2014年12月29日 (月)

11月19日に行われた授業の模様です。

今回はクラリネット科4年のKさんが担当でした。

普段のWSの中で採り上げられる頻度の少ない5拍子と6拍子に着目し、リズムのとり方の工夫から打楽器を盛り込んでの創作まで、事前準備をしっかりしてきた成果が現れた良い授業でした。また創作活動にも参加したりアドバイスを積極的に行っていた部分が素晴らしかったです。

下記、Kさんによる報告書です。

授業担当:市川香里 記

WS名…5拍子や6拍子を箏で表現してみよう
目的…普段の授業で採り上げられることの少ない5拍子や6拍子で音楽作りをするとどんな曲ができるのか体験する。
使用楽器…箏、打楽器など
対象者…大学生

WS内容
1.導入
(5拍子、6拍子のリズムを感じる)
全員で手拍子で5拍子、6拍子を叩く。2つのグループに別れて5拍子と6拍子を同時に叩いてみる。←6回目で合わさる!
5拍子、6拍子で連想される曲について知ってる曲を出してもらう。そんな中から、有名な2曲をピックアップ。
★パイレーツオブカリビアン(6拍子)
★ミッションインポッシブル(5拍子)
曲を聞いてリズム作りのイメージを作る。

2.箏で音だし
箏で5拍子と6拍子を刻む。その中で一人ずつまわしてリズム作りをする。リズム作りの音は自由。5拍子と6拍子のパターンのリズム作りをする。

3.グループにわかれて音楽作り
ベースの拍を誰か1人は必ず弾いてること。5拍子と6拍子はどちらを使ってもよい。混ぜても同時でもよい。強弱や早さも変化をつけて工夫する。調子を変えてもよい。打楽器を混ぜて音楽作り。

5拍子6拍子で音楽づくり①
YouTube: 5拍子6拍子で音楽づくり①

5拍子6拍子で音楽づくり②
YouTube: 5拍子6拍子で音楽づくり②




感想
最初は内容的に難しいものにしてしまったかなと思ったのですが、学生の皆さんに素晴らしい音楽作りをして頂きました。
5拍子、6拍子というと現代音楽的な雰囲気になると思っていたのですが、最初は平調子でやったので日本音楽ぽく素敵なリズムになりました。最後の自由に音楽作りをする時には、先生にアドバイスを頂き調弦を指定せず自由にしました。すると、1つのグループは平調子のままで1つのグループは調弦を変えて音楽作りをすることになり、まったく違う音楽になりました。やはり、平調子のグループは5拍子6拍子を組み合わせてもどこか日本らしさの残る音楽になっていました。一方、調弦を変えたグループは雰囲気がガラっと変わり、5拍子6拍子が合わさる音楽がとても現代的で面白かったです。今回は比較することができ、とても勉強になりましたが、どちらかに絞って(平調子か現代的な音階か)5拍子、6拍子の音楽作りをするのも楽しそうだなと思いました。

2014年12月11日 (木)

■担当:山口賢治

■テーマ:三分音調律(18音平均律)による音楽づくり

■使用楽器:十三絃箏とキーボード

■想定対象

ある程度の専門性を有し、実験的な音楽や試みに対して興味を有する音楽関係者。

■概要

三輪眞弘 作曲「オーケストラのための、松村ギヤ・エンジンによるボレロ」 

http://www.suntory.co.jp/news/2004/8889.html

を参考に音楽づくりを行った。

この作品は弦楽器群の1/3音を単位とした音郡の移動とそのクラスター効果を背景に、管楽器が全音音階に準じる旋律を奏でる構成となっている。

そこで、この仕組みを借りて、三分音調律(18音平均律)とその派生から抽出される全音音階とによる音楽づくりを箏を用いて行った。

下記の写真は三分音調律調絃にした箏である。赤い付箋の絃がそれぞれ(C,D,E,F♯,G♯)となっており、全音程の間を三分割に調律してある。

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箏の絃が3本毎に全音程になるので、(一、四、七、十、巾)と弾くと、全音音階が抽出できる。

箏は自在に微分音程も含めて、自由に様々な音律調絃が実現出来る。この特性を活かし、過去にはトーンクラスター(半音よりも幅の狭い音程の集積による音の塊)を単位として音楽を構築する音楽づくりを試みた。

https://blog.senzoku.ac.jp/hougaku/2012/11/post-3d96.html

この時は箏柱を密着させて楽器にセットしたが、音程幅を確定させて微分音程に調絃したわけではない。今回は三分音に調絃(上記写真)した箏と、さらに三分音調律から抽出される全音音階に調絃した箏(およびキーボード)との組み合わせによる音楽づくりを試みた。

