2019年7月

2019年7月18日 (木)

◆テーマ
「3拍子 4拍子 5拍子」で音楽遊び
 
 
◆実施日
2019年7月17日
 
 
◆担当
山口賢治
 
 
◆概要
周期の異なるリズムや音形パターンの同時演奏を様々なバリエーションを試みた。単純の繰り返しでも周期をずらすことにより、より大きな周期で音楽的変化を自動的に得ることができる。3拍子、4拍子、5拍子の繰り返しパターンを素材や構成の枠組みとした。以前に同様の方法による授業は何回か行ったことがあるが(パターンミュージックの応用 〜各奏者の周期や時間進行の異なる音楽づくり〜 2013年7月17日 他)、今回はさらにこの方法を発展させたワークショッププログラムを実施した。
 
 
◆実施プログラム





YouTube: 「3拍子 4拍子 5拍子」で音楽遊び

 0:00〜0:40
3グループに分かれ、それぞれ3拍子、4拍子、5拍子で拍子頭で手拍子をする同時演奏を行った。
 

 0:40〜1:20
リズムに合わせて、下記に言葉を当てはめた。
Aグループ:きく◯│きく◯│きく◯│きく◯│←3拍子
Bグループ:さくら◯│さくら◯│ さくら◯│さくら◯│←4拍子
Cグループ:あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│←5拍子
(◯は休み)

 
 1:20〜2:22
②を基に、4小節の繰り返しの冒頭に手拍子を入れた。フレーズの繰り返しの冒頭部分が明確にすることを狙う工夫をした。
 
 
 2:22〜3:27
③を基に、4小節に渡りfからpへディミヌエンドさせてくり返した。これによりフレーズ感をより出すことができた。
 
 
 3:27〜3:51
③を基に、4小節に渡りpからfへクレッシェンドさせてくり返した。
 
 
 3:51〜5:02
②の構造を基に各グループの繰り返しの後に1小節の休みを付け加えて、演奏した。休符小節が入ることで、無音の箇所が発生したり、音の厚みの変化を聴き取ることが出来るようになった。
Aグループ:きく◯│きく◯│きく◯│きく◯ │◯◯◯│←3拍子
Bグループ:さくら◯│さくら◯│さくら◯│さくら◯│◯◯◯◯│←4拍子
Cグループ:あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│あじさい◯│◯◯◯◯◯│←5拍子
 
 
 5:02〜6:24
③と同様の試みであるが、手拍子の代りにトーンチャイムを使用した。手拍子と異なり、和音の変化が周期的に表れるので、より音楽的な響きとなった。
 
 
 6:24〜7:34
②と似た構造を設定した。
Aグループ:きく 休│きく 休│きく 休│きく 休│ ←1ブロック3秒
Bグループ:さくら 休│さくら 休 │さくら 休 │さくら 休│ ← 1ブロック4秒
Cグループ:あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│ ←1ブロック5秒
その上で、下記の設定条件を課し、試演した。
・各言葉の発音箇所は必ずブロックの先頭にする。
・設定単語の発音は1ブロック当り1回のみ。例えば1ブロック内で『さくら、さくら』と複数回単語を発声してはいけない。但しメリスマ的音の動きや『さ、ささ、くくく、、ら』などの分割や単語構成している音の繰り返しは許可とする。
・言葉はリズムに合わせても、合わせなくてもどちらでも良い。
・声の高低やニュアンス、声色は自由に作って良い。なるべく様々な表情をつくる。
・ブロック内で発声が終了したら、次のブロックの先頭になるまで休みとする。 必ずブロック内で発声を終了させる。ブロックを超えて声を繋げてはならない。
 
 
 7:34〜8:34
下記の構成で⑧と同様の試演を行った。
Aグループ:きく 休│きく 休│きく 休│きく 休│全休│ ←1ブロック3秒
Bグループ:さくら 休│さくら 休 │さくら 休 │さくら 休 │全休│ ←1ブロック4秒
Cグループ:あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│あじさい 休│全休│←1ブロック5秒
 
