2013年6月

2013年6月25日 (火)

6月19日は洗足学園音楽大学教員で作曲家の佐藤昌弘先生をお招きしてジャズのワークショップをして頂きました。

内容は以下です。

授業報告:吉原佐知子 記

〈ジャズにチャレンジ~佐藤昌弘先生をお迎えして~〉

実施日: 平成25年6月19日

実施目的:

・ジャズの音階を知り、音階やリズムに親しむ。

・箏でジャズのベースやアドリブにチャレンジ

ワークショップリーダー:佐藤昌弘先生(作曲家、本学教授、日本現代音楽協会事務局長)

ワークショップサポーター:吉原佐知子(箏)、細山隆(尺八)

監修:坪能由紀子(音楽教育)

参加学生:6名

使用楽器:箏6面、17弦4面

調弦: 箏は二種類 

Cドリアン 一から C,D,E♭,F,G,R,B♭~(ベースはC,G,B♭,D)  

Dドリアン 一から C,D,E,F,G.A.B~(ベースはD,A,C,E)

17弦 は一から C,D,E,F,G,A,B♭~

内容

1.本日使う、ジャズの音階を説明(今回はCドリアンとDドリアンを交互に演奏)。

2.学生はベースの17弦とアドリブの箏に別れて奏法練習。

3、3拍子の17弦のベースの上で箏のアドリブをする。Cドリアン→Dドリアン→Cドリアンと、それぞれ一人4小節ずつアドリブ回し。




YouTube: jazz 邦楽ワークショップ、練習

4、吉原一人が17弦のベースを担当し、学生は箏に移動してアドリブをする。全員で3拍子のジャズにチャレンジ!




YouTube: 邦楽ワークショップ  jazz 三拍子

5、4拍子にして全員で通して演奏。最後は佐藤先生の素敵なアドリブで終わり!

6、感想、講評

以上です。

〈授業後の感想〉

専門の先生をお招きして、箏でジャズの音楽づくりワークショップをするなんて、もしかして世界初かも知れない、貴重な授業でした。

参加人数は気候のせいか、いつもより少なくて残念でしたが、みんな思い思いに箏をかき鳴らし、ジャズの世界に引き込まれていきました。触っているうちにどんどんアドリブが出来ていくのが良くわかりました。やはり何事も経験。やってみることが第一だと思いました。

学生も「最初はジャズは初めてでとまどったが最後は楽しかった」という意見が多かったです。

ジャズのアドリブのコツは間をいれるとか、ベースが命!とか、実際体験して良くわかりました。

また来年度も是非ジャズのワークショップをして頂きたいとい、今度はブルースで!という声もありました。

佐藤先生の優しく丁寧でソフトな授業、素敵でした。

ありがとうございました。また是非お願いしたいです。

吉原佐知子 記

2013年6月20日 (木)

■実施日:5月29日   ■担当:山口賢治 ■ゲスト: 山本和智(作曲家)

■テーマ:山本和智 作曲「Doldrums Ⅲb ~尺八と聴衆のための協奏曲~」を題材に

■概要

AIC/Mostly Modern国際作曲コンクール第一位、JFC作曲賞受賞、 武満徹作曲賞第2位等、数々の作曲コンクールで受賞経歴を持ち、邦楽器の作品も斬新なコンセプトで多く手がける気鋭の作曲家 山本和智 氏を招きワークショップを行った。

山本和智ブログ

山本和智 作品動画

6月19日(水)舞台初演に先立ち 山本 氏の作品「Doldrums Ⅲb ~尺八と聴衆のための協奏曲~」の試演も兼ねたワークショッププログラムを実施した。

■狙い

 ① 演奏家と作曲者が組み共同でワークショップを行う。

 ② ワークショップを通じた演奏試行により、新しい作品が産み出される過程を

   体験し、また作曲に対する作曲家の考えを知る機会を提供する。

■実施スケジュール

1、 山本和智 氏と氏の作品の紹介。

2、 紙を使っていろいろな音 (擦る、振る、叩く、丸める、破る 等)

