2013年10月

2013年10月26日 (土)

10月2日の邦楽ワークショップロックコースの学生2名による当鉦を使ったワークショップでした。

【学生からの実施報告】
■テーマ
 音の強弱(※1ベロシティ)と音価について 音楽の表現力
■実施目的
 音楽の表現力 音楽を作るにおいて「音程」以外に重要なこととは何かを(再)確認する。
■用意する楽器や人員
 音楽をより楽しみたいと思っている中高生~大人の方まで(音楽家を除く)10名~
■実施プログラム
1、『アイスブレイクver1』
『4/4拍子1小節を8分音譜全ての手拍子によって発音する』というアイスブレイクを実施した。
 
2、『アイスブレイクver2』
手拍子の条件はver1に引き続き、一人一人フレーズを決め1人2人3人構成の3グループに分け、音の重なり、人数による音量変化を体感して頂くことが目的のアイスブレイクを行った。

3、『アイスブレイクver3』
アイスブレイクver2の条件を一部変更し、強弱をつけることによる表現に加え、音を出さない(8分休符)を取り入れ、8分音符全てを発音するという条件を外したアイスブレイクを行った。
グループ分けについては人員の組み替えは行ったがグループごとの構成人数に変更は無し。
休符を作ること、フレーズとしての表現に音価の意識を加えて感じてもらうことを目的とした。

4、『2グループに分かれて邦楽器、打楽器を用いて即興演奏、及び発表』
参加メンバーを2グループに分け、強弱、音価を表現した図形楽譜の用紙を配布。メンバーで話し合い譜面を完成させてもらい、その譜面に基づいた演奏をチャンチキという楽器を用いて発表した。
アイスブレイクでの強弱、音価の表現を音楽に活用することが目的とした。

■ワークショップを振り返って
本日は初めての体験で思った様にいかない場面や楽器の違いによる制限等、なかなか苦しいながらに、なんとか無理矢理まとめさせて頂きました。ワークショップの構成のコツなど個人的に発見もあり、未完成なりに充実した機械となり、とても楽しかったです。
私はRock&Popsコースでベースを専攻としていて、電気を必要とする楽器によって作り出される商業音楽のほぼ全てはデジタル録音をされた物です。その商業音楽を録音する過程では、Digital Audio Workstation通称DAW(ダウ)と呼ばれるソフトウェア上で録音したオーディオデータを編集します。編集とは?というと、楽曲を作成するにあたり、参加している各楽器の音は別々のデータとして録音されDAW上では波形として表示され、その波形を楽器ごと僅かに時間軸をずらす事によって、例としてはズレてしまった全体の音の出だしをそろえる事などができます。
実際そのような編集をすることは少ないのですが、この表示されている波形を見て私はたったの1/100秒音を出す瞬間、音を切る瞬間を間違えるだけで、聞こえてくるフレーズの印象はがらっと変わってしまうことに気づきました。
音の強弱も然り、歌がしっとりと歌い上げているバックで歌のフレーズを邪魔するような音量で音を出して良いでしょうか?もちろん良いこともあるでしょう。しかし、そういう一音一音に対する気遣いこそが音楽の表現力を上げると言うことを理解して頂くことが、このワークショップの狙いでした。
「スタカートは書かれている音符の半分の長さで」と小学校では(私自身が小学生の頃は)説明されましたが、四分音符にスタカートの場合、なぜ八分音符で書かないのか?などといった素朴な疑問からはじまり、音源と自分の演奏を聴き比べ、どうして同じ譜面なのに違って聞こえるのかを考えたり、音そのものに対する意識をより繊細にするきっかけととなればと思っています。

※1 ベロシティとは
 ―――Velocity 英【名詞】a velocity 速さ 速力
音楽用語では、電子楽器の演奏情報のやり取りに使用される(※2)MIDI規格において、音の強弱を表す数値。0~127の128段階を有している。

※2 MIDIとは
 ―――MIDI 英 Musical Instrument Digital Interface の略称。





YouTube: 音の強弱、長さ、タイミングの変化による音楽表現


【担当教員からのコメント】
学生自身が普段研究活動の中で感じている問題意識から出たテーマでユニークな視点でのワークショップだったと思いました。特にワークショップの最後に持参したノートパソコンによる打ち込み音源デモを使った説明はとても興味深かったです。『音のタッチやフォルム』と『それらによって形成されるフレーズの表現、表情』との関係をパソコン画面と音の組合せでとてもわかりやすく解説してくれました。音楽の表現に関わる根本的で高度な内容に踏み込んだ試みであると評価できます。
しかし、残念ながらこれらの伝えたい内容と実施したアイスブレイクから創作発表までの流れが、あまりかみ合っていませんでした。打ち込み音源の音の加工の仕方で機械的な音楽の表情から徐々にニュアンスが付き、人の演奏の感じに近づく過程を示しながら、それに沿ったアイスブレクプログラムを考える必要があります。
三味線、箏、琵琶など邦楽器には撥弦楽器が多く、例えば箏合奏のアンサンブルの場合、音のタッチ(爪の角度、弾く強さ、力の入れ方抜き方、爪を当てる絃の位置などによる音の立ち上げ方)を意識して揃えることは箏奏者が苦労することろであり、重要な研究課題のひとつです。箏や三味線を専門としない人達にも、そのような極めて繊細な問題意識を知ってもらい体験できるようにするために、容易に発音が可能で、かつ適当な響きの持続時間が確保出来る楽器として当鉦を選びました。
プログラムの見直しを行えば、意義ある内容のワークショップになると思われます。 担当:山口賢治

