2013年4月25日 (木)

三味線第2回目となる今回は特殊奏法と無拍・対話に着目して、三味線でどんな音が出せるかみんなで探求し、その音を使って音楽づくりをしました。
その様子をご報告させていただきます。

授業担当:中香里 記

『三味線でおしゃべり♪』

実施日:2013年4月24日
参加人数:大学生18名
使用楽器:三味線(本調子、DGD)
目的:三味線で独自の音を創造して音楽づくりに採り入れる、音楽づくり要素の拍と対話を理解し実践する

1、三味線準備、基本奏法の復習

2、特殊奏法の実践
スクイ・ハジキ・スリ・ウチ・アテハジキ・ウラハジキ・コスリ・ケシ・完消音・トレモロ・ソトオサエ・コキ爪
オトシ→邦楽の特徴的な無拍の音型として紹介

3、独自で奏法開発、発表

4、邦楽におけるパターン「地」の紹介
さらし地・砧地・虫の音など。
特殊奏法を採り入れながら展開していく例も提示。

5、対話の実践
例として玉木宏樹作曲『ジャワリ』の冒頭部分を中と三味線の学生で演奏。
前出の地にのせて無拍の対話を実践。

6、3グループで音楽づくり
独地(自)でおしゃべりしよう
約束①オリジナルの地を作る
約束②
特殊・独自の奏法を入れる
約束③無拍の部分を作る
約束④対話する
7、発表


YouTube: 三味線でおしゃべり①


YouTube: 三味線でおしゃべり②


YouTube: 三味線でおしゃべり③

独自奏法の開発では特殊奏法同士を組み合わせたり、絃の裏をコスってみたり、バチを絃に挟んで指でかき鳴らしてみたりと、今までにない斬新なおもしろアイデアがたくさん生まれました!

音楽づくりでは地も凝っていて、おもしろ奏法を採り入れながら楽しくおしゃべりをしてくれました。有拍部分の導入をもっとアドバイスすればよかったかなという反省点もありますが、素晴らしかったのはアイコンタクトでお互いをよく聴きながら対話していたところです。自分が弾くので必死になりがちですが、相手がどんなことをやっているのか、相手の音を聴きながら音楽づくりしようと前回から伝えていたのがアイコンタクトに現れて、その分どのグループも団結力が前回に比べ格段に上がっていました。

次回は山口先生による尺八の授業です!お楽しみに〜♪

2013年4月19日 (金)

今回から本格的にワークショップ授業が始まりました。
三味線を使った授業としても1回目ということで基本中の基本を学ぶべく、最近では機会のあまりなかった三味線での『さくら』をテーマに行いました。はたしてどのような授業になったのでしょうか。。。

授業担当:中香里 記


『音楽づくりスタート編~三味線で自分のさくらを咲かそう』

実施日:2013年4月17日
参加人数:大学生17名
使用楽器:三味線(三下り、HEA)
目的:三味線に親しむ、音楽づくりの基本要素を実践を通して理解する

1、アイスブレイク
①4拍と3拍でリズムまわし→反復
②4拍のリズム重ね→パターン

2、楽器準備・基本奏法

3、三味線で有拍リズムの反復・パターン探し

4、さくらの音型で拡大・縮小・逆行

5、さくらでパターンを作成
①さくらの冒頭4拍をモチーフにパターンを探して1人ずつ発表
②パターン組・メロディ組・合いの手でさくら合奏

6、2グループで音楽づくり
オリジナルのさくらを作ろう
約束①さくらが聞こえていること
約束②今日学んだ音楽づくり要素を入れること
約束③終始を決めること

7、発表


YouTube: さくら2013バージョン①


YouTube: さくら2013バージョン②

各グループとも今日学んだ要素だけでなく、来週行う予定の特殊奏法を入れてくれたり、合いの手に果敢にチャレンジする学生さんもいてステキなさくらが咲きました♪

三味線に初めて触る学生さんがほとんどでしたが(経験者は2人)、みんな楽器が弾きたくてウズウズしている様子で、基本奏法を教えただけでなかなか様になっていました。グループ実習では積極的に意見を出して早くもリーダーの片鱗を見せてくれた学生さんたちもいて、みんな楽しくも真剣に授業に取り組んでいました。
次回の三味線2回目では特殊奏法と無拍に着目して、三味線でどんな音が創り出せるのか探っていきたいと思います!

