11月9日に洗足音楽表現教育研究会による第3回 SeMEES フォーラムが開催され、様々な公開講座やシンポジウムが開催されました。
この中で『箏による音楽づくりワークショップ ~微分音程調弦によるトーンクラスター~ 』が実施されました。
写真は箏をプレピアード化させている様子です。
上記の動画は創作の一例です。伝統的調絃と微分音程調絃を1面の箏の中で複合させています。
このフォーラムは来年の実施も予定しています。
11月9日に洗足音楽表現教育研究会による第3回 SeMEES フォーラムが開催され、様々な公開講座やシンポジウムが開催されました。
この中で『箏による音楽づくりワークショップ ~微分音程調弦によるトーンクラスター~ 』が実施されました。
写真は箏をプレピアード化させている様子です。
上記の動画は創作の一例です。伝統的調絃と微分音程調絃を1面の箏の中で複合させています。
このフォーラムは来年の実施も予定しています。
■テーマ
ペットボトルによる音楽づくり
〜竹を用いた音楽づくりの方法論の応用〜
■実施日
10月23日
■担当学生
管楽器専攻学生3年
■実施概要
笛、尺八や打楽器など竹を素材にした邦楽器や獅子おどし等、竹は日本に身近な素材のであり、竹から発せられる音に多くの人が親近感を抱く。竹を使った音楽づくりのワークショップは各地で実施され実績を上げているが、材料の入手の問題、ささくれによる怪我の注意、破片の散乱による床の汚れなどの問題点に対処する必要がある。そこで安全性が高く、材料入手の容易なペットボトルを用いて、竹を用いた音楽づくりの方法論を活用し音楽づくりを試みた。
■使用楽器、道具
様々なサイズのペットボトル、スティック 他
■実施想定対象
小学生、音楽経験の浅い大人を含むグループ。
■実施プログラム
1、一人ひとり好きなペットボトルを選んでもらい面白い音を探ってもらった。
2、探った音を一人一人発表してもらい、どうのような音の出し方があるのかまとめた。
3、音で会話してもらった。擦るだけ、叩くだけ、吹くだけなど音の出し方を限定して実施した。
4、一人一人4拍づつ好きな音とリズムの音形パターンを考えてもらい、発表した。
5、4で各自が考えた音形を積み重ねて演奏した。
6、5までのステップを踏まえて2グループに別れ、創作発表を行った。
■まとめ
竹を用いた音楽づくりの方法論を活用したが、竹では得ることの出来ない音、例えば潰す、水やビーズを蓋をして振るなどが発見があった。ペットボトルの中に勢い良く息を入れて風の音を出すことは尺八のムラ息と共通するなど、出された音や作られた音楽の中に日本の伝統音楽の中で聞かれる要素を見いだすことができたのが収穫であった。
■担当教員からのコメント
今回はペットボトルをそのまま音具として使用したが、様々な加工を施せば、さらに音のヴァリエーションが増え、創作の幅が広がることが期待出来る。また、ペットボトルによる演奏例の紹介もあると理解が深まると思われる。竹を使用した場合とペットボトルを用いた場合とで、プログラムやつくられる音楽の共通点や相違点を分析して整理することが課題である。
担当:山口賢治
洗足学園音楽大学/大学院では、教員の自己啓発と相互啓発の更なる促進を目指して、 [洗足音楽表現教育研究会/Senzoku Music Expression & Education Society] (略称=SeMEES/セミーズ)を平成23年度に設立いたしました。皆様のご承知置きと今後の展開へのご注目をお願いいたします。
開設初年度の初回学会と翌年度の第2回に続き、今年度も《SeMEESフォーラム》を開催いたします。音楽大学ならではの“会員教員による研究発表”を主体とした1日学会となります。教員各自がライフワークとしている研究テーマや、作品・作曲家へのアプローチ、演奏テクニック・メカニックの開発、教育法・レッスン法の研究、等々、発表題材・テーマは広範に展開しています。音楽大学としての特色を活かした、新しい時代に相応しい、音楽・文化・芸術・教育というフィールドに相応しい、柔軟性と多様性に溢れた学会・フォーラムを目指しております。今回は、文書発表や連携イベント(演奏会)も組み合わせた開催となっています。
