■担当:山口賢治
■テーマ:三分音調律(18音平均律)による音楽づくり
■使用楽器:十三絃箏とキーボード
■想定対象
ある程度の専門性を有し、実験的な音楽や試みに対して興味を有する音楽関係者。
■概要
三輪眞弘 作曲「オーケストラのための、松村ギヤ・エンジンによるボレロ」
http://www.suntory.co.jp/news/2004/8889.html
を参考に音楽づくりを行った。
この作品は弦楽器群の1/3音を単位とした音郡の移動とそのクラスター効果を背景に、管楽器が全音音階に準じる旋律を奏でる構成となっている。
そこで、この仕組みを借りて、三分音調律(18音平均律)とその派生から抽出される全音音階とによる音楽づくりを箏を用いて行った。
下記の写真は三分音調律調絃にした箏である。赤い付箋の絃がそれぞれ(C,D,E,F♯,G♯)となっており、全音程の間を三分割に調律してある。
箏の絃が3本毎に全音程になるので、(一、四、七、十、巾)と弾くと、全音音階が抽出できる。
箏は自在に微分音程も含めて、自由に様々な音律調絃が実現出来る。この特性を活かし、過去にはトーンクラスター(半音よりも幅の狭い音程の集積による音の塊)を単位として音楽を構築する音楽づくりを試みた。
https://blog.senzoku.ac.jp/hougaku/2012/11/post-3d96.html
この時は箏柱を密着させて楽器にセットしたが、音程幅を確定させて微分音程に調絃したわけではない。今回は三分音に調絃(上記写真)した箏と、さらに三分音調律から抽出される全音音階に調絃した箏(およびキーボード)との組み合わせによる音楽づくりを試みた。
参考:全音音階による音楽づくり(2012年9月5日実施)
https://blog.senzoku.ac.jp/hougaku/2012/09/post-0caa.html
■実施プログラム
1、ワークショップの概要説明
箏の特性(調絃の自由性)
過去のワークショップの紹介(全音音階、トーンクラスター)
2、 三輪眞弘 作曲「オーケストラのための、松村ギヤ・エンジンによるボレロ」
の作品紹介と視聴。
3、 三分音調絃(18音平均律 )と、その派生から抽出される全音音階
(6音平均律)についての説明。
4、試作と発表
全音音階による試作
三分音調律による音楽試作
三分音調律と全音音律の箏で音楽試作
YouTube: 18音平均律(三分音律)と6音平均律(全音音階)によるアンサンブル試行
■考察と反省
今回は準備不足もあり、多くの課題や反省点があった。
1、三分音調律についての仕組みや調絃方法など、込み入った説明が必要だったため、学生の反応がやや鈍く、戸惑いがあった。
2、三分音調律を行うには、糸の張力調整が可能なネジ付きの箏や、様々なサイズの柱が必要であり、楽器やテクニカルな課題を解決する必要があった。しかし、箏の専攻生がいなかったので充分な対応ができなかった。
3、十三絃箏で三分音調律をすると絃の本数の制約があり、一面の楽器でカバーできる音域が狭くなってしまう。今回は異なる音域で三分音調律した箏を2面用意し、分担して演奏することで対応した。理想的には絃の本数が多く、付属のネジによる張力調整が可能な二十絃や二十五絃箏で三分音調律することがが望ましい。次回機会があれば十七絃を使用してみたい。
4、三分音調律と全音音律の箏で合奏した際に、全音音律の旋律が三分音調律の音の動きに埋もれ混濁しまい、音楽的効果が明確に現出しなかった。全音音律の旋律線をキーボード等の持続音楽にした場合には、混濁現象が避けられそうなので、鍵盤ハーモニカと箏を使って、再度この方法論を試してみたい。
事情により急遽、私自身がワークショップ担当を行うことになったため、準備不足であった。そのため意図する音楽的効果を出すための事前のテスト演奏が行えないまま授業日になってしまったため、消化不良の結果となってしまった。しかし、このテーマは過去の音楽づくりの方法論を発展させた内容なので、再度練り直したい。
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