2013年10月13日 (日)

10月9日は箏講師、吉原による「箏で教会旋法にチャレンジ」でした。
箏の様々な奏法を学び、その後、教会旋法(今回はロ音上のエオリア音階)に調弦された箏を使って音楽づくりをし、新たな箏の世界を広げて、箏の活用の多様さを感じてもらいました。
今年は箏専攻の学生が1人もいないので、たくさん箏に触れてもらい、少しでも箏を身近に感じてもらえるようにという目的のもと授業をすすめました。思いのほか、学生たちはしっかりしたタッチでとても上手に箏を弾き、即興も自由にしてくれて、作品もすてきなものができました。今回のワークショップを参考にして、今後の学生自身によるワークショップでも箏を上手に活用していってもらいたいと思います。

内容は以下です。

ワークショップ名「教会旋法にチャレンジ」
日時 2013年10月9日
ワークショップリーダー:吉原佐知子
対称:洗足学園音楽大学、学生9名

使用楽器:箏8面、17絃1面
調弦 B,C♯、D,E,F♯,G,A,B,C♯,D,E,F♯,G

    
目的:箏の奏法を知り、箏を身近なものに感じる
    箏の新しい奏法を考える
    音楽づくりの手法をみんなで考える。
    教会旋法に親しむ。
    教会旋法に調弦された箏で音楽づくりをし、箏による音楽づくりの可能性を広げる

授業内容
1、吉原による教会旋法(ロ音上のエオリア音階)で作曲された、箏ソロ「オンディーヌの眼覚め」(玉木宏樹作曲)の演奏を聴く。
2、CDで同じくロ音上のエオリア音階で作曲された、ロドリーゴ作曲「アランフェス協奏曲第2楽章」を聴く

3、1,2と同じ旋法に調弦された箏を使って、、箏の基本奏法、特殊奏法をそれぞれまねっこしたり、パターンをつくって練習。
4、これまでやってきた、音楽づくりの構造(追いかけ、呼応、拡大縮小など)や音楽づくりで工夫すること(速さ、リズム、G,Pなど)をホワイトボードに書き出してみる。
5、4を踏まえて箏で「オンディーヌの眼覚め」の冒頭を拡大縮小したパターン上で自由に即興したり、対話したりしてみる。
6、2つのグループに分かれて、独自のパターンを考えて2場面つくり、終わり方をかんがえる、という約束のもと、音楽づくり。
7、発表
一つのグループには低音楽器の17絃も加えてつくりました。


YouTube: 2013.10.9教会旋法にチャレンジ 邦楽ワークショップ


YouTube: 2013.10.9教会旋法にチャレンジ 邦楽ワークショップ

8、感想を言い合う。

2つの作品は、どちらも全体ワークショップでやった技や音楽づくりの手法を駆使して素敵な音楽ができ、まるでヨーロッパの教会にいるような気分になりました。
学生たちも「箏ではないような不思議なかんじでした。」「きれいだった」「楽しかった」「箏で教会旋法なんて思ってもいなかった」とカルチャーショック?に近いものを感じてくれたようです。
これを機会に、今後もどんどん箏のワークショップを実践していってほしいと思います。

以上、授業担当 吉原佐知子 記

2013年10月 9日 (水)

2013年9月25日の授業の模様をご報告いたします。
今回はフルートコース2年のSさんによる、楽器と奏法に着目した授業でした。
Sさんは授業の組み立てにだいぶ悩み、なかなか授業案がまとまらずに前日まで変更を繰り返しましたが、邦楽器で季節の音楽を作りたいという核があったので、それに沿って沢山アドバイスをし、授業案をまとめることができました。授業中は短い準備期間の中でよく自分で消化して授業をこなしていました。学生さんたちも自分で調弦を考えるという今までなかった試みに楽しそうに楽器に触っていました。残念だったのは、せっかくよく進行しているのに声が小さくて聴き取りづらかったことです。大きい声で話すのは授業をする上でとても大事なことなので、最後に学生さんたちに伝えました。
以下、Sさんによる報告書です。

授業担当:中香里 記


タイトル『邦楽器を使って季節の音楽を作ろう』
対象:大学生
目的:箏、三味線を使って音楽作りの楽しさや季節感を感じてもらう。
使用楽器:三味線、箏

①アイスブレイク 10分
・声と手を出しながら右→チョップ、左→チャップ、返し→ワオ、指名→チップと回していくゲーム
・テンポをだんだん早くして行った。

②楽器準備 10分
・箏か三味線どちらかやりたいもの選んでもらう。(箏→3人、三味線→6人で実施。調弦はまだしない。)
・今の季節の秋、これからの季節の冬グループに分ける。