   を出す音探し。

3、 紙や息音を使って、音を重ね合わせ音響づくり。「風」、「雨」、「雨風」

4、グループに分かれて創作発表1

  ルール:「風」、「雨」、「雨風」をメンバーの共通認識に置いて、

        音楽づくりを行う。

5、グループに分かれて創作発表2

  創作1に尺八・リコーダー上部管、ペットボトル等を加える。

  音色のヴァリエーションを拡げる。

6、聴衆参加型の作品例の紹介

  坪能克弘 作曲

  「”みんなのコンチェルト”~チェロとオーケストラと市民参加による~」

7、「Doldrums Ⅲb」の試演。

授業ダイジェスト動画


YouTube: 邦楽ワークショップ 作曲家 山本和智 氏を招いて

■ワークショップを振り返って

作曲家として様々な指摘や発言が加わることにより、音楽づくりに対する取り組みに新たな視点を得ることができたことは大きかった。また、作曲家にとっても新しい発見や次に繋がるヒントや材料が得られたようであった。集団での音づくりの場面において様々な音色を組み合わせによって音に立体感を出す等、学生達の課題対応力や表現力、音楽的センスについて非常に高い能力を有していると山本 氏より評価された。「Doldrums Ⅲb」はワークショップの題材としても活用できることを前提に作られた作品なので、初演後も様々な場所でコンサートやワークショップでの活用が期待出来る。今年度初の外部ゲストを招いての授業だったが、学生からは好評だった。授業終了後も作品の仕掛けなどについて何人かの学生が山本 氏に質問があり、刺激的な授業にすることができた。

初演の動画


YouTube: DoldrumsⅢb ~尺八と聴衆のための協奏曲~山本和智 作曲

演奏指示書は下記からダウンロードできます。

ensou_shijisyo.pdfをダウンロード

2013年6月19日 (水)

■実施日:6月12日
■担当:山口賢治
■実施概要:「邦楽器を用いた音楽づくりワークショップの歴史」
邦楽ワークショップの授業は今年度で9年目を迎える。音楽づくりの手法に基づくワークショップ活動の黎明期の説明から、その活動が邦楽器にも及んだにも経緯および現在まで至る歴史を過去の映像資料を見ながら講義を行った。
・1960年代終わり、カナダの作曲家マリー・シェーファー 
                      サウンドスケープ(soundscape)
・1970年 著書「音楽の語るもの」 ジョンペインター(John Paynter) 
                      イギリス 音楽学教育学者 作曲家
・1980年   西武美術館主催で音楽教育をテーマとした企画を実施
       星野圭朗(当時:東京学芸大学附属附属竹早小学校)
       児童による自作自演の打楽器アンサンブル曲を披露
・1989年 第6次学習指導要領(小・中・高校)で
       創造的音楽学習が導入される。
・1991年 日本現代音楽協会 主催「童楽」開催
・1994年 日本現代音楽協会 主催「童楽2」開催
・1995年 現代邦楽研究所開講。
           邦楽器による創造的音楽学習の研究や活動が始まる。
・1997年 越谷コミュニティーセンター 主催 
       ロンドン・シンフォニエッタとともに
      ワークショップ参加者とロンドン・シンフォニエッタによるコンサート
・1998年 越谷コミュニティーセンター 主催  青少年少女芸術祭 
・2001年 ISCM世界音楽の日々2001横浜大会 
                 こどもみらい2001 「ワガッキ バクハツ」
・2002年 江戸開府400東京 子どものための伝統文化ワークショップ見本市 
・2005年 日本現代音楽協会 主催
       尺八を中心とした音楽づくりと演奏のワークショップ・コンサート
参考資料
島崎篤子「日本の音楽教育における創造的音楽学習の導入とその展開」(論文)
ジョンペインター「音楽の語るもの」 (音楽之友社)
現代邦楽研究所修了コンサート/こどもみらい2001 コンサートプログラム 他
■今後の課題
今回は、邦楽ワークショップの現在までの流れを振り返った。次の課題として、ワークショップ活動やその実績が将来に向けて、教育環境や社会状況の変化の中でどうように活用され、音楽家(自分達)にとってどのような意味付けがあるのかについて考える必要があると思われる。今後機会があれば「邦楽ワークショップの未来」をテーマに学生同士のディスカッションや研究授業を行いたい。
【現代邦楽研究所第1回修了コンサートプログラム】
13061201