参考:全音音階による音楽づくり(2012年9月5日実施) 

https://blog.senzoku.ac.jp/hougaku/2012/09/post-0caa.html

■実施プログラム

1、ワークショップの概要説明

  箏の特性(調絃の自由性)

  過去のワークショップの紹介(全音音階、トーンクラスター)

2、 三輪眞弘 作曲「オーケストラのための、松村ギヤ・エンジンによるボレロ」

        の作品紹介と視聴。

3、 三分音調絃(18音平均律 )と、その派生から抽出される全音音階

  (6音平均律)についての説明。

4、試作と発表

  全音音階による試作

  三分音調律による音楽試作

  三分音調律と全音音律の箏で音楽試作

18音平均律(三分音律)と6音平均律(全音音階)によるアンサンブル試行
YouTube: 18音平均律(三分音律)と6音平均律(全音音階)によるアンサンブル試行


■考察と反省

今回は準備不足もあり、多くの課題や反省点があった。

1、三分音調律についての仕組みや調絃方法など、込み入った説明が必要だったため、学生の反応がやや鈍く、戸惑いがあった。

2、三分音調律を行うには、糸の張力調整が可能なネジ付きの箏や、様々なサイズの柱が必要であり、楽器やテクニカルな課題を解決する必要があった。しかし、箏の専攻生がいなかったので充分な対応ができなかった。

3、十三絃箏で三分音調律をすると絃の本数の制約があり、一面の楽器でカバーできる音域が狭くなってしまう。今回は異なる音域で三分音調律した箏を2面用意し、分担して演奏することで対応した。理想的には絃の本数が多く、付属のネジによる張力調整が可能な二十絃や二十五絃箏で三分音調律することがが望ましい。次回機会があれば十七絃を使用してみたい。

4、三分音調律と全音音律の箏で合奏した際に、全音音律の旋律が三分音調律の音の動きに埋もれ混濁しまい、音楽的効果が明確に現出しなかった。全音音律の旋律線をキーボード等の持続音楽にした場合には、混濁現象が避けられそうなので、鍵盤ハーモニカと箏を使って、再度この方法論を試してみたい。

 

事情により急遽、私自身がワークショップ担当を行うことになったため、準備不足であった。そのため意図する音楽的効果を出すための事前のテスト演奏が行えないまま授業日になってしまったため、消化不良の結果となってしまった。しかし、このテーマは過去の音楽づくりの方法論を発展させた内容なので、再度練り直したい。

2014年11月26日 (水)

11月12日に行われた授業の模様です。

今回はクラリネット科4年のKさんによる、リズムに着目して日本らしい音楽を模索し音楽づくりする授業でした。

Kさんは来年度から音楽科教員になる学生さんで、実際の授業でも実践できるようなプログラムを考え、実行しました。学生さんに対してすごく丁寧で授業の進め方がすばらしく、さすが先生の卵だなと感心しきりでした!もう少し声を前に出すようにすることと、自分で楽器を弾きながら学生さんにアドバイスするよう挑戦してほしかったなと思いました。これから教員として邦楽のすばらしさをぜひ子供たちに伝えていってもらいたいです!

下記、Kさんによる授業報告書です。

授業担当:市川香里 記

『リズムに着目し、いかにも日本らしい音楽を創作しよう』


実施日:2014年11月12日(水)
対象:大学生6名
使用楽器:乃木音階に調弦した箏、打楽器
目的:「日本独特のリズムに着目し、その要素を十分に用いて、まとまりのある音楽づくりをする。」
授業内容:
<アイスブレイク>
日本らしいリズムを使った2重奏のリズム遊び
<本題>
日本の民謡のひとつである"こきりこ節"を聴く

有拍リズムの、日本の民謡を挙げる(exソーラン節、炭坑節、八木節)

挙がった民謡も参考に、日本らしいリズムを4拍分考え、一人ずつ発表する

(創作)下記3点を条件として、日本らしい音楽を創作する
ⅰ拍節があることⅱベースに2度関係の音を入れるⅲグループの中で意識して入れたリズムをひとつ作る→グループで発表前に発言させる

<発表、まとめ>
2つのグループで、それぞれ"よさこい節"と"祭"をイメージして創作した音楽を発表した

いかにも日本らしい音楽づくり①
YouTube: いかにも日本らしい音楽づくり①

いかにも日本らしい音楽づくり②
YouTube: いかにも日本らしい音楽づくり②



<考察>
まず、この題材を取り上げたのには、①日本音楽の有拍の決まったリズムパターンを実践から特徴を考察したいと思ったこと②グループ発表の際に、リズムに共通性があれば音楽としてのまとまりを作れるのではないか、という点で試みてみよう思いました。結果、
①…特徴としては、符点のリズムや休符、反復などを上手く用いるところに共通点が見られた。
②…リズムの共通性を作ることで、旋律やベースにまとまりを感じられ、役割も分かりやすい。旋律も琴で適当に音を並べても、それらしくなる利点はあるが、似たような雰囲気になってしまう難点もあり、テンポや強弱で工夫をしていた。
今後の課題としては、乃木音階でなく、他の調弦ではどのように聴こえるか、試みてみたい