③秋のイメージ、冬のイメージをみんなで話し合い(音階、音、音の強弱なども含めて) 15分
・実施の際出たもの
秋→落ち葉、お月見、だんご、焼き芋、栗、鈴虫、餅つきの音、不安定な感じ
冬→雪、お正月、みかん、お鍋、クリスマス、羽子板、二上り
・これらのイメージをもとに各自で調弦を考えてもらい、発表

④上記のイメージを表現するにはどんな奏法、音ができるか独自の調弦を使って開発 10分
・個人で考えて発表。

⑤独自の奏法でパターン、ソロまわし 5分

⑥実在する秋、冬を表現する奏法 5分
担当:中先生
虫の音、コスリ、スリ、アテハジキ、当てヅメ、グリッサンド、ハーモニクス、ピチカートなど

⑦グループ実習 15分
・2グループ円になってもらい、先程考えたイメージ、奏法、調弦を使って秋、冬それぞれの音楽を作ってもらう。
約束
1、箏、三味線の既存の奏法か独自のおもしろい奏法を取り入れる。
2、始まり方と終わり方を決める

⑧発表 10分

グループ秋





YouTube: 季節の音楽づくり①

グループ冬





YouTube: 季節の音楽づくり②

秋→虫の声(鈴虫)から始まりお月見をイメージ、途中餅つきの音があり最後は虫の声で終了。
冬→箏の羽子板のやりとりから始まり三味線同士対話をしていた。箏の羽子板から三味線の羽子板に変わり終了。

⑨まとめ 5分
計90分

授業を受けた学生からの感想
・題材が今までやったことがないもので楽しめた。
・調弦を自分で考えてから音楽作りをすることがおもしろかった。
注意点
ホワイトボードに書いているときなど声が聞こえづらかった。
声をもっと大きく。

授業をやってみての感想
音楽作りの授業を1からやるのは初めてで緊張していました。
でも先生のサポートもあり、やりたい授業を実施できてよかったです。
また、授業中も受講している子たちが積極的に参加してくれたのでスムーズに手順をクリアできました。
今回の注意点も含め今後の大学生活や仕事をしてからも役立てたいです。

9月18日に行われた授業の模様をご報告いたします。
今回は音楽音響デザインコース4年のOくんとピアノコース4年のTさんによる、リズムに着目した授業でした。
2人は普段の授業から積極的にリーダーシップをとってくれたり、率先して音楽を創造したりと才能あふれる学生さんたちです。先生役となった今回の授業でも、持ち前の明るさと息の合ったコンビプレーでとてもいい授業になりました。それは事前にしっかり準備・打ち合わせを行ったことと、何が起こってもめげずに前向きに学生さんたちを引っ張っていったからだと思います。そのリーダーの素質を大切に、これからも授業をがんばっていってもらいたいです。
以下、OくんとTさんによる報告書です。

授業担当:中香里 記


タイトル『リズム遊びで音楽に馴れよう』
対象:大学生
目的:邦楽器を使い、リズムを通して音楽に馴染む
使用楽器:箏、打楽器

授業内容
①アイスブレイク(10分)   
・円になってもらい、4拍リズムを提示、それを模倣する、を数回
・各生徒と一対一でコール&レスポンス(全員やる)×2 、ボディパーカッションを含める
・円上の隣の人と無拍でのコール&レスポンス×2 、ボディパーカッションを含める

②楽器準備(10分)
・箏の調弦はD,F,G,A,C(音を一つに絞ってリズム遊びをするコンセプトだったので、同時に全ての音が鳴っても不協和にならない音列を使用した。)  
・打楽器か箏かを選んでもらい、二種類を混ぜる様にグループ分けが出来る人数配分にする (箏4人とその他打楽器に分けた )

③楽器を使用してのリズム遊び(20分)
・箏担当の人には任意の音を一つ選んでもらう。
・担当の楽器の音からイメージするものを発表(難しすぎた)     
・イメージを生かしつつ上記のアイスブレイクと同じ順でリズム遊び(打楽器でのパターンにのせながら)
・4小節毎のアドリブ回し
・楽器を使う事によって起こったイメージの変化、リズムの変化の感想を聞く。

④グループ実習(15分)
・打楽器と箏が混ざるようにグループ分け    
約束事
1、各班ごとにテーマを決める     
2、有拍と無拍の部分を作る 
3、曲の始まりと終わりを決める

⑤発表(15分)

グループ1





YouTube: リズム遊びで音楽に馴れよう①


グループ2





YouTube: リズム遊びで音楽に馴れよう②

一つ目のグループは「台風からの秋到来」がテーマ、二つ目のグループは 「病院」をテーマに演奏した。どちらのグループも特殊奏法などを駆使してうまく演奏出来ていた。

⑥まとめ(5分)  


授業の感想  
・応用の効く台本を作成でき、大きな問題もなく進行出来てよかった   
・参加者の人たちの反応が少し薄くて不安になったが、話し合いの段階では積極的に参加してくれたのでよかった     
・時間が足りないかと思っていたが実際には想定よりも大幅に早く終わってしまった。時間配分の感覚が難しいと感じた     
・総合的によくできたと思う。