聴講者としての参加は、広く一般にも開放いたします。会場受付に資料代500円をお支払いいただければ、ご自由に研究発表等を聴講することができます。(本学学生=学部生・専攻科生・大学院生)は無料です。) 会場には、研究発表者のみならず多数の本学教員が集結いたします。ロビーでの質疑応答等も大歓迎ですので、皆様お気軽に相互啓発と交流の時をお過ごしいただければ幸いです。
ご来場の上、ご高評を賜りますよう、ご案内申し上げます。 第3回SeMEESフォーラム 実行委員会
10月2日の邦楽ワークショップロックコースの学生2名による当鉦を使ったワークショップでした。
【学生からの実施報告】
■テーマ
音の強弱(※1ベロシティ)と音価について 音楽の表現力
■実施目的
音楽の表現力 音楽を作るにおいて「音程」以外に重要なこととは何かを(再)確認する。
■用意する楽器や人員
音楽をより楽しみたいと思っている中高生~大人の方まで(音楽家を除く)10名~
■実施プログラム
1、『アイスブレイクver1』
『4/4拍子1小節を8分音譜全ての手拍子によって発音する』というアイスブレイクを実施した。
2、『アイスブレイクver2』
手拍子の条件はver1に引き続き、一人一人フレーズを決め1人2人3人構成の3グループに分け、音の重なり、人数による音量変化を体感して頂くことが目的のアイスブレイクを行った。
3、『アイスブレイクver3』
アイスブレイクver2の条件を一部変更し、強弱をつけることによる表現に加え、音を出さない(8分休符)を取り入れ、8分音符全てを発音するという条件を外したアイスブレイクを行った。
グループ分けについては人員の組み替えは行ったがグループごとの構成人数に変更は無し。
休符を作ること、フレーズとしての表現に音価の意識を加えて感じてもらうことを目的とした。
4、『2グループに分かれて邦楽器、打楽器を用いて即興演奏、及び発表』
参加メンバーを2グループに分け、強弱、音価を表現した図形楽譜の用紙を配布。メンバーで話し合い譜面を完成させてもらい、その譜面に基づいた演奏をチャンチキという楽器を用いて発表した。
アイスブレイクでの強弱、音価の表現を音楽に活用することが目的とした。
■ワークショップを振り返って
本日は初めての体験で思った様にいかない場面や楽器の違いによる制限等、なかなか苦しいながらに、なんとか無理矢理まとめさせて頂きました。ワークショップの構成のコツなど個人的に発見もあり、未完成なりに充実した機械となり、とても楽しかったです。
私はRock&Popsコースでベースを専攻としていて、電気を必要とする楽器によって作り出される商業音楽のほぼ全てはデジタル録音をされた物です。その商業音楽を録音する過程では、Digital Audio Workstation通称DAW(ダウ)と呼ばれるソフトウェア上で録音したオーディオデータを編集します。編集とは?というと、楽曲を作成するにあたり、参加している各楽器の音は別々のデータとして録音されDAW上では波形として表示され、その波形を楽器ごと僅かに時間軸をずらす事によって、例としてはズレてしまった全体の音の出だしをそろえる事などができます。
実際そのような編集をすることは少ないのですが、この表示されている波形を見て私はたったの1/100秒音を出す瞬間、音を切る瞬間を間違えるだけで、聞こえてくるフレーズの印象はがらっと変わってしまうことに気づきました。
音の強弱も然り、歌がしっとりと歌い上げているバックで歌のフレーズを邪魔するような音量で音を出して良いでしょうか?もちろん良いこともあるでしょう。しかし、そういう一音一音に対する気遣いこそが音楽の表現力を上げると言うことを理解して頂くことが、このワークショップの狙いでした。
「スタカートは書かれている音符の半分の長さで」と小学校では(私自身が小学生の頃は)説明されましたが、四分音符にスタカートの場合、なぜ八分音符で書かないのか?などといった素朴な疑問からはじまり、音源と自分の演奏を聴き比べ、どうして同じ譜面なのに違って聞こえるのかを考えたり、音そのものに対する意識をより繊細にするきっかけととなればと思っています。