2014年11月18日 (火)

10月22日(水)は音楽音響デザインコースのUさんによるワークショップでした。

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以下Uさんの実施報告です。

■テーマ

和太鼓でサンバ

■実施日

2014年10月22日(水)

■対象

大学生4名

■準備

和太鼓専攻2名、和太鼓、立ち太鼓、アゴゴベル、ボンゴ、摺鉦 、その他打 楽器、PC

■概要と目的

和太鼓を通じて海外のリズムを取り入れる 和太鼓という邦楽器にふれ、和太鼓専攻のゲストの学生から基本の叩き方を教わ り、和太鼓の基礎知識を学んだ上で『祭』という共通点からブラジルのサンバのリズムを取り入れ、リズム楽器を主体に即興し一曲をつくりあげる。

 

■授業内容

1、楽器準備 (10分) ゲストの学生を迎え、和太鼓と立ち太鼓をセッティングした。

2、まずは、ゲストの学生(二人)に短く和太鼓の演奏を披露してもらった(5分) 。

3、受講者の学生に一人一人和楽器奏者の指導のもと実際に和太鼓に触れ、を叩いてもらった(10分) 。

4、和太鼓の紀元を歴史を辿って手短に説明した後、和太鼓と今回題材にするサンバ について、なぜブラジルのサンバを持ってきたのか両者の歴史を紐解いて、共通点 『祭』について説明した(10分) 。

5、サンバのリズムについて、持参したPCの作曲ソフトと配布したレジュメを使い、 ひとつひとつのパーカッションの音を聞き確認するとともに、実際に手拍子で受講 者に叩いてもらい、手拍子で叩けるようになったら用意したパーカッションで叩いてもらった(20分)。

6、ゲストの方も含め全員で和太鼓をつかったサンバの音楽作りを全体の進行だけ軽く指示し、皆に進めてもらった。(10分)

7、一回目発表(5分)

8、一回目の反省を生かし、メロディ楽器の専攻楽器や琴などを増やし、和太鼓をベ ースとした音楽づくりをした(10分) 。

9、二回目発表、感想、まとめなど(10分)

 

■まとめ

私自身和太鼓に初めて触れ、授業を行うため勉強したことで知らなかった事がたくさんしれました。 そもそもサンバのリズムを取り入れたのは最近私がラテン音楽を好んでいた事が要 因で、なんとかしてサンバのリズムを取り入れられないかと調べていくうちに、日本とブラジル、国は真反対といえるほど離れていますが、神を信仰してお祭りを行 うという共通点と、そこで神々に捧げる音楽において打楽器を使うという共通点が あり、思い切って和太鼓でサンバを叩いてもらい、面白かったです。 そもそも今多くの音大生が学んでいる音楽は西洋のもので、西洋の楽器が流通して いなかった頃は邦楽器などで西洋のメロディやリズムを演奏してた頃もあったので はないかなと思いました。 そう考えると今回の試みは、原点にかえって異文化を取り込むという形になったの かもしれないと思いました。 わざわざきてくだっさったゲストのお二人と受講者の皆さんありがとうございまし た。

和太鼓でサンバ
YouTube: 和太鼓でサンバ

■担当講師からのコメント

当初の予定では、教室内に一時保管してある和太鼓を使うこと前提としていたが、事情により学生による使用ができなかった。従ってサンバを題材に和太鼓を体験し、親しむことを狙いとしていたが、実施プログラムの修正を余儀なくされた。しかし、和太鼓の使用に制限があったとはいえ、ゲストの和太鼓奏者のアドバイスの元に和太鼓に触れる機会を交代で設けることは可能だったので、後半の音楽づくりについては工夫の余地を感じた。

評価できる点としては、

①ゲストで和太鼓奏者を招き、短時間とはいえ実際の演奏や演奏法を学べたこと。

②サンバの音楽的特徴をDTM音源を使って分かりやすく説明したこと。

③和太鼓とサンバの異なるジャンルを結びつけたプログラム。

が挙げられる。

学校や公民館などの施設には備品として和太鼓があるところがあり、その活用法として和太鼓を用いた音楽づくりのプログラムが有効であると思われる。また、近年は、住民の何割かが日本人でなく移民系の人達が占める地域が増えてきている。今後もこの傾向は強まるので、異なる民族や文化の同居や橋渡しが大きなテーマになるであろう。例えば南米系の住民が多い地域で、日本の和太鼓に親しんでもらうための切っ掛けづくりとして今回のワークショップ案は応用できるかもしれない。異なる文化の橋渡しや融合を念頭においたワークショップ研究は今後、重要なテーマのひとつである思われる。【担当:山口賢治】