 
 8:34〜9:14
各グループの繰り返しのフレーズの先頭にトーンチャイムを鳴らしながら⑨を行った。
 
 
 9:14〜10:05
②と同じ構成で「きく」「さくら」「あじさい」の言葉の代りにドレミファで歌唱した。リズムや音程のズレの音楽的効果を確認することができた。
 
 
 10:05〜
これまでの試行を基に学生のアイディアで音楽づくりをしてもらった。演奏の一例を示す。
 
 
◆まとめ
今回の方法はとてもシンプルであるが、手拍子、バディーパーカッション、声、器楽など様々な応用が期待出来る。このワークショップを通じて周期の概念や最小公倍数について考えることができるので、音楽と理科や算数教科と関連させれば、総合的学習の教材プログラムとしての活用も可能と思われる。
⑧ ⑨ ⑩については、初めての試みであったが、とても面白い結果となった。部分的にはリズムに嵌らず、フリーリズム的ながらも、大きな枠組みでは繰り返しの構造が把握できるので、今後はこの方法を発展させてプログラムを研究課題としたい。

2019年7月13日 (土)

◆テーマ
箏による音楽づくり 〜メタトナリティ(超調性)による音楽〜

◆担当
山口賢治

◆実施日
2019年7月10日

◆概要
フランスの作曲家、 Claude Ballif クロード・バリフ(1924年5月22日 - パリ - 2004年7月24日)が提唱したメタトナリティ(超調性)の手法を箏に援用した音楽づくりを試みた。メタトナリティとは、シリアスで無調的な音響と調性的な響きの中間的な音楽的性質を目指すシステムである。

◆目的
箏は柱を動かすことにより、様々な旋法や微分音程など自由な音律設定が容易に行えることから様々な音楽づくりワークショッププログラムが試され、実践されている。必要な音や求める音列配置を予めプリセットできるので、簡易的に演奏音の選択が可能である。箏のこの性質を用いれば、メタトナリティシステムも比較的簡易に具現化することができると考え、箏による音楽づくりプログラム教材をひとつ提供することを目的とした。

◆ メタトナリティシステムの解説
1、調性楽曲の主音ような中心となる基礎音を設定する。(今回はC)
2、設定した基礎音に対して増四度(減五度)の音程関係になる音(F♯)は除外し、11音を使って構成する。
3、基礎音に対して完全四度(完全五度)関係にある音(今回はFとG)を調的不変素と呼ぶ。この音が調的な部分を担う。
4、基礎音と調的不変素の間に挟まれた音を旋律的変素と呼び、旋律や旋法の性格を決める要素となる。

Photo




図1 メタトナリティの構成(下記よりダウンロードできます。)
fig1.jpgをダウンロード

◆メタトナリティシステムの箏への適応方法
箏2面で1セットとする。基礎音(C)と調的不変素(F、G)は共通とし、旋律的変素の組合せが異なる下記の3セットを用意した。

A









図2 箏調絃セットA(下記よりダウンロードできます。)
A.jpgをダウンロード
 

B


     

 
 
 
  
 

図3 箏調絃セットB(下記よりダウンロードできます。)
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C



 
 
 
 
 
 
 
 
図4 箏調絃セットC(下記よりダウンロードできます。)
C.jpgをダウンロード

演奏効果を考慮し、箏Ⅱは箏Ⅰより一オクターブ低く調絃した。
 
◆実施プログラム





YouTube: 箏を使ったメタトナリティ(超調性)による音楽づくり


①各箏セット(A 図2、B 図3、C 図4)の旋法を提示した。0:00〜1:41

②各セットごとに試演。箏Ⅰの4小節アドリブ→箏Ⅱの4小節アドリブ→箏Ⅰと箏Ⅱの4小節アドリブを行った。ピアノによる基礎音Cの連打音を背景音とした。
 Aセット…1:41〜2:25 Bセット…2:25〜3:09 Cセット…3:09〜3:51

③ピアノに変わり基礎音(C)をトーンチャイムで鳴らしながら、各セットごとに点描的もしくは無拍節的な演奏をしてもらった。
 Aセット…3:51〜4:21 Bセット…4:21〜4:55 Cセット…4:55〜5:26