※1 ベロシティとは
―――Velocity 英【名詞】a velocity 速さ 速力
音楽用語では、電子楽器の演奏情報のやり取りに使用される(※2)MIDI規格において、音の強弱を表す数値。0~127の128段階を有している。
※2 MIDIとは
―――MIDI 英 Musical Instrument Digital Interface の略称。
YouTube: 音の強弱、長さ、タイミングの変化による音楽表現
【担当教員からのコメント】
学生自身が普段研究活動の中で感じている問題意識から出たテーマでユニークな視点でのワークショップだったと思いました。特にワークショップの最後に持参したノートパソコンによる打ち込み音源デモを使った説明はとても興味深かったです。『音のタッチやフォルム』と『それらによって形成されるフレーズの表現、表情』との関係をパソコン画面と音の組合せでとてもわかりやすく解説してくれました。音楽の表現に関わる根本的で高度な内容に踏み込んだ試みであると評価できます。
しかし、残念ながらこれらの伝えたい内容と実施したアイスブレイクから創作発表までの流れが、あまりかみ合っていませんでした。打ち込み音源の音の加工の仕方で機械的な音楽の表情から徐々にニュアンスが付き、人の演奏の感じに近づく過程を示しながら、それに沿ったアイスブレクプログラムを考える必要があります。
三味線、箏、琵琶など邦楽器には撥弦楽器が多く、例えば箏合奏のアンサンブルの場合、音のタッチ(爪の角度、弾く強さ、力の入れ方抜き方、爪を当てる絃の位置などによる音の立ち上げ方)を意識して揃えることは箏奏者が苦労することろであり、重要な研究課題のひとつです。箏や三味線を専門としない人達にも、そのような極めて繊細な問題意識を知ってもらい体験できるようにするために、容易に発音が可能で、かつ適当な響きの持続時間が確保出来る楽器として当鉦を選びました。
プログラムの見直しを行えば、意義ある内容のワークショップになると思われます。 担当:山口賢治
10月9日は箏講師、吉原による「箏で教会旋法にチャレンジ」でした。
箏の様々な奏法を学び、その後、教会旋法(今回はロ音上のエオリア音階)に調弦された箏を使って音楽づくりをし、新たな箏の世界を広げて、箏の活用の多様さを感じてもらいました。
今年は箏専攻の学生が1人もいないので、たくさん箏に触れてもらい、少しでも箏を身近に感じてもらえるようにという目的のもと授業をすすめました。思いのほか、学生たちはしっかりしたタッチでとても上手に箏を弾き、即興も自由にしてくれて、作品もすてきなものができました。今回のワークショップを参考にして、今後の学生自身によるワークショップでも箏を上手に活用していってもらいたいと思います。
内容は以下です。
ワークショップ名「教会旋法にチャレンジ」
日時 2013年10月9日
ワークショップリーダー:吉原佐知子
対称:洗足学園音楽大学、学生9名
使用楽器:箏8面、17絃1面
調弦 B,C♯、D,E,F♯,G,A,B,C♯,D,E,F♯,G
目的:箏の奏法を知り、箏を身近なものに感じる
箏の新しい奏法を考える
音楽づくりの手法をみんなで考える。
教会旋法に親しむ。
教会旋法に調弦された箏で音楽づくりをし、箏による音楽づくりの可能性を広げる
授業内容
1、吉原による教会旋法(ロ音上のエオリア音階)で作曲された、箏ソロ「オンディーヌの眼覚め」(玉木宏樹作曲)の演奏を聴く。
2、CDで同じくロ音上のエオリア音階で作曲された、ロドリーゴ作曲「アランフェス協奏曲第2楽章」を聴く
3、1,2と同じ旋法に調弦された箏を使って、、箏の基本奏法、特殊奏法をそれぞれまねっこしたり、パターンをつくって練習。
4、これまでやってきた、音楽づくりの構造(追いかけ、呼応、拡大縮小など)や音楽づくりで工夫すること(速さ、リズム、G,Pなど)をホワイトボードに書き出してみる。
5、4を踏まえて箏で「オンディーヌの眼覚め」の冒頭を拡大縮小したパターン上で自由に即興したり、対話したりしてみる。
6、2つのグループに分かれて、独自のパターンを考えて2場面つくり、終わり方をかんがえる、という約束のもと、音楽づくり。