2014年10月15日 (水)

10月15日は音楽音響デザインコースのNさんによる「邦楽器でフラメンコの音楽を作ってみよう」というワークショップでした。

邦楽ワークショップ初のフラメンコを題材にしたワークショップでしたが、よく題材研究もされていてスムーズな授業展開となっていました。

やはり音階がはっきりしているので、音楽づくりもしやすかったのだと思いました。

授業内容は以下です。

授業担当:吉原佐知子 記

【邦楽器でフラメンコの音楽を作ってみよう!】

ワークショップリーダー:音楽音響デザイン学生

実施日:10月15日 対象:大学生

使用楽器:箏(十三弦と低音箏)、フラメンコカスタネット、手拍子

概要と目的:間を大事にする、どちらかというと決まったビート感のない日本の音楽と 踊りの伴奏音楽であり拍子感がはっきりとしたラテン音楽のフラメンコは、多くの面で正反対な音楽。この対象的な2つの音楽を組み合せ、自分なりのフラメンコを完成させる。

それぞれの音楽の特徴を理解し、民族音楽に対する興味関心を深めてもらいたい。

ワークショップ内容:

① 導入~フラメンコについて~。フラメンコの成立についておおまかな説明。(地図の画像を用いて)、PC を用いて映像資料を見せる。(本場スペインでの実際のフラメンコの様子、フラメンコギターの演奏映像など)フラメンコ音楽で用いられる用語についても触れる。5分

② アイスブレイク~パルマ(手拍子)、ピトース(指ならし)、を用いてフラメンコのリズムを体験。(初めにパルマの映像資料を提示。その後6/8、2パートに分かれた短い課題を用意し、各自練習した後に2つに分かれて全体でやってみる。)10 分

③ 全体でリズム、楽器練習:箏を用いてトケ(フラメンコギターの伴奏)を再現する練習。 ボディを叩く奏法など、各自で工夫を考えてもらう。全体で箏のみのフラメンコ音楽をやってみる(6/8伴奏の上でソロをまわす)5分

④ グループワーク:2グループに分かれ、音楽作り。20 分 この際調弦は、AB♭C(♯)DEFG(♯)AB♭C(♯)DEA

(C,G はしばしば♯するので押し手しても良い)

各グループ低音箏一面ずつ。(オクターブ低く調弦)

○/8拍子、トケ(伴奏)/カンテ(旋律)/パルマ(手拍子、リズム)の3つの役割が必ず存在するようにする。・・・という縛りの元で音楽作りをしてもらう。

役割は途中で変わっても良いものとする。音楽の構成などを考えている間、各グループをまわり、独特のダイナミクスや、押し手、トレモロ、奏法についてや、日本音楽にみられる掛け合いや、間なども用いてみるようにアドバイスした。

⑤ 発表。各グループ5分ほど。

第一グループ・・・叙情的でかっこいいカンテパート。中間部に日本的な間のある間奏を取り入れ、その後低音箏でのソロやサンバ風な4拍子リズム。

第二グループ・・・3、7音の押し手多用により、1組めよりもよりアラビア的な雰囲気が感じられた。ダイナミクスを付けてくれて良かった。

⑥ まとめ、感想

【まとめ、感想】 

今回題材として用いたフラメンコは、スペインのアンダルシア地方の伝統芸能であり、誰もが一度は耳にしたことのある民族音楽だと思います。ですが実際自分でやってみるとなると、馴染みのある日本音楽と異なりすぎて少し難しいのでは?と心配していました。しかし、やってみると皆さん見事に独自のフラメンコを再現していたので驚きました。特にクラシックをやってきた方はビゼーの≪カルメン≫で、フラメンコなどスペイン的な音楽に触れたことがあり、やりやすかったのではとおもいます。また、フラメンコの音階が箏に良く合い、日本的な要素とも上手く絡んだのも、フラメンコ音楽が東洋からやってきたジプシー達の影響を大きく受けている、という成立を考えると頷けます。東洋のオリエンタリズムを西洋音楽に取り入れたドビュッシーやラヴェル、そしてスペイン音楽を取り入れたフランス人ビゼー・・・そして今回のワークショップを通じて、日本独自の音楽に、他国の土俗的なリズムや音階、楽器などを取り入れることによって生まれる音楽の可能性を身を以て感じました。作曲を学ぶものとして、とても勉強になったワークショップでした!

