7月10日は吉原による「アジアのコトの奏法を使ったワークショップ」を行いました。
このワークショップは「音楽づくりの授業アイディア集」音楽之友社出版、坪能由紀子、味府美香、他著より、P、66「箏から広がるアジアのコト」を参考に実施したものです。
洗足学園音楽大学では初めての試みのワークショップでしたが、新しい発見がたくさんありました。また、学生が頑張っていろいろな奏法を駆使して音楽づくりをしてくれたおかげで、素敵な作品が出来上がり、そこから見えてくるアジアのコトに着目する意義の深さを感じました。
内容は以下です。
実施日2013年7月10日
ワークショップリーダー:吉原佐知子
対象:洗足学園音楽大学 学生 8名
使用楽器:箏8面
調弦:E,G,A.C,D,E,G,A,C,D,E,G,A
目的:
・日本の箏と同じ、アジアのコト類に着目して、日本とアジアのコト類の類似点と相違点を知る。
・日本、中国、韓国のそれぞれのコトの奏法に親しむ
・3つの国のコトの奏法を使って音楽づくりをすることにより、同じコト類としてのアジアの楽器を身近に感じる。
内容:
①日本の箏のさまざまな奏法を知ってもらうため、吉原による宮城道雄作曲「虫の歌」の演奏を聴いててもらった後、全員で日本らしいの奏法を練習する。
*かけ爪、割り爪、平爪、トレモロ、輪連(サーラリン)etc.
②韓国の楽器のDVDをみて奏法をまねしてみる。
*カヤグム
特徴 指ではじく。
押し手(韓国語でシキムセ)を多用
*アジェン
特徴 弓でこすり、左手は押し手
③中国の楽器のDVDを見て奏法をまねしてみる。
*古箏
特徴 グリッサンド 押し手 金属弦
*楊琴
特徴 バチで弦をたたく、トレモロのように連打する。
④今まで出てきた奏法を使って
*好きなタイミングでいろいろな音を出してみる
*対話をする。
*重ねる
*パターン重ねの上でソロまわしや対話をしてみる。
⑤2つのグループに別れて音楽づくり
⑥発表
YouTube: アジアの奏法によるワークショップ 邦楽ワークショップ
YouTube: アジアの箏の奏法によるワークショップ 邦楽ワークショップ
⑦講評&感想
<作品について>
一つ目のグループは国別の音楽づくりであった。流れは、日本(遅めの4拍子)→中国(早めの3拍子)→韓国(普通の速さの4拍子)
という、とてもしっかりした構成による音楽づくりをしてくれ、よくまとまっていた。
二つ目のグループは奏法ごとにパターンミュージックをしてくれ、フリーで即興性の高い素敵な音楽ができた。
全く雰囲気の違う音楽がうまれ、対称的でとても興味深い結果になった。
<生徒の感想>
* 楽しかった。
*日本のコトで3つの国のコトを体験できて良かった。
*初めは音楽づくりをするのがためらわれたが、やってみたら簡単に色々できて良かった。
*違う国の奏法まで体験できて良かった。
<吉原感想>
今までは調弦を中国風にしたり、都節にして日本らしく、アリランが弾ける調弦にして韓国風に、というように、調弦を変えて各国の音楽を表現することはあったが、調弦を統一して奏法のみで国別の音楽づくりをするというのアプローチは初めてで、新しい試みであった。
3つの国のコトは素材は違えど、どれも木に弦を張った弦楽器である。形も少しずつ違うが、ルーツが一緒なので、音楽づくりもし易いと思う。
左手はどれも押し手を多用する所が共通している。右手は爪をはめたり、指で弾いたり、弓でこすったり、バチを使ったりと相違点が多く見られた。
今回の参加学生はほとんど箏が弾けないのだが、たくさん音を出して果敢に音楽づくりにチャレンジしてくれた。参加者が日本の箏についても初心者だったからこそ、日本の楽器とアジアの楽器を同じレベルで見ることができ、結果、躊躇なく自由に音楽づくりができたのかも知れない。
このワークショップは、アジアのコトについてや、コト類の中の一つとして日本の箏を見ることができるという点で、大いに意義のあるものであった。これからもたびたびアジアのコトを多方面からアプローチして題材として取り上げていきたいと思う。
授業担当:吉原佐知子 記