7、発表
一つのグループには低音楽器の17絃も加えてつくりました。
YouTube: 2013.10.9教会旋法にチャレンジ 邦楽ワークショップ
YouTube: 2013.10.9教会旋法にチャレンジ 邦楽ワークショップ
2つの作品は、どちらも全体ワークショップでやった技や音楽づくりの手法を駆使して素敵な音楽ができ、まるでヨーロッパの教会にいるような気分になりました。
学生たちも「箏ではないような不思議なかんじでした。」「きれいだった」「楽しかった」「箏で教会旋法なんて思ってもいなかった」とカルチャーショック?に近いものを感じてくれたようです。
これを機会に、今後もどんどん箏のワークショップを実践していってほしいと思います。
以上、授業担当 吉原佐知子 記
2013年9月25日の授業の模様をご報告いたします。
今回はフルートコース2年のSさんによる、楽器と奏法に着目した授業でした。
Sさんは授業の組み立てにだいぶ悩み、なかなか授業案がまとまらずに前日まで変更を繰り返しましたが、邦楽器で季節の音楽を作りたいという核があったので、それに沿って沢山アドバイスをし、授業案をまとめることができました。授業中は短い準備期間の中でよく自分で消化して授業をこなしていました。学生さんたちも自分で調弦を考えるという今までなかった試みに楽しそうに楽器に触っていました。残念だったのは、せっかくよく進行しているのに声が小さくて聴き取りづらかったことです。大きい声で話すのは授業をする上でとても大事なことなので、最後に学生さんたちに伝えました。
以下、Sさんによる報告書です。
授業担当:中香里 記
タイトル『邦楽器を使って季節の音楽を作ろう』
対象:大学生
目的:箏、三味線を使って音楽作りの楽しさや季節感を感じてもらう。
使用楽器:三味線、箏
①アイスブレイク 10分
・声と手を出しながら右→チョップ、左→チャップ、返し→ワオ、指名→チップと回していくゲーム
・テンポをだんだん早くして行った。
②楽器準備 10分
・箏か三味線どちらかやりたいもの選んでもらう。(箏→3人、三味線→6人で実施。調弦はまだしない。)
・今の季節の秋、これからの季節の冬グループに分ける。
③秋のイメージ、冬のイメージをみんなで話し合い(音階、音、音の強弱なども含めて) 15分
・実施の際出たもの
秋→落ち葉、お月見、だんご、焼き芋、栗、鈴虫、餅つきの音、不安定な感じ
冬→雪、お正月、みかん、お鍋、クリスマス、羽子板、二上り
・これらのイメージをもとに各自で調弦を考えてもらい、発表
④上記のイメージを表現するにはどんな奏法、音ができるか独自の調弦を使って開発 10分
・個人で考えて発表。
⑤独自の奏法でパターン、ソロまわし 5分
⑥実在する秋、冬を表現する奏法 5分
担当:中先生
虫の音、コスリ、スリ、アテハジキ、当てヅメ、グリッサンド、ハーモニクス、ピチカートなど
⑦グループ実習 15分
・2グループ円になってもらい、先程考えたイメージ、奏法、調弦を使って秋、冬それぞれの音楽を作ってもらう。
約束
1、箏、三味線の既存の奏法か独自のおもしろい奏法を取り入れる。
2、始まり方と終わり方を決める
⑧発表 10分
グループ秋
グループ冬
秋→虫の声(鈴虫)から始まりお月見をイメージ、途中餅つきの音があり最後は虫の声で終了。
冬→箏の羽子板のやりとりから始まり三味線同士対話をしていた。箏の羽子板から三味線の羽子板に変わり終了。
⑨まとめ 5分
計90分
授業を受けた学生からの感想
・題材が今までやったことがないもので楽しめた。
・調弦を自分で考えてから音楽作りをすることがおもしろかった。
注意点
ホワイトボードに書いているときなど声が聞こえづらかった。
声をもっと大きく。
授業をやってみての感想
音楽作りの授業を1からやるのは初めてで緊張していました。
でも先生のサポートもあり、やりたい授業を実施できてよかったです。
また、授業中も受講している子たちが積極的に参加してくれたのでスムーズに手順をクリアできました。
今回の注意点も含め今後の大学生活や仕事をしてからも役立てたいです。
9月18日に行われた授業の模様をご報告いたします。