④これまでの試演を踏まえて各グループごとに自由に創作発表を行った。もし可能であれば、システムの主旨を尊重し、アドリブ旋律を奏でる際には中心の基礎音を留意してもらうよう伝えた。
 Aセット…5:26〜6:46 Bセット…6:46〜8:36 Cセット…8:36〜10:54

Aセットの演奏では、中心となる基礎音をドローンとし、箏Ⅰと箏Ⅱの各旋法が共に明確に伝わる演奏だった。Bでは、主に箏Ⅰが旋律的アドリブと担い、箏Ⅱが装飾的音を絡める構成になった。Cでは前半は中心音(基礎音)感じさせない無調的な音空間を形成させ、後半は旋律感を全面に出し、システムを巧みに活用した演奏であった。

◆考察
メタトナリティをテーマとした授業は今回が初めてであった。無調と調性の中間的な響きを求めるシステムなので、演奏の際、音の選択の仕方や抽出方法により旋法感を出したり、十二音技法的な音楽にもすることもできた。この方法論による音楽づくりでは、音楽的効果を明確にするために、演奏者がシステムを良く理解し、演奏をコントロールするためのある程度の技術や知識が必要となると思われる。邦楽ワークショップ受講生は当然、音大学内学生なので、このプログラムに対応できた。ワークショップの内容としては高度な分類になると思われる。

日本の伝統的な旋法には陰旋法、律旋法、民謡旋法、琉球旋法の4種類があり、どれもが完全四度からなる二つのテトラコルドの全音連結からなっている。テトラコルドを成す各音は核音と呼ばれ、核音で挟まれたテトラコルド内に音がひとつ配置される。この配置音の音程の違いにより各種の旋法に特徴づけられる。メタトナリティも基礎音と調的不変素の音程関係が完全四度で、且つ全音で連結されてる部分では日本の伝統音楽の旋法と共通である。なので日本の音楽の旋法から発展させてメタトナリティに繋ぐ教材プログラムへの応用も期待出来る。

今回は参加人数の関係もあり、調絃の組合せセットを3つ選んだが、組合せは全部で36通り考えられる。この試みは視点を変えればポリモードによる演奏になるが、主眼は無調的響きと調的な音響の中間的な音楽を実現することなので、そのための工夫や仕組みを考えることが今後の課題である。

◆参考文献
「はじめての〈脱〉音楽 やさしい現代音楽の作曲法」
 木石岳 編著/川島素晴 監修/自由現代社 刊

2019年7月 4日 (木)

7月3日 邦楽ワークショップ

今回は、箏を全音音階に調弦して、拡大と縮小をテーマにして音楽づくりをした。
最近の学生の作品を聴いていると、フィーリングだけで音楽をつくっている傾向になっているので、構造に着目したテーマを与えて音楽をつくってみた。

内容は以下です。


使用楽器 箏10面 発表の時に一人はピアノにまわった。
調弦 全音音階 A B C♯ D♯ F G A~
参考楽曲 ドビュッシー作曲 「映像」第2集 1曲目

内容
1、全音音階の紹介
2、上記の参考楽曲をピアノ科の生徒に弾いてもらう
3、箏で拡大(2倍ゆっくり弾く)と縮小(2倍速く弾く)を練習して、重ねてみる。
4、逆行(音型を逆に弾く)を練習して、さらにそれを拡大、縮小して重ねてみる。
5.箏の奏法の確認
6、独自の奏法を考えて、それを使って対話してみる。
7、今までの技を使って、拡大縮小をテーマに2つのグループに別れて音楽づくり
8、発表、感想を言い合う


YouTube: 箏による「全音音階」による音楽づくり

感想
2つのグループのうち、拡大縮小をわかり易く発表してくれたグループの作品のみアップした。
ピアノ科の生徒がピアノで参加してくれて、音楽的に幅が広がった。
拡大縮小をテーマにしたことで、いつもはフィーリングのみで作ってしまいがちな学生たちがちゃんと構造を考えて良く聴き合って、それぞれの役割がはっきりした音楽ができた。
これからの音楽づくりにも是非役立てていただきたい。

授業担当 吉原佐知子 記