2013年4月10日 (水)

邦楽ワークショップの授業が今日から始まりました。坪能由紀子 先生を中心に全講師集合(左から中香里、吉原佐知子、坪能、山口賢治、味府美香)。邦楽、ジャズ、ロック&ポップス、管楽器、ピアノ、音楽デザインから受講学生が揃いました。今年度もいろいろな音楽づくりが期待出来ます。今年度はゲスト講師の招聘や他大学への出張しての合同ワークショップを計画しています。音楽づくりの活動をさらに拡げていきます。
Image
2012年12月30日 (日)

2012年12月19日に行われた今年度最後の授業の様子をご報告いたします。

今回はジャズ科4年生のTくんによる、拍子に着目した授業でした。
最後ということもあってTくん自身気合を入れて授業に臨み、Tくんの明るいキャラで最後の授業を楽しく締めくくってくれました。しかし、やりたいことや思っていることが自分の中だけでとどまって学生さんには説明不足でうまく伝えられず、学生さんも何をすればいいのか終始戸惑ってしまいました。そこで私がうまく誘導できればよかったのですが、授業前に充分な打ち合わせを行えなかったためにTくんの意図をよく理解できず、吉原先生の的確なアドバイスで音楽づくりまでたどりついたという授業でした。今回、事前準備と理解してもらえるようにわかりやすく話す難しさと大切さが身にしみてよくわかりました。Tくんとともに私も反省点の多い授業でしたが、今回の授業を来年度に生かしていければと思います。
一年間、どうもありがとうございました!

授業担当:中香里 記

以下、Tくんによる授業報告書です。

さくらの楽曲を元に拍子を変えた音楽づくり

☆対象:大学生6名
☆使用楽器:箏6面、打楽器
☆授業の目的:いつものような自由な拍での即興ではなく、拍子をはっきりとし、拍数をかえて発展させ音楽づくりを行う。
☆授業内容
①アイスブレイク
・グループごとにリズムの違うパートを重ねていき、全員入ったつぎの小節で同じリズムを叩くと言うもの。
②参考資料を聞く
・バレエサクラを参考にリズムパターンや拍数を考えて曲づくりに挑む
③箏の基本奏法の復習
④グループ実習
さくらを元にした音楽づくり
さくらのメロディをはじめは三拍、次を雰囲気を変えるため四拍にしテンポもアップする。
四拍時は打楽器を取り入れて雰囲気を変えました。
☆感想
当初とは全く違う目的になってしまい、曖昧な順序で困惑させてしまいました。
人数は少ないにしろ、1グループで音楽づくりができたことはよかったと思います。
最後の授業だったので本来は楽器をもっと使いたかったです。
今までの授業があまり拍子をはっきりとしてない即興だったので、それについてはできたのではと思います。
そこに今までのような拍のない即興をとりいれたらもっと面白くなったのではと言うのが反省点です。
2012年12月12日 (水)

12月12日の授業は実際に小学校に出向いて行った音楽づくりワークショップを振り返り、各学生に感想や反省点、今後の課題や問題点についての討議を行いました。

12月の5日、6日、7日、10日の4日間に渡って川崎市立末長小学校にて、日本現代音楽協会 現代音楽教育プログラム研究部会事業「EPCoM ワークショップ in 末長小学校」(ワークショップリーダー:松尾祐孝[日本現代音楽協会事務局長/現代音楽教育研究プログラム研究部会])が行われ、サポーターとして本講座受講の学生の一部が参加しました。その他の参加者は洗足教員、日本現代音楽協会会員、現代邦楽研究所出身者やそれらの人達からの紹介で集まった方達でした。実施対象は3年生5クラスで各クラス45分のワークショップを日を置いて2回行いました。進行案は添付ファイル(suenaga.pdf)になります。

