2012年6月6日(水)の邦楽ワークショップのご報告です。
今回は管楽器コース2年生のSさんがワークショップを担当しました。
Sさんはこの授業の最年少で今年が初めての履修の学生です。本人は自信がないと言っていましたが、いざ、ワークショッ
プ案を持ってくると、やりたいことが明確で音楽的芯のある学生でした。
今回のワークショップは「肥後手まり唄」と「重ねて」がキーワードでした。そして、今年初めて邦楽器以外の楽器が音
楽づくりに登場します。Sさんの専攻するファゴットです。ファゴットと邦楽器?と思われるかもしれませんが、Sさんに
「なぜファゴットを使うの?」と聞いたら、「同じ『木』(ファゴットは木管楽器ということで)でできた楽器なので、
音が合うのではないかと思った」ということでした。
Sさん、とても緊張していましたがワークショップのながれが導入からとてもスムーズ且つそれぞれの活動を有機的に結び
つけていて素晴らしかったです。詳しいワークショップの内容はSさんの報告をご覧ください。
授業担当 味府美香・記
<授業報告(Sさんによる報告)> 実施日:2012年6月6日
◇目的・目標
誰もが耳にしたことがあるだろう「肥後手まり唄」を用いて、音(フレーズでありリズムであり)をどのように重ねるこ
とが、1つの曲としてのまとまりや聴きやすさを引き出すことができるのかを意識する。
それぞれの、感覚、今までのワークショップで得た知識や経験を使い、提示されたテーマの音楽を上手く活かしたオリジ
ナルの1曲を作り出すこと。
◇実施対象
大学生以上約10名
◇実施プログラム
①アイスブレイク(楽器不使用、手拍子で行う):約10分
リーダーが基本になるテンポ・リズムを常に刻み、そのうえから1人ずつ、既になっているリズムを活かしたリズム打ち
を重ねていく。
上記の基本形で持ち拍を4拍にしたり2拍にしたりする。本活動で用いる「肥後手まり唄」に多用されるリズムパターン
をリーダーが叩き、全員で(1周で)音量の強弱をつける…などのルールを追加したりする。これによって、本活動での
音楽作りのルールになる事柄に自然に慣れてもらうことが目的。
②CDを聴き、音楽作りの参考にする:約10分
・『日本の現代音楽の古典』
→いくつもの違うメロディーが上手く一度に重なり、1つの曲になっている(「重ね」)。その中に「肥後手まり唄」も
組み込まれていて、曲の音量の強弱も激しく、邦楽ワークショップらしい、民謡が中心の曲である。また、今回は提示し
なかったが、今までのワークショップで何度も出てきた「対話」もたくさん入っている。
・『Galopp』『Sweet swing』『Tango』
→全てファゴットのアンサンブル曲。音楽作りでファゴットを入れる際の参考として取り入れた。ファ
ゴット自体はあまり馴染みのない楽器ではあるが、幅広い音楽に適用できるという雰囲気をなんとなく
掴んでもらいたかったので、最後まで流さず曲の触りを少しずつ聴いてもらった。
③「肥後手まり唄」に慣れる:約15分
箏の基本的な奏法をおさらいしてから、「肥後手まり唄」のワンフレーズを箏で弾いてみる(邦楽コースの学生にサポート
してもらい、奏法や「肥後手まり唄」の運指などはホワイトボードに記しておいた)。
*実際のワークショップでは②と③の順番は上記通りではなく、混同した(「肥後手まり唄」を聴いて箏の奏法や曲のワン
フレーズの練習→ファゴットの曲の鑑賞→グループでの音楽作り)
④音楽作り
2グループに分かれて、約20分の時間を使って音楽づくりを行った。その後、出来た音楽を発表し、互いに間奏を伝えあっ
た(つくる作品の長さは指定しなかったが、発表後の感想も含め1グループ約5分ずつだった)。
<音楽づくりのルール>
▼どの様な使い方でも良いので、「肥後手まり唄」に出てくる[付点八分・十六分・八分]のリズムを入れること
▼箏の様々な奏法を取り入れること
▼音やリズムの「重ね」を意識すること(特にファゴットの「肥後手まり唄」と重ねるとき)
▼どこかに音楽のピーク(山場)を作る(強弱を作る)
→曲として1つのまとまりにすることに難易度が少し高いように感じるが、どんな曲でも何らかの音楽の頂点があると思い、
今回は音量の強弱をつけることで、あまりその部分を意識しなくても、1つの音楽として曲全体を上手くまとめやすくする為。
~音楽全体の流れ~
最初は箏だけで始まり、途中からファゴットが「肥後手まり唄」で参加(四分の二拍子、28小節)し、最後はまた箏だけで終わる
▼邦楽ワークショップを計画・実施した感想
実は、ワークショップ当初に「春の海」を弾く為の箏の調弦をみて、自分のワークショップには「肥後手まり唄」が使えるのでは
と考えました。そして、自分の専攻の管楽器(クラシック)だけれど、クラシックは使わずに、専攻楽器「ファゴット」を持ち込もう
と考えました。参考資料の『日本の現代音楽の古典』は、自らがオーケストラ・吹奏楽で実際に演奏した経験があり、曲の構
成も充実していて、個人的に好きな曲なので皆さんに聴いてもらいたかった・・・という理由があります。ワークショップ実施に
至るまでの経緯を色々と書きましたが、何より楽しく、自由な発想・感覚で音楽作りをしてもらいたかったので、自分がこのワ
ークショップを受ける立場だったらと考え、ホワイトボードに書く字の大きさから、最後の音楽作りの際どうすればファゴットの
「肥後手まり唄」を28小節数えずに済むか・・・など、できるだけ配慮したつもりです。
皆さんの音楽センスが素晴らしく、多くを説明しなくても自分の計画を理解してながれにそってもらえたので、とてもワークショ
ップを進めやすかったです。最後の音楽作りは、聴いていているときも、ファゴットで一緒に参加させてもらっているときも楽し
かったです。
皆さんのおかげで予想以上に完成度が高くなって嬉しかったですし、ワークショップ中に様々な発見もありました。
このワークショップの計画にいろいろ協力くださった、味府先生、授業前に箏を準備していただいたり授業中にお手本や箏の
運指をお手伝いしてくださった邦楽コースの先輩・先生方、ワークショップに参加してくださった皆さん・・・全ての人に感謝して
います。
長くなってしまいましたが、これからの邦楽ワークショップも楽しみにしています。また、今回のワークショップへのご意見や感
想などありましたら、色々勉強したいと思っているのでお願いいたします。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
YouTube: 邦楽ワークショップ「肥後手まり唄」と「重ね」1
YouTube: 邦楽ワークショップ「肥後手まり唄」と「重ね」2