今回は音楽音響デザインコース4年のOくんとピアノコース4年のTさんによる、リズムに着目した授業でした。
2人は普段の授業から積極的にリーダーシップをとってくれたり、率先して音楽を創造したりと才能あふれる学生さんたちです。先生役となった今回の授業でも、持ち前の明るさと息の合ったコンビプレーでとてもいい授業になりました。それは事前にしっかり準備・打ち合わせを行ったことと、何が起こってもめげずに前向きに学生さんたちを引っ張っていったからだと思います。そのリーダーの素質を大切に、これからも授業をがんばっていってもらいたいです。
以下、OくんとTさんによる報告書です。
授業担当:中香里 記
タイトル『リズム遊びで音楽に馴れよう』
対象:大学生
目的:邦楽器を使い、リズムを通して音楽に馴染む
使用楽器:箏、打楽器
授業内容
①アイスブレイク(10分)
・円になってもらい、4拍リズムを提示、それを模倣する、を数回
・各生徒と一対一でコール&レスポンス(全員やる)×2 、ボディパーカッションを含める
・円上の隣の人と無拍でのコール&レスポンス×2 、ボディパーカッションを含める
②楽器準備(10分)
・箏の調弦はD,F,G,A,C(音を一つに絞ってリズム遊びをするコンセプトだったので、同時に全ての音が鳴っても不協和にならない音列を使用した。)
・打楽器か箏かを選んでもらい、二種類を混ぜる様にグループ分けが出来る人数配分にする (箏4人とその他打楽器に分けた )
③楽器を使用してのリズム遊び(20分)
・箏担当の人には任意の音を一つ選んでもらう。
・担当の楽器の音からイメージするものを発表(難しすぎた)
・イメージを生かしつつ上記のアイスブレイクと同じ順でリズム遊び(打楽器でのパターンにのせながら)
・4小節毎のアドリブ回し
・楽器を使う事によって起こったイメージの変化、リズムの変化の感想を聞く。
④グループ実習(15分)
・打楽器と箏が混ざるようにグループ分け
約束事
1、各班ごとにテーマを決める
2、有拍と無拍の部分を作る
3、曲の始まりと終わりを決める
⑤発表(15分)
グループ1
グループ2
一つ目のグループは「台風からの秋到来」がテーマ、二つ目のグループは 「病院」をテーマに演奏した。どちらのグループも特殊奏法などを駆使してうまく演奏出来ていた。
⑥まとめ(5分)
授業の感想
・応用の効く台本を作成でき、大きな問題もなく進行出来てよかった
・参加者の人たちの反応が少し薄くて不安になったが、話し合いの段階では積極的に参加してくれたのでよかった
・時間が足りないかと思っていたが実際には想定よりも大幅に早く終わってしまった。時間配分の感覚が難しいと感じた
・総合的によくできたと思う。
9月11日は学生によるワークショップの第1回目でした。
担当は現代邦楽コース3年のKさんによる、「謡曲にチャレンジ」のワークショップでした。
ただ謡曲を伝授するだけでなく、それをもとに音楽づくりをしてほしかったのですが、どうやって謡曲をもとに音楽づくりをすればいいのか、リーダー自信が理解していないうちにワークショップをはじまてしまった上に、準備期間が1週間しかなかったためにワークショップ全体がいきあたりばったりでたくさんサポートをしました。
結果、学生は独自の歌詞を作って唄った後、その歌詞をもとに音楽づくりをしてくれ、なんとか日本の唄による声のワークショップができました。
Kさんは三味線専攻なので、次回は是非三味線でもワークショップをしていただきたいです。
その時は堂々としたワークショップぶりをみせてくれることでしょう。
学生によるワークショップ1回目、お疲れ様でした。
以下はKさんによる授業報告と感想です。
授業担当 吉原佐知子 記
「謡曲にチャレンジ!!」
:ワークショップリーダー
現代邦楽コース-三味線専攻
☆実施日
2013/9/11
☆対象
大学生9名
用意するもの
・自身の声
題材にしたもの。
・羽衣のキリの謡(最後の場面)
☆授業目的
「邦楽の発声にふれたり、自分たちでオリジナルの謡曲を作って謡曲を体験してもらう」
授業の流れ
❶アイスブレイクとして、邦楽の発声を理解してもらうための声出し。(※円になって)【20分:予定】