普段の授業では、受講学生の間でリーダー、サポーター、参加者と役割を決め、様々な状況を想定してワークショップを行ってきました。特に今期は原則、前期と後期それぞれ一回づつワークショップリーダーとしてワークショップの計画、実施、報告までを課題に学生に取り組んでもらいました。今回はそこで試した成果を現場で活かす絶好の機会となりました。

討議の中でワークショップ参加学生から挙った声を下記に列記します。

・昨年もサポーターとして参加した経験として、学年が上がるにつれて児童たちの理解力、集中力の成長を直に感じることができたのは貴重な体験だった。

・同じ学年でもクラスによって違いがあった。静かで落ち着いたクラスや自由闊達な雰囲気のクラスもあり、そういったクラスごとのキャラクターに合わせた対応の必要性も感じた。

・サポーターとして、子ども達が自らアイディアを導きださせるようにするためには、どのようにヒントを出したら(言い方やタイミング等)効果的か悩むところがあった。

・子どもから出された意見がバラバラの時に、如何にすれば各々の子どもの考えを尊重しつつ、最終的に一つの音楽にまとめられるのかが課題となった。

・2回目のワークショップで事前に演奏のための設計図を作成してきたり、熱心に自主練習してきたクラスがあり、この点はとても評価できた。ただ、事前練習を熱心にしてきたあまり、本来の狙いである各自が見つけた音素材を使って即興的に音楽を構築することから外れ、既存の曲をベースとした再現演奏に固執してしまい、そこから発展することが充分にできなかったグループが存在した。このような場合についての対策や対応について検討する必要があると思われる。

・どうしても自分が出している音に夢中になってしまい、他の人の音を聴く事ができなくなってしまう子どもがいた。常に周りの音を聴き、気を配りながら音を出すように子ども達に対して適切に指導しなければならいと思った。

・サポーターとしてどこまで子ども達に意見を言ったり、方向性を示したら良いのかについて迷った。子どもや状況によって様々なので、指示の度合いや加減が難しく、適切な判断を下すには経験が必要であると思った。

・今回の音楽づくりの過程で、理解力がついていけてない子どもが一部に見受けらた。そのような子どもに対してのケアーの方法についても考えなければいけないと感じた。


今回の経験を活かして、今後の活動の糧にしてしてくれることを望みます。

以上。担当:山口賢治


704009_181732335300075_88469404_o














suenaga.pdfをダウンロード


2012年11月30日 (金)

2012年11月28日に行われた授業の様子です。
今回は担当予定だった学生さんがお休みだったため、急遽私が授業を行いました。

授業担当:中香里 記

テーマ:図形楽譜で音楽づくり~三味線ver.

対象:大学生

使用楽器:三味線6挺(本調子)

目的:三味線の基本奏法の見直しと同時に、三味線でどんな音が出せるのか、独自の音を見つける。また図形から様々に連想して音に結びつけることで、音の表現の可能性を模索・追求する。

①基本奏法の復習
三味線の構え方・弾き方の基本を見直し、基本奏法(スクイ・ハジキ・ウチ・コキ)を確認した。

②特殊奏法の復習と新たな奏法の紹介
今までに授業で採り上げて学んだ特殊奏法(コスリ・アテハジキ・ウラハジキ・コキ爪・スリアゲ・スリサゲ)を復習し、新たにソトオサエ・消音・完消音の特殊奏法を紹介し、練習した。

③特殊奏法が効果的に使われている作品の試聴
参考資料として杵屋正邦作曲《浮拍子》の動画を試聴し、奏法の使われ方を一例として確認した。

④独自の奏法を発見・発表
三味線でどんな音が出るか自分で開発し、発表してもらった。
☆三味線に慣れていない学生さんほどユニークな発想をして、みんなを驚かせていました。

⑤図形を声や体、三味線で表現
ホワイトボードに学生さんに好きな図形を書いてもらい、スタート地点と進行方向を決め、私が時間軸を担当してまずは声と体を使って全員で自由に表現してもらった。次に、この図形のこの部分は三味線ではどんな音で表現できるかをみんなに意見を出してもらい、それから三味線で図形を演奏した。
☆同じ図形でも人によって連想するものが違うため、お互いの意見や音を興味深そうに聴いていました。