邦楽でフラメンコ 邦楽ワークショップ
YouTube: 邦楽でフラメンコ 邦楽ワークショップ

邦楽でフラメンコ2 邦楽ワークショップ
YouTube: 邦楽でフラメンコ2 邦楽ワークショップ

2014年10月 6日 (月)

10月1日に行われた授業の様子です。
今回から学生による授業が始まりました。トップバッターのピアノコース4年M.Yさんは緊張の面持ちでしたが、早い段階から準備をしっかりしていたのでとてもよくまとまった授業でした。素晴らしかったのが、実際にお箏を弾きながら奏法や音楽づくりアドバイスをたくさんしていたことです。逆に学生さんの意見を聞きすぎて時間に隙間ができてしまう場面が何度かあったので、そこをうまくリードしていけるようアドバイスし終わりました。
下記、M.Yさんからの授業報告書です。
授業担当:市川香里 記
『ドビュッシーの"前奏曲"をお手本に、箏を使って"前奏曲"を作ってみよう!』
実施日:2014年10月1日(水) 
対象:大学生6名
使用楽器:全音音階と五音音階に調弦した箏・必要があれば打楽器
概要と目的:西洋で多く使用されている全音音階、日本でも親しまれている五音音階で音楽づくり。
様々な音階を組み合わせることに挑戦し結果多くの傑作を生み出したドビュッシーに習いながら、今回は上記の2つの音階を効果的に使用し自分たちなりの"前奏曲"を作る。
授業内容
①楽器準備 (10分)
全音音階 三面
五音音階 三面
②まずは、これから参考にするドビュッシーのことを知ってもらうため、彼の音楽や作曲技法について(ジャポニズムに興味を持ちはじめた頃の話を軸に)簡単に説明。
拍や刻み、メロディと伴奏、表現面も明確であるのがクラシック音楽の基本であった時代。そこからの脱却を試み、宙に漂うような壮大な世界を追求したドビュッシーの音楽性についても触れる。(5分)
③全音音階と五音音階を使って書かれているドビュッシーの作品を抜粋して鑑賞。
参考資料として譜面も配布。(5分)
1.映像第二集より「葉づえを渡る鐘の音」
2.映像第二集より「そして月は廃寺に落ちる」
前奏曲第一集より「ヴェール」の楽譜を参照し、彼の前奏曲のタイトルの特徴を説明。
※ドビュッシーは前奏曲の各曲の標題を、固定観念に縛られず自由に音楽を味わって欲しいという想いから、
冒頭には書かず、各曲の終わりの余白に小さく書込こんでいた。
④CD鑑賞・譜面閲覧から得たものを生かし、まずは一つの標題をみんなで考えて音楽づくり。今回はドビュッシーの風流な標題をいくつか読み上げ、それを参考に皆から出た"もみじ散る ひらひら"というタイトルに寄せて音楽づくりをした。
まずは一人一人にタイトルから得たインスピレーションを生かしたパターンを作ってもらい、発表。(この際に自分のパターンがどんな風景や表情を表現しているかも説明してもらう)
どんな工夫をしたら標題を音楽で表現することができるか、リズム、音形、強弱、箏の奏法の可能性などを話し、その後こちらが役割分担(パターン・かざり・ソロ)をし、五音音階組・全音音階組それぞれ重ねた後、最後に全員で重ねてもらう。(10分)
⑤慣れて来たところで、全音音階組と五音音階組にわかれてもらい、先ほどと同じようにドビュッシーの音楽をお手本に、自分たちなりの小さな前奏曲(標題音楽)を作ってもらう。
(20分)
※今度はドビュッシーの前奏曲の題名の付け方の工夫に習い、2グループはお互いに最後まで秘密事項として標題を伏せ、聴く者に想像を全て委ねることを試みる。(どれだけ音だけで世界を表現出来るか、想いを伝えることが出来るかを体感する為。)
⑥相手グループに聴こえないようひそやかに、各グループごと中間発表として私に聴かせてもらう。
それぞれの標題をさらにリアルに表現するにはどうしたらよいかをドビュッシーの余韻や時間の使い方を参考にアドバイス。求める世界観に必要であれば打楽器の使用も認める。(20分)
⑦各グループ演奏発表。
お互いの標題予想・発表。  (15分)
ちなみに今回は…
全音音階組
「ハロウィンの夜」
(家を探し、ノックをし、いたずらをし、そして逃げる)
五音音階組
「滅びの夢から醒めると、そこは天女のパラダイス」
でした!
⑧感想。片付け。  (5分)
♪まとめ♪
私の方も得るものが大きな授業となりました。音階の世界観と箏との相性がとても良く、ドビュッシーならではの響きや余韻、うつろい、微妙な揺れなど、絶妙な雰囲気を醸し出せたのだと思います。
音楽づくりでは、標題をつけることでイメージを仲間内で共有しやすくなり、標題を伏せることで"相手に伝えたい"という強い気持ちも生まれ、技術に凝るのではなく、リアルな感情の起伏のあるとても豊かで音楽的な世界観が表現出来ました。
どんな音楽づくりでも明確なイマジネーションを持ち、取り組むことが鍵なのだと感じました。想像力を掻き立てるような授業のもって行き方、助言など、そういう工夫を凝した面は良かったなと思いました。
標題音楽に寄せるための実践に使える箏の奏法を説明したけれど、もっと多くの奏法をお伝えできれば良かったな、というのが後悔です。それと授業の進行をもっとスピーディーに出来るよう、頭の中を整理して話が滞らないように先のことを考えることも大切なのだと感じました。
最後に素敵な作品が出来上がり、みんなが怖がらず、楽しそうに演奏していた姿を見られたことが何より嬉しかったです!
2014年9月28日 (日)