 

実施日:6月5日

担当:味府美香

実施概要:『音あそびするものよっといで』のアイディアを使って

 『Sound Fun』は、イギリスの作曲家トレヴァー・ウィシャートの19751977年の著書です。日本では坪能由紀子・若尾裕によって1987年に翻訳『音あそびするものよっといで(1)(2)』として出版され(2012年に再出版されました),学校現場や音楽づくりのワークショップなどで取り入れられてきました。今回は,『音あそびするものよっといで』のアイディアの中から「手拍子まわし」「穴うめゲーム」「くっつけっこ」をお箏(平調子)を使って挑戦してみました。お箏でやってみたことで新たなアイディアが生まれたり,お箏でやるからこその面白い音や音楽も出てきました。

 

1.「手拍子まわし」

 「手拍子まわし」は一人が1つの手拍子を順番にまわしていく音楽ゲームです。手拍子では,音をまわすスピードや,音の大きさ,音色,音をまわす方向,音を2つにするなど工夫して楽しむことができます。これをお箏でやってみました。

①一人1音をまわす→13弦の中から学生はなるべく人とかぶらない音を選んでいきました。しかし,13弦も使える音があるのに一人1音ではつまらない…ということで,音の数を増やし,自分の持ち音の間と自分の前の人と自分の間も工夫することにしました。音を複数にしたことで,単音だけでなく和音を使う学生も出てきて,一人ひとりの音が連なると素敵なメロディーになっていきました。

②音色の工夫(特集奏法)も入れ,さらにドローンを入れることにしました(ドローンは味府が担当)。

③一番音数の多いグリッサンドを順番にまわしてみました。ウェーブのように音が連なって,下から上へ,上から下へ,長いグリッサンド,短いグリッサンドなど色々な組み合わせを楽しむことができました。

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2.「穴うめゲーム」

 「穴うめゲーム」は,リーダーのリズムの休みの拍に手拍子を入れる活動です。お箏を使うと音高が出てくるので,リーダー(味府)と学生で即興的に一つのメロディーができます。最初は,リーダーの休みの拍に音を1音だけ入れていた学生も徐々に1拍を複数の音やリズムを工夫して埋めるようになって,どんどん複雑な面白いメロディーができていきました。

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3.「くっつけっこ」 

「穴うめゲーム」の発展として取り入れました。「穴うめ」では,1拍をそれぞれが工夫しましたが,「くっつけっこ」は,リーダーの前半のメロディーをうけてその続きを即興でつくってくっつける活動です。活動の節々に『さくら』のメロディーの断片が何度か出てきていたので,リーダー(味府)は「さくらさくら」を前半のメロディーとして,学生はその後にメロディーを足していきます。リーダーのメロディーと学生のメロディーがくっついて一つのメロディーになっていきますが,学生一人ひとりのメロディーが充実してくると,「さくらさくら」(のメロディー)を挟んだ一種のロンド形式のように展開してきました。

 

今回,取り組んでみたこれら3つの音楽ゲームを箏でやってみて,音高のある楽器での即興の可能性と即興的な音楽の広がりの二つがあったことに気づきました。それは,お箏が音高のある楽器でありながら,旋律を即興的につくる際に間違いが起こりにくいということ,使用できる13音に加え押し手や弾き色による半音,さらには特殊奏法を加えることができるために音楽的広がりをつくることです。そして,即興的な音楽をつくることができたのにはトレヴァーの音楽ゲームのルール(=音楽のつくり方)が大きなよりどころとなっていました。今後は,こうした音楽のルールをもっと学生と共有したり自分たちで見つけ出したりしながら,箏や他の邦楽器での即興的な音楽活動を展開していきたいと思います。