⑥グループ実習
3人1組の2チームに分かれてチームごとに紙に好きな図形を書き、進行方向や表現方法などを話し合ってもらった。

⑦発表
まずは自分達で書いた図形楽譜を演奏した。
グループ1:図形A


YouTube: 図形楽譜で音楽づくり①

グループ2:図形B


YouTube: 図形楽譜で音楽づくり②

そのあとお互いのチームの図形楽譜を交換して演奏してもらった。
グループ1:図形B


YouTube: 図形楽譜で音楽づくり③

グループ2:図形A

この部分はどのような表現をしたか、図形から連想したものは何だったのかをみんなで発表し合い、授業終了。(80分)

両チームとも今まで学んできた奏法や独自で編み出した奏法を存分に生かした演奏をみせてくれました。同じ図形楽譜でも他のグループが演奏すると全く別物になり、表現は無限にあるんだということをみんな再認識したようでした。しかし、三味線でどんな音が出せるかを追求するあまりに発表では奏法に偏った演奏になってしまったので、ドローンや対話などの音楽づくりの要素も採り入れられるようにもっとアドバイスをすべきでしたし、音楽づくりというよりは音づくりの授業になってしまいました。ここからどのように音楽づくりへ結びつけていくかを今後の私の課題としようと思います。
ありがとうございました。
上:図形AA_3  下:図形B                               
B_3
2012年11月25日 (日)

11月14日は現代邦楽コース、箏専攻4年のMさんによる「特殊奏法を用いての音楽づくり」でした。

Mさんは邦楽ワークショップの履修が今年で3年目なので、ワークショップリーダーぶりも板に付いていて、安心して見ていられました。お話の仕方もはっきりしているし、時折ユーモアのある雰囲気もかもしだして、とても和やかで臨機応変でスムーズな流れでした。

1面の箏を三人で使って発表したのですが、3グループともそれぞれの使い方でした。(さくらの音以外の調弦を変えても良いと言ったせいもあるかもしれません)創作中もMさんがアドバイスしたりしていて、とても良かったです。

2番目のグループで音楽デザインコースのK君が素敵なコードを作って創作してくれて、みんな感嘆していました。

箏は特に奏法がたくさんあるので、そこに焦点を当て、さらに楽器が少なくてもみんなで楽しめるワークショップという点で、とても良い内容でした。

以下、Mさんによるワークショップ報告です。

授業担当 吉原佐知子 記

テーマ:特殊奏法を用いての音楽づくり

◆目的
ワークショップで親しまれやすい特殊奏法が実際に音楽にどのように使用されているかを学び、そこから自分たちで新しい奏法を見つけ音楽づくりを行ってもらう。

◆用意する楽器
箏三面・その他打楽器

◆対象
大学生

◆実施内容

1,基本的な箏の奏法の説明
スクイ爪、合わせ爪、押し手などの奏法を今までの復習の意味も込めて簡単に説明しながら実際にやってもらった。

2,資料提示①
上記から押し手をピックアップ。押し手の奏法を細かく分類してみると

・オシ
・ツキイロ
・アトオシ
・オシハナシ
・ユリ
・カケオシ

これだけの奏法がある。これらを多用した、池辺晋一郎作曲の「凍る」を観てもらい、どのように使われているかを確認。

3,音楽づくり①
・「さくら」を題材にし、まずはリーダーのドローンにのせ、パターンを重ねていく音楽づくりをしてもらった。
・次に、先ほど観た押し手の奏法を使い、四拍子を三拍子に変えてみたりしながら同様に音楽づくりを行ってもらった。




YouTube: 押し手による音楽ゲーム 11/14邦楽ワークショップ

4, 資料提示②
実際に特殊奏法を使った楽曲を観てもらう。杵屋正邦作曲「綺羅」、石垣征山作曲「和の韻(ひびき)」
「綺羅」では途中でスティックを取り出し、絃の左側を叩くという奏法、「和の韻」では冒頭に爪の輪の部分で龍角の先端部分をカチカチと叩くという奏法が出てきた。

