2013年7月

2013年7月18日 (木)

◆テーマ
パターンミュージックの応用 〜各奏者の周期や時間進行の異なる音楽づくり〜
◆実施日:7月17日
◆担当:山口賢治
◆ねらい
音楽創作の基本的手法であるパターンミュージックの手法を発展させて、周期の異なる音楽、音楽的時間軸が複数存在する音楽創作を実践し、その応用を試みた。このワークショップを通じて、音楽的時間の概念を広げ、新たな音空間を創造する参考事例を提供するこを目的とした。

◆実施スケジュール
7月3日の味府先生担当の授業の中の一部を復習した。
スティーブライヒ「クラッピングミュージック」構造モデル図
 Aパート…12345678 │ 12345678 │ 12345・・・
 Bパート…23456781 │ 23456781 │ 23456・・・
 Cパート…34567812 │ 34567812 │ 34567・・・
 Dパート…45678123 │ 45678123 │ 45678・・・
スタート地点をずらして一定のパターンを演奏する構造の説明をした。

次に周期の異なるパターンの同時演奏を試みた。
試行1: 3拍子、4拍子、5拍子でそれぞれ拍子の頭を手拍子で叩いた。





YouTube: 2,3,5 拍子同時リズム演奏

試行2:言葉(花の名前)を当てはめ、下記の通り、4小節単位で f→pでディミヌエンドして繰り返しのパターンを演奏した。(○は休符)
 Aグループ 3拍子の繰返しパターン 
  │キ ク ○│ キ ク ○│ キ ク ○│○ ○ ○│
 Bグループ 4拍子の繰返しパターン 
  │サ ク ラ ○│ サ ク ラ ○│ サ ク ラ ○│○ ○ ○ ○│
 Cグループ 5拍子の繰返しパターン 
  │ヒ マ ワ リ ○│ ヒ マ ワ リ ○│ ヒ マ ワ リ ○│○ ○ ○ ○ ○│
異なる周期の組合せにより自動的に生じる音楽のずれの効果を体験してもらった。





YouTube: 2,3,4拍子 花の名前で同時演奏

打楽器を使用しての2拍子、3拍子の同時演奏。





YouTube: 2,3拍子同時演奏 打楽器試作

作品例として、 松尾祐孝「新譜音悦多」素適譜Ⅲ(現代邦楽研究所委嘱作品 邦楽器合奏)を鑑賞した。 各パートの周期がそれぞれ複雑に異なり、音の編み目模様を紡ぎだしているが、基本的な構造は上記と同じ。

続いて独立した時間軸を持つ音楽づくりに挑戦した。
同じ音形を演奏速度を変えて同時演奏した作品としてスティーブライヒ 「ピアノ・フェイズ」を紹介した。音楽の時間軸を共有していない典型的な作品例である。
分かりやすいモデルを示すために2台のメトロノームを用意し、メトロノーム1の速度♩=100、メトロノーム2の速度♩=104で同時に鳴らし、その原理と効果を理解してもらった。





YouTube: メトロノーム(♩=100&♩=104)同時


これらの事例を元にふたつのグループに分かれて創作、発表を行った。
Aグループは同じスマホのメトロノームアプリを使い、♩=80と♩=90で各人が入力したリズムの刻みを同時に鳴らした。
また、Bグループはスマホのメトロノームアプリと電気メトロノームを組合せ、各人がそれぞれに異なるテンポやクリック音の音色を設定した上で、リーダーの指示で各自がON,OFF操作を行い、音響の変化と立体感をつくる工夫があった。

Bグループは結果的に一柳慧の1960年の作品「電気メトロノームのための音楽」のような音楽になり非常に興味が持てた。この作品の初演当時、電気メトロノームは登場したばかりで、高価な先端機器として、テクノロジーの象徴として受けとめられていたと思われる。しかし、今はスマホの数あるアプリの中のひとつにすぎず、気軽に誰でも使うことができることを考えると、この作品の持つ意味が初演時と今では変わってしまっており、時代の変化を感じさせれた。

◆まとめ
我々はアンサンブル合奏の際、音楽的時間進行は共有することを前提としている。しかし、今回は個々に独立した時間軸にそって音楽を演奏することを試みた。世界を見渡せば、我々が普段接している音楽について常識として認識ししている音楽的時間の概念と異なる世界も存在する。以前、現代邦楽研究所の授業で講義して元国立劇場演出室長の木戸敏郎 先生から次の言葉を聞いた記憶がある。
『100名の奏者の一斉に1小節演奏することと、1名の奏者が100小節演奏することを等価と認識する文化がある。』『音楽時間の概念には”計測時間”と”計量時間”があり、両者の時間概念は異なる。」
様々な文化圏の音楽を聴く時に、音楽的時間の概念にも意識や興味を向けて欲しいとの思いから、その切っ掛けとして、音楽的時間の概念を揺さぶるためのワークショッププログラムを実施した。これを契機に日本の伝統音楽における”間”などの音楽的時間の意識や概念について改めて考えることを期待している。
今回は授業内容から考えて、かなりの戸惑いが学生から出てくると予想していた。しかし実際には柔軟に課題に対して取り組んでもらえ、学生の対応力の高さを実感した。