9月24日は吉原による、箏のソロで有名な沢井忠夫作曲「鳥のように」を題材にしたワークショップでした。

内容は以下です。

ワークショップ名「鳥のように」を題材にした箏ワークショップ

ワークショップリーダ 吉原佐知子

使用楽器 箏1人1面

目的

・箏に親しみむ。

・箏の名曲を知り、それと同じ調弦、構成による音楽づくりをすることにより、題材をより深く理解しつつ、箏で様々な奏法を駆使しつつ自分たちで自在に音楽づくりにチャレンジする。

・音楽づくりをする際、構成や調弦が大事であることを実感する。

〈流れ〉

1、吉原による沢井忠夫作曲「鳥のように」の演奏を聴く

2、「鳥のように」の調弦を説明し、鳥のようにに出てくるいくつか反復パターンをみんなで練習。

3、練習した6/8拍子のパターンの上で、ソロ回しや対話をしてみる。

4、無拍の部分の練習。トレモロや打ち爪の上で新しい技を探して回したり、様々な奏法で対話する。

5グループに分かれて創作

約束は以下の構成であること。

A(6/8拍子)-B(無拍)-A(速い6/8拍子)

6、発表

「鳥のように」による音楽づくり
YouTube: 「鳥のように」による音楽づくり

7、感想&講評

生徒たちの感想は以下です。

・オリエンタルな感じだった。

・ハープみたいだった。

・曲の構成が決まっているとつくり易かった。

・かっこよかった。

・イメージがわきやすかった。

ワークショップリーダーの私の感想としては、前回の「みだれ」によるワークショップよりもそれぞれ大きい音がだせるように指導した成果が出ていて、それぞれが出したい音や表現したいものが出せていて音楽的にも技術的にもレベルアップしていると思いました。

私自身の反省としては、最初にアイスブレイクとして手拍子で6/8拍子のリズムで音楽づくりをしておけばもっとスムーズに箏ですぐに6/8拍子の音楽がつくれたので、次回はちゃんとアイスブレイクからしたいと思いました。

以上 授業担当 吉原佐知子 記

2014年9月18日 (木)

9月17日の授業の模様です。
今回は三味線に焦点をあて、阿波踊りのリズムで音楽づくりをしました。
阿波踊りをテーマに音楽づくり
実施:2014年9月17日
対象:大学生
使用楽器:三味線(HEA)
目的:三味線の奏法をマスターし、さらに独自の音を見つける・日本の伝統的お祭り「阿波踊り」のリズムを体験し音楽づくりする・リズムを使った音楽づくりのヒントをみんなで模索する
授業内容
①三味線準備
②基本奏法復習
③独自の音開発・発表
④特殊奏法復習
⑤阿波踊り説明・基本リズム練習
☆リーダー(打楽器)の提示する遅速・強弱に合わせて変化させていく→阿波踊りにおける決まり事の一つ
⑥基本リズムでパターン作り・ソロまわし・みんなで阿波踊り合奏
☆リーダーの提示する鐘のリズムに合わせてどんどん変化させていく
⑦阿波踊りで音楽づくりグループ実習
約束1.リーダーを決める
約束2.独自の奏法を入れる
約束3.自由なソロまわしを入れる
⑧中間発表・意見交換
各グループとも打楽器的要素がとても強く、メロディックな部分を作ることとfはもっとしっかり弾くことをアドバイスしました。
⑨発表会・まとめ
グループ1. リーダーが提示している基本リズムは音の変化に富み、最後のコスリでのアンサンブルは統一感があっておもしろい終わり方でした。どうしても弾くのでいっぱいになってしまうので、ソロ部分などは特にお互いをもっと聴きあってできるようアドバイスしました。
グループ2. それぞれの役割がどんどん変わり、三味線の扱い方も出てくる音も色々な要素がふんだんに盛り込まれてとてもおもしろい音楽でした。画期的な弾き方で目からうろこ!
みんな構え方や弾くのに苦労していましたが、音楽づくりでは自分たちなりにどうやれば弾けるかじっくり考え、実践できていました。新たな弾き方やおもしろ音がたくさん飛び出し、私もとても楽しい授業でした。学生さんによる授業でもぜひ三味線を扱ってもらえたらうれしいです。
授業担当:市川香里
2014年9月10日 (水)