5,音楽づくり②
先ほど観た資料を参考にし、今度は自分たちで新しい奏法を見つけてもらい、「さくら」を題材にして音楽づくりを行ってもらった。

制約として

・「さくら」は全曲弾かず、フレーズの一部だけを用いてもよい。
・自由にやってよいが、楽器を傷つけない範囲で行うこと。

を提示した。




YouTube: 箏の特殊奏法によるワークショップ① 邦楽ワークショップ




YouTube: 箏の特殊奏法によるワークショップ ② 邦楽ワークショップ




YouTube: 箏の特殊奏法による音楽ワークショップ③ 邦楽ワークショップ

以上。

2012年11月22日 (木)

11月21日の邦楽ワークショップは担当講師の山口賢治が行いました。

■テーマ: 箏を使ったトーンクラスタによる音楽づくり

■実施日:11月21日

■実施者:山口賢治

■楽器:箏+その他

■目的:現代音楽の重要な作曲技法のひとつであるトーンクラスタによる音楽づくりを試みました。トーンクラスタとは半音程や更に狭い微分音程の積み重ねによる、ある一定の音域の幅を有する密集音群を言います。1960年前後にペンデレツキやリゲティによる作曲家らがこの技法を全面的に活用して作品を書いています。箏は柱の位置によって連続的に自由に音程をつくることが可能であります。この箏の特性を利用して容易に密集音群をつくることができます。(写真1)

これらの仕掛けでつくられる音楽には、明確な旋律、拍節的な律動、和声学的な意味での和音の要素が基本的には現れません。音楽づくりを通じて”トーンクラスタ”の概念や音群ユニットの扱い方を体験し、音楽鑑賞の幅を広げることが狙いでした。

■想定実施対象

音楽系クラブ活動に所属する者や音楽愛好家等、一定の音楽的な知識や経験を有する人たちを想定しました。必ずしも箏の基本的な演奏技術を習得していない人でも演奏に参加できます。参加人数は少なくとも数名以上が必要で、人数が多ければ効果的です。

■実施スケジュール

① トーンクラスタの説明

② 作品例の鑑賞

「広島の犠牲にささげる哀歌」ペンデレツキ 作曲

「アトモスフェール」リゲティ 作曲

「累ー5×4箏群のためにー」池辺晋一郎 作曲

③ 箏を使ってトーンクラスタによる演奏試演

柱を互いに接するように並べた高音群、中音群、低音群の3群に箏を分けました。音はグリッサンドによって音響をつくり、順序と強さを下記のワークシートに従って音を出してもらいました。それぞれの群ごとの音の質感や強弱とその組み合せによってできる音空間を演奏しながら聴いてもらい感覚をつかんでもらいました。(写真2)

④ A、Bの2グループに分かれてトーンクラスタによる音楽づくりと発表を行いました。グループごとに話合いながらワークシートに各演奏セクションにおける強弱、音高、奏法、ニュアンス等を書き込み、全体としての形式も考慮して演奏のための設計図を作成し、それに従い演奏してもらいました。(写真3)

⑤ ④でつくったワークシートを元にしてさらにAグループはトーンチャイム、Bグループは三味線を加えて再度演奏発表してもらいました。三味線は箏がつくる音響に合うようにD-As-Dの調弦を選びました。これは三木稔 作曲 三味線独奏曲「奔手」で用いられる特殊な調絃です。

■まとめ

トーンクラスタによる音楽は一般的な音楽の要素である旋律、律動、和声による組み立てに寄らないので、その他の音楽的要素について意識し、具体的に操作することが要求される課題でした。箏のグリッサンドや手で叩く奏法などは小学生低学年でもできますが、えてして散漫な一定の音響の持続に留まる事態が起こります。これを避けるために、どのようにすれば音響から音楽として成立させることができるのかについて音楽的な知識や考察に基づく応用力が必要となります。例えば今回AグループではGPを挿入することで区切りをつくり、音響と静寂の対立を持って形式感を生み出そうとしました。今日のワークショップは音楽の要素について考え、これを操作し、構造的に捉えるためのひとつのモデルになると思います。