⒈一声に「ダァ!ダァ!」とお腹から声を出して発声する(ダァという音形がお腹にちからを入れやすい)
⒉今度は一人づつ一声入魂に「ダァ!」発声をする。
⒊羽衣を節ごとに真似して歌ってもらう。
能には中音や上音といった独自の音程概念がある。対象の生徒はクラシックの学生ばかりだったが、みんながんばって真似っこしていた。
❷グループに分かれて「七五七五」の文を作る。
その歌詞を謡曲風に歌詞を発表する。
作品:1グループ目
「みたらしだんご
草だんご
三色だんごに
ごまだんご」
2グループ目
「新校舎
ライトアップで
照らし出す
学費の結晶」
・ここで先ほどのアイスブレイクで体験した羽衣の謡をヒントに、謡曲の音階を付け↑の句を発表してもらった。
・羽衣の謡本のウキや下げの表示を初心者にも関わらず要点をつかんで使いこなしていた(実際、音程の高低を七五七五の文に書き込んでいた模様)
❸さらにアレンジ
先ほど作って発表した謡曲に、さらにアレンジを加える。
目安としては、謡いの型にとらわれないで、自由な発想で作るようにと指示を出した。
❹発表
ユニークなアレンジを発表してくれた。
1グループ目は謡いの下で更にベースとして単語を唱え続けたりとパターンミュージックの導入が見られた
2グループ目は、最後の句を輪唱させた。
❺能の説明
題材に使った、羽衣のキリの仕舞いを鑑賞、能の背景や種類を少しだけ説明。
反省点
・(謡曲独自の)音の幅を短時間で覚えてもらおうと資料の種類を余分に用意したが、それが逆に混乱を招いた。
・能の資料を見せたり、説明を沢山したかったが、時間も合わずそれができなかった。
・そして、それができなかったために、生徒が謡曲をイメージできていない状態で音楽づくりをしてしまった。
・決めておいた授業の流れを変えてしまったり、時間内に授業を展開する事ができなかった。
感想
「学費の結晶」という単語一つだが、音楽(謡曲の謡い)をつけることによってより言葉内容の表現を深くできたと思う。謡曲のあり方を私も自身がまた再び見直す事ができた。
謡曲は音楽というより舞台芸術の庭の芸能であり、音楽的要素を抽出して行う邦楽ワークショップには題材として相応しくないのではと悩みつつ授業案を立てた。だが逆に音楽づくりを最大に活かせ、なおかつ謡曲ならではの「言葉を取り入れた音楽づくり」をする事ができてよかった。
最後に。みんな元気に純粋に取り組んでくれて嬉しかった。声出しも楽しんでいた生徒もいて、ワークショップリーダーとても楽むことができ、やりがいがあった。
後期は学生によるワークショップが主体となるため、後期第1回目のワークショップは、ワークショップ案のアイディアが広がるよう、2012年度のワークショップ内容を一覧にしたものを手だてとして、ワークショップの組み立て方やリーダーとしての進め方,注意点などをアドバイスしました。
以下は2012年度の年間授業内容です。
2012.xlsxをダウンロード
<表>2012年度、邦楽ワークショップ年間授業内容
この表を見て、それぞれのワークショップについて説明していき、その後、実践例として手拍子でコール&レスポンスを主体とした音楽ゲームをした後、最後に2人で1面の箏を使って、全音音階で新しい奏法を使いながら、コール&レスポンスの構造を取り入れた音楽づくりをしました。
20130904をダウンロード
<写真1>アイスブレイクの様子
PICT0005.JPGをダウンロード
<写真2>箏の全体ワークショップの様子
来週からは学生によるワークショップです。
たくさんの新しいアイディアの出現を期待します。
授業担当:吉原佐知子 記
◆テーマ
パターンミュージックの応用 〜各奏者の周期や時間進行の異なる音楽づくり〜
◆実施日:7月17日
◆担当:山口賢治
◆ねらい
音楽創作の基本的手法であるパターンミュージックの手法を発展させて、周期の異なる音楽、音楽的時間軸が複数存在する音楽創作を実践し、その応用を試みた。このワークショップを通じて、音楽的時間の概念を広げ、新たな音空間を創造する参考事例を提供するこを目的とした。
◆実施スケジュール
7月3日の味府先生担当の授業の中の一部を復習した。