2013年7月11日 (木)

7月10日は吉原による「アジアのコトの奏法を使ったワークショップ」を行いました。

このワークショップは「音楽づくりの授業アイディア集」音楽之友社出版、坪能由紀子、味府美香、他著より、P、66「箏から広がるアジアのコト」を参考に実施したものです。

洗足学園音楽大学では初めての試みのワークショップでしたが、新しい発見がたくさんありました。また、学生が頑張っていろいろな奏法を駆使して音楽づくりをしてくれたおかげで、素敵な作品が出来上がり、そこから見えてくるアジアのコトに着目する意義の深さを感じました。

内容は以下です。

実施日2013年7月10日

ワークショップリーダー:吉原佐知子

対象:洗足学園音楽大学 学生 8名

使用楽器:箏8面

調弦:E,G,A.C,D,E,G,A,C,D,E,G,A

目的:

・日本の箏と同じ、アジアのコト類に着目して、日本とアジアのコト類の類似点と相違点を知る。

・日本、中国、韓国のそれぞれのコトの奏法に親しむ

・3つの国のコトの奏法を使って音楽づくりをすることにより、同じコト類としてのアジアの楽器を身近に感じる。

内容:

①日本の箏のさまざまな奏法を知ってもらうため、吉原による宮城道雄作曲「虫の歌」の演奏を聴いててもらった後、全員で日本らしいの奏法を練習する。

*かけ爪、割り爪、平爪、トレモロ、輪連(サーラリン)etc.

②韓国の楽器のDVDをみて奏法をまねしてみる。

*カヤグム

 特徴 指ではじく。

     押し手(韓国語でシキムセ)を多用

*アジェン 

 特徴 弓でこすり、左手は押し手

 

③中国の楽器のDVDを見て奏法をまねしてみる。

*古箏

特徴 グリッサンド 押し手 金属弦

*楊琴

特徴 バチで弦をたたく、トレモロのように連打する。

④今まで出てきた奏法を使って

*好きなタイミングでいろいろな音を出してみる

*対話をする。

*重ねる

*パターン重ねの上でソロまわしや対話をしてみる。

⑤2つのグループに別れて音楽づくり

⑥発表

アジアの奏法によるワークショップ 邦楽ワークショップ
YouTube: アジアの奏法によるワークショップ 邦楽ワークショップ

アジアの箏の奏法によるワークショップ 邦楽ワークショップ
YouTube: アジアの箏の奏法によるワークショップ 邦楽ワークショップ

⑦講評&感想

<作品について>

一つ目のグループは国別の音楽づくりであった。流れは、日本(遅めの4拍子)→中国(早めの3拍子)→韓国(普通の速さの4拍子)

という、とてもしっかりした構成による音楽づくりをしてくれ、よくまとまっていた。

二つ目のグループは奏法ごとにパターンミュージックをしてくれ、フリーで即興性の高い素敵な音楽ができた。

全く雰囲気の違う音楽がうまれ、対称的でとても興味深い結果になった。

<生徒の感想>

* 楽しかった。

*日本のコトで3つの国のコトを体験できて良かった。

*初めは音楽づくりをするのがためらわれたが、やってみたら簡単に色々できて良かった。

*違う国の奏法まで体験できて良かった。

<吉原感想>

今までは調弦を中国風にしたり、都節にして日本らしく、アリランが弾ける調弦にして韓国風に、というように、調弦を変えて各国の音楽を表現することはあったが、調弦を統一して奏法のみで国別の音楽づくりをするというのアプローチは初めてで、新しい試みであった。

3つの国のコトは素材は違えど、どれも木に弦を張った弦楽器である。形も少しずつ違うが、ルーツが一緒なので、音楽づくりもし易いと思う。

左手はどれも押し手を多用する所が共通している。右手は爪をはめたり、指で弾いたり、弓でこすったり、バチを使ったりと相違点が多く見られた。

今回の参加学生はほとんど箏が弾けないのだが、たくさん音を出して果敢に音楽づくりにチャレンジしてくれた。参加者が日本の箏についても初心者だったからこそ、日本の楽器とアジアの楽器を同じレベルで見ることができ、結果、躊躇なく自由に音楽づくりができたのかも知れない。

このワークショップは、アジアのコトについてや、コト類の中の一つとして日本の箏を見ることができるという点で、大いに意義のあるものであった。これからもたびたびアジアのコトを多方面からアプローチして題材として取り上げていきたいと思う。

授業担当:吉原佐知子 記