ワークショップ実施前は半分の学生がトーンクラスタについて知りませんでした。また、③ の試演段階では全体的に戸惑いがありましたが、すぐに内容を理解し、音楽の形にすることができたのは流石でした。それぞれの音群のユニットに対して、どのようなキャラクターを持たせると面白くなるのかについて各人が工夫し、さらにそれをリーダーが上手くまとめてくれました。BグループにいたKくんは理論的に音楽を考えるのが得意なので、 ⑤の時に、どのように三味線を弾けば効果的かについて提言があり、それが結果に活かされた点が良かったです。

写真1(微分音調絃)

Pict0002_5















写真2(試演のためのワークシート)

Pict0001_5
















写真3(Bグループの演奏ワークシート)

12112101_3


YouTube: 箏を使ったトーンクラスタによる音楽づくり

2012年11月 9日 (金)

11月7日は、予定していた生徒が風邪で休みのため、急遽、担当の吉原が越天楽のテーマによる音楽づくりをしました。

授業内容は以下です。

テーマ「越天楽のテーマによる音楽づくり」

目的:・日本古来の越天楽のテーマに親しむ。

    ・箏の様々な奏法を習得する。

    ・音楽づくりをする過程をもう一度確認する。

 

対象:今回は大学生8人でしたが、小学校高学年以上でも可能。

使用楽器: 箏8面、三味線1丁

<内容>

1、アイスブレイク

手拍子回し ・早回し

        ・4拍のパターン回し。(前の人のを聞いて、それに合わせたリズムや音色を工夫する。)

        ・パターン重ねの上でソロをしたり、対話したり。

2、<平調「越天楽」による箏変奏曲>のDVDを見る

 宮城道雄作曲の越天楽変奏曲のビデオを見て、箏とオーケストラによる越天楽のテーマがどのように展開されているかを見て、聞いてもらう。

3、箏に移動して全体ワークショップ。

  ・基本奏法、特殊奏法を練習する。(かけ爪、割爪、すくい爪、平爪、トレモロ etc.)

  ・音探しゲーム(自分たちで発見した越天楽らしい音を見つけてもらい、吉原のドローンの上で対話してもらう)

  ・越天楽のメロディーを練習し、三味線のドローンの上でカノンで演奏してみる。

  ・越天楽らしい4拍のパターンを作ってもらい、箏はパターンと飾りに別れ、三味線にメロディーをひいてもらう。

4、グループに別れて音楽づくり。

  約束:始まり方、終わり方を決める。

      有拍と無拍の部分を作る。

      なるべく習った奏法や発見した奏法を駆使する。




YouTube: 越天楽のテーマによる音楽づくり① 邦楽ワークショップ




YouTube: 越天楽のテーマによる音楽づくり 邦楽ワークショップ

感想:1つ目のグループは、三味線が入っていて、自分たちで工夫して出来ていました。途中、箏柱が倒れてしまい、残念でした。

小学校にも1丁だけ三味線がおいてあったりするので、このように使えば効果的だと思いました。

生徒の感想も「三味線が一つはいっているだけでも雰囲気が違っておもしろい!」と言っていました。

(一つ目の録画が操作ミスで途中で切れてしまいました。すみません。)

2つ目のグループは、音楽づくりの過程で、いろいろアドバイスを入れました。やはり、パターンやドローンの効果的な使い方が定着していないと実感しました。

たまにこのようなオーソドックスな邦楽ワークショップを入れたほうがいいかも、とおもいました。

生徒の感想は「越天楽のメロディーをくずしていたり、はずんだパターンのところがあったり、とってもクールだった!」というものでした。

今回の調弦は民謡音階でした。五音音階なので行ったり来たりするだけですぐに越天楽風になります。箏は様々なレベルの生徒が親しめる良い教材だと改めて実感しました。

吉原

2012年11月 5日 (月)

10月31日は現代邦楽コースで津軽三味線専攻3年生のIさんが担当しました。前期は「津軽じょんから節を弾いてみよう」をテーマにワークショップを実施してくれました。

https://blog.senzoku.ac.jp/hougaku/2012/06/post-b027.html

今回はさらに自分の専門を活かして、 「阿波おどりの音楽に触れよう!」としてワークショップを行いました。

以下は Iさんの実施報告です。

◆テーマ

阿波おどりの音楽に触れよう!