■テーマ:尺八の奏法を活用した音楽づくり 〜「鶴之巣籠」を参考に〜

■担当:山口賢治  ■実施日:H26年9月10日

■狙い

「鶴之巣籠」は尺八の名曲として様々なヴァリエーションが存在する。どのヴァリエーションにおいても共通して玉音、コロコロの技巧が効果的に使用されている。尺八の場合、初心者はすぐには音が出ないが、尺八アダプターを使用すれば奏法上の制約を受けるものの、一応誰でも音を出すことが可能である。尺八アダプターを装着することを前提に全員が尺八を演奏し、玉音、コロコロの奏法を中心に音楽づくりを行う。玉音、コロコロの奏法を試みる過程を通じて、単純な構造でありながら多彩な音色が得られる尺八の特性の一端を少しでも体験してもらうことが狙いである。

■想定対象者:小学校高学年以上

■実施プログラム

① 尺八の基本的な吹き方の説明した。鳴らない人にはすぐにアダプターを装着してもらった。

② 各地方に伝わる様々な「鶴之巣籠」の演奏例を聴き、共通した表現法や奏法を聴き取ってもらった。鶴の巣籠 (奥州系/都山系/ 蓮芳軒・喜善軒所傅)、巣鶴鈴慕(琴古流)

③ 玉音、コロコロの説明と練習を行い、「鶴之巣籠」の様々な手の一部を模倣してもらった。

④ ②③を受けて自分の「鶴之巣籠」の手(音形パターン)を作ってもらい、トリル、トレモロ、玉音などを組み合わせて、音響の断片をつくってもらった。その後、2グループに分かれて創作発表した。

⑤アナログシンセサイザーと尺八との音遊びを試みた。

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■まとめ

尺八の場合、音楽を構成音のひとつひとつを取り出しても、その音そのものに様々な音色やフォルムなどの多様な要素が含まれている。一般的に西洋クラシック音楽において使われる管楽器の音にくらべて、尺八は音に含まれる情報量が多いと言える。伝統的な尺八音楽はこのような音の特性を効果的に活かした曲が多い。また尺八の演奏技巧に、このような音の特性を顕在化させるための工夫の体系が含まれている。例えば西洋の管楽器の場合、転調によって大きく音色が変わることはないが、尺八の場合には調によって全体の音色感が大きく異なる。なので音色や音量のバランスを考量し、運指や使用する楽器の長さの選択の判断がとても重要になる。 「鶴之巣籠」は、こうした尺八が有する特性を最大限に発揮した曲の例である。また鶴の誕生から死までのストーリーを曲構成に当てはめた曲もあり、「鹿の遠音」とならんで、名曲であると同時に音楽づくりの題材としても適している。 

尺八アダプターを装着したとはいえ、尺八の特徴である指孔が5つあり、かつ指孔が大きく、キーがついていない特性は失われないので、尺八の持つ性質の一部は体験できたと思う。学生達に「鶴之巣籠」の特徴的な部分の模倣をしてもらったが、最初は戸惑いを感じていたようであった。しかし自分なりに尺八の音のひとつひとつの感触を得ることはできたと思う。また副科で尺八を専攻している学生が一人いたのでワークショップを進行していく上で助けになった。このような試行を通じて音色そのものに対し、より傾聴する鑑賞態度に繋げることの効果が期待出来る。

また後半はアナログシンセサイザーと尺八との音遊びも試みた。最近は安価に様々な玩具の電子音具が入手できる。電子音玩具は、メロディーやハーモニー以前に、音そのものの面白さや音色の変化を楽しむ体験が気軽にできる。小さい子どもには、このような電子音玩具を使った音遊びから、尺八へと繋げることにより、違和感なく尺八古典本曲を鑑賞させることが可能ではないかと予想している。機会があれば試してみたい。