スティーブライヒ「クラッピングミュージック」構造モデル図
Aパート…12345678 │ 12345678 │ 12345・・・
Bパート…23456781 │ 23456781 │ 23456・・・
Cパート…34567812 │ 34567812 │ 34567・・・
Dパート…45678123 │ 45678123 │ 45678・・・
スタート地点をずらして一定のパターンを演奏する構造の説明をした。
次に周期の異なるパターンの同時演奏を試みた。
試行1: 3拍子、4拍子、5拍子でそれぞれ拍子の頭を手拍子で叩いた。
試行2:言葉(花の名前)を当てはめ、下記の通り、4小節単位で f→pでディミヌエンドして繰り返しのパターンを演奏した。(○は休符)
Aグループ 3拍子の繰返しパターン
│キ ク ○│ キ ク ○│ キ ク ○│○ ○ ○│
Bグループ 4拍子の繰返しパターン
│サ ク ラ ○│ サ ク ラ ○│ サ ク ラ ○│○ ○ ○ ○│
Cグループ 5拍子の繰返しパターン
│ヒ マ ワ リ ○│ ヒ マ ワ リ ○│ ヒ マ ワ リ ○│○ ○ ○ ○ ○│
異なる周期の組合せにより自動的に生じる音楽のずれの効果を体験してもらった。
打楽器を使用しての2拍子、3拍子の同時演奏。
作品例として、 松尾祐孝「新譜音悦多」素適譜Ⅲ(現代邦楽研究所委嘱作品 邦楽器合奏)を鑑賞した。 各パートの周期がそれぞれ複雑に異なり、音の編み目模様を紡ぎだしているが、基本的な構造は上記と同じ。
続いて独立した時間軸を持つ音楽づくりに挑戦した。
同じ音形を演奏速度を変えて同時演奏した作品としてスティーブライヒ 「ピアノ・フェイズ」を紹介した。音楽の時間軸を共有していない典型的な作品例である。
分かりやすいモデルを示すために2台のメトロノームを用意し、メトロノーム1の速度♩=100、メトロノーム2の速度♩=104で同時に鳴らし、その原理と効果を理解してもらった。
YouTube: メトロノーム(♩=100&♩=104)同時
これらの事例を元にふたつのグループに分かれて創作、発表を行った。
Aグループは同じスマホのメトロノームアプリを使い、♩=80と♩=90で各人が入力したリズムの刻みを同時に鳴らした。
また、Bグループはスマホのメトロノームアプリと電気メトロノームを組合せ、各人がそれぞれに異なるテンポやクリック音の音色を設定した上で、リーダーの指示で各自がON,OFF操作を行い、音響の変化と立体感をつくる工夫があった。
Bグループは結果的に一柳慧の1960年の作品「電気メトロノームのための音楽」のような音楽になり非常に興味が持てた。この作品の初演当時、電気メトロノームは登場したばかりで、高価な先端機器として、テクノロジーの象徴として受けとめられていたと思われる。しかし、今はスマホの数あるアプリの中のひとつにすぎず、気軽に誰でも使うことができることを考えると、この作品の持つ意味が初演時と今では変わってしまっており、時代の変化を感じさせれた。
◆まとめ
我々はアンサンブル合奏の際、音楽的時間進行は共有することを前提としている。しかし、今回は個々に独立した時間軸にそって音楽を演奏することを試みた。世界を見渡せば、我々が普段接している音楽について常識として認識ししている音楽的時間の概念と異なる世界も存在する。以前、現代邦楽研究所の授業で講義して元国立劇場演出室長の木戸敏郎 先生から次の言葉を聞いた記憶がある。
『100名の奏者の一斉に1小節演奏することと、1名の奏者が100小節演奏することを等価と認識する文化がある。』『音楽時間の概念には”計測時間”と”計量時間”があり、両者の時間概念は異なる。」
様々な文化圏の音楽を聴く時に、音楽的時間の概念にも意識や興味を向けて欲しいとの思いから、その切っ掛けとして、音楽的時間の概念を揺さぶるためのワークショッププログラムを実施した。これを契機に日本の伝統音楽における”間”などの音楽的時間の意識や概念について改めて考えることを期待している。
今回は授業内容から考えて、かなりの戸惑いが学生から出てくると予想していた。しかし実際には柔軟に課題に対して取り組んでもらえ、学生の対応力の高さを実感した。