◆目的

濃厚民族が多かった日本において、阿波おどりのような騎馬民族型のリズムは珍しいことである。今回はそのリズムに触れ、日本の珍しい文化を知ってもらう。また、太鼓の手や三味線の手にアドリブを入れてより身近に感じてもらう。

◆教具

三味線3丁(D一の三下がり)

カンカン(打楽器になるもの)

◆対象者

大学生以上

◆プログラム内容

1・阿波おどりの説明

  徳島県徳島市が本場。三大盆踊りと言われていること。かさや下駄を実際に見せながら説明。youtubeで若駒連、天水連の映像を鑑賞。


2・鳴り物の役割を知る

  太鼓の手を手拍子で叩いてみる。

  鉦の手を手拍子で叩いてみる。

  三味線の手を弾いてみる。

  役割を決めて合わせる。

  役割を替えてまた合わせる。


3・踊り方を知る

  基本の中腰、膝の動きを習得する。

  足を動かす。前かがみ体制で踊る。手の動きを習得する。(途中休憩を入れながら)

  掛け声を入れる。

   1かけ2かけ3かけて

   4かけたおどりはやめられぬ

   5かけ6かけ7(しち)かけて

   8っぱりおどりはやめられぬ

   ヤットサー  ヤットヤット

4・鳴り物組みと踊りを合わせる

  鳴り物にアドリブを入れる。

  例:(太鼓の手)どどんどどん→どどどどどどどど…など

  役割を替えて演奏。


5・踊りの動き方を知る

  一回転する、『くるっとぽん』、90度ずつ動く『ちょんちょんちょん』


以上のことを踏まえた上で全員で合わせる。

◆まとめ

今までのワークショップで体を動かすということはほとんどなかった。わたしが阿波おどりをやっているということもあり、今回この題材に設定したが、踊りのワークショップになってしまうのではと危惧された。最終的には音楽があって踊りが入るという形にまとめた。授業を終えてから「踊りがあって音楽のイメージが掴めた」と言う意見が出たので、結果的に踊りも取り入れて良かったと思う。今後の課題として、阿波おどりとは違った音楽、例えばジャズやクラシックなどでも阿波踊ることが出来るのかワークショップの中でできたらと思う。


YouTube: 邦楽ワークショップ「阿波踊り」

【担当教員からのコメント】

Iさんは高円寺の阿波踊りのグループに属しており、毎年開催される高円寺阿波踊り祭にも参加する程なので「阿波踊り」を題材にしたのことは良い着眼点でした。踊りが披露される祭りの現場や、踊りの種類、音楽と踊りの対応関係、装具やその身につけ方等について、経験者ならではの話が聞けたのはとても興味をひきました。

本人のまとめにもあるように、このワークショップ案について、計画段階では音楽づくりではなく踊りのワークショップになってしまう心配がありました。しかし、ジャンルによっては踊りや舞と密接に結びついた音楽もあるので、むしろ踊りの要素を除外する方が不自然な場合もあると思われます。なので、音楽とのかかわりに結びつけながら踊りについて触れるのであればテーマから外れることはないと判断しました。

今回は「阿波踊り」の音楽から入り、踊りも加えられたましたが、逆に踊りから入り音楽へ繋げる方法も考えられます。近年、中学校において武道と合わせてダンスを必修課題としている点や若い世代でダンス文化が浸透している現状を考慮すると、踊りを入口として日本の伝統音楽に触れる機会をつくる方法論として、Iさんのワークショッププログラムはひとつの手がかりになると評価できます。(担当:山口賢治)