時間が足りなかったので、尺八の音や手を要素として音楽として構造化するまでには到らなかった。次回があれば、このワークショップを前段階として、その応用を進めたいと考えている。

尺八の奏法を活用した音楽づくり 〜「鶴之巣籠」を参考に〜
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2014年9月 7日 (日)

9月3日は後期最初の授業ということで、「みだれ」を題材に基本的なワークショップをしました。

後期は10月から学生によるワークショップをしますので、自分たちなりのワークショップ案を考えてもらえるようにワークショップをしながら手順を説明しつつ進めました。

ワークショップ内容は以下です。

ワークショップ名「みだれによる箏の音楽づくり」

ワークショップリーダー 吉原佐知子

題材 筝曲「みだれ」

使用楽器 箏7面(一人一面)

調弦 平調子

題材説明 「みだれ」は「六段」と同じく八橋検校作曲の段物の一つである。

「六段」は6つの段からなり、どの段も同じ拍数でつくられ、除々に速くなり、六段目の最後だけゆっくり弾いて終わるようにつくられているが、「みだれ」は10段である上に各段の拍数もばらばらで、段の途中でもゆっくりになったり、早くなったり、演奏も奏者によって様々であり、六段より音楽的で自由に演奏されている。

ワークショップの目的

1、箏の代表曲「みだれ」を知り、箏の基本的手法を身につける。

2、日本の音楽と西洋の音楽の違いを発見する。

3、「みだれ」の構造(よく使われている音型をちりばめる。だんだん速くなったり、突然ゆっくりになったり、間に注目)に着目した音楽づくりをする

ワークショップの流れ

1、アイスブレイク(手拍子回し)

・円になって手拍子で一人1回ずつ手拍子を回してだんだん早くしてみる。

・2人組になって手拍子でだんだん早くしたり、だんだん遅くしたりしてみる。最後は間をとって掛け声を入れて一発たたく。

2、吉原のよる「みだれ」の実演を聴く

3、「みだれ」をきいて、自分たちが普段やっている西洋音楽とどこが違うかを一人づつ発表する

「みだれと西洋音楽との比較」生徒の意見

・ベース(一と二のシャン)がずっと一緒

・エンディング(コーダ)がない(ように聞こえる)

・テンポが演奏者まかせ

・主題がない(ように聞こえる)

・一定のビート感がない

・間の取り方

・コーロリンがよく鳴ってる

・自由な感じに聞こえる

・掛け合いみたいなところがある。

4、全体ワークショップ

・「みだれ」の冒頭練習

・よく聞こえてきた手法やフレーズの練習(コーロリン、シャンテンシャンテンシャンテン、テントンシャンなど)

5、グループに分かれて音楽づくり

約束

・だんだん早くして途中で一度ゆっくりする。また早くしてゆっくりしておわる。

・ベースは一と二のシャンをどこかにいれて自由に考える

・よく聞きあって自由に音を重ねる

・3で気付いた、日本らしい音型や間合いを取り入れる

6、発表

みだれによる音楽づくり① 邦楽ワークショップ
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みだれによる音楽づくり② 邦楽ワークショップ
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7、講評、感想

 一つ目のグループはリーダーのベースの上で他の3人が掛け合いをしたり、まねっこしたり、メロディーを重ねたりと、とてもよく聴きあって、速さの調整も上手にできていて、しっかりとした、構造が見える作品になっていた。

 一方、二つ目のグループはリーダーがしっかりベースを弾いてだんだん早くしたり遅くしたりしているのだが、その上で他の二人はそのリーダーの速さに合わせてそれぞれがパターンやメロディーを重ねているだけにとどまり全体を聴いての音楽づくりまで出来ていないように聞こえた。ベース以外の二人がお互いをもっと聞きあって構造を考えて掛け合いをしたり少し相手のまねをしたりと、よく聞きあって音楽づくりをしてくれればさらに良い作品になったと思う。最後もみんなで一と五のシャンで終わる約束だったが、ベースの子のみで終わってしまったのは、自分のことで精いっぱいで回りが聞こえていない証拠なので、今後はもっとよく回りの音を聴いて音楽づくりをしてもらうように導いていきたいと思う。

また、学生たちは全員、洋楽器などの邦楽以外の生徒達であり、後期の1回目で久しぶりに箏に触れての音楽づくりだったため、音もまだしっかり出せていない学生もいるので仕方ないところもある。これからの授業でもどんどん邦楽器に触れて、良い音が出せるようになれば、余裕も出てきてまわりの音も聞こえてくると思うので、今後もたくさん邦楽器に触れてもらえるように授業を進めていきたいと思う。

以上

授業担当 吉原佐知子 記