので、自分の想像力を膨らませてくれてとても面白いなと思いました。
また、普段から色んな音に聞き耳を立てて録音してみるのも楽しいかなと感じました。

聴く姿勢によって、音楽になったり、ノイズになったりする"音"のおもしろさなどについて、考えるきっかけになった。受講生全員で、音を録音しにいけたら、授業としてまた広がりがあったと思う。中学生や高校生がこういった授業をうけて何を考えるのか興味がある。

音楽音響デザインコースの学生さんだからこそできるパソコンを使った現代的な音楽づくりというのは、とても聴いていて不思議な感覚になりました。子どもたちに日常のいろいろな音を集めてみるのも、違う感性があってそれもいいなと思いました。

日常の様々な音を使うことによって、具体的な情景が浮かびすくなっていると感じました。普段聴いている音階などの要素以外での音楽作りはとても新鮮で面白いので、自分の創作にも活かしてみたいと思います。

ミュージックコンクレートの記事を拝見して、記事にある「身の周りの音と自分たちの関わりや環境音と文化の関係」という一文が気になりました。
私は音楽を学ぶ過程で、何度か友人や先生から「日本人の聴覚が特殊である」論を何度か教わった事があります。それは、西洋人やその他人種が「虫の鳴き声等の環境音」を機械音や雑音と同様に右脳(言語や計算に強い脳)で処理するのに対し、日本人はそれを左脳(音楽や感受性を司る脳)で処理をするという論です。この論は既に医学的に証明されていて、具体的に日本人と西洋人で聞き取り方が違う音は違いが出るのは、母音、泣き・笑い・嘆き、虫や動物の鳴き声、波、風、雨の音、小川のせせらぎ、邦楽器音だそうです。
また、日本人がこういった脳に発達するのは日本語という言語を話す事に由来するらしく、
日本人が環境音を音楽と捉えている事は「日本人として日本語を話す文化」
と深く関わっているようです。

なので、冒頭で言った「身の周りの音と自分たちの関わりや環境音と文化の関係」が日本人特有の物であると言えます。
また、
ノイズミュージックやアンビエントという、無声音の音を重ね合わせてその音の質感に価値をつける音楽ジャンルは日本発祥であり、それも日本人が特殊な聴覚と感性を持っている事を裏付けていると思います。