2012年9月26日フルート専攻のKさんが「春の海」を題材にワークショップを行いました。以下にKさんからの報告を記載します。
【Kさんからの報告】
◇授業の目的・目標
邦楽しかなかった日本の時代では考えられない楽器のセッション(東×西)を、「春の海」の一部を使って楽しみ、音楽づくりを行う。
◇実施対象
大学生以上
◇使用楽器
筝、三味線、尺八、フルート、サックス
◇授業の流れ
①youTube でさまざまな楽器や、アレンジの「春の海」を鑑賞し、音楽づくりの材料を見つける。
・バイオリンと筝 春の海
・春の海 幻想
・Jazzアレンジ 春の海
・サックス4重奏と尺八 春の海
②Kと吉原佐知子先生で、「春の海」フルート、筝のバージョンを実演。
③アイスブレークとして、「春の海」の冒頭10小節を抜粋し、音楽づくりに生かせるように各自の楽器で演奏できるようにする。
(事前に楽譜を配布。)
・フルート、サックス、三味線、尺八は旋律。筝は伴奏を練習。
④
1 春の海の伴奏をドローンとし、アイスブレークで習得した旋律を生かして、一人ずつアドリブを回していく。
2 1のドローンを、ジャズのリズムに変え、旋律もジャズにアレンジしてアドリブを回していく。
3 A(サックス1、三味線1、筝2)B(サックス、フルート、三味線、筝)の2グループに分けて、音楽づくりを行う。
音楽づくりのポイント!
グループの中で、旋律、伴奏、アレンジ(飾り)に分担をわけてもらい音楽づくりをする。
◎1、2でやったようにアドリブをまわしたり、ジャズのリズムに変えたり、特殊奏法を使ったり、班の中で話し合いを行ってもらった。
⑤各グループの発表会。
◇邦楽ワークショップを実施した感想
今回のワークショップでは、「東と西の音楽の融合」に着眼点を置き、発展させたものを内容にしました。邦楽曲を、洋楽器で。はたまた、洋楽曲を、和楽器で。
邦楽器しかなかった時代に生まれたら味わえない程の、音楽や楽器がある今だからこそできる音楽体験をし、音楽づくりを行いたいと思ったからです。
今回は「春の海」を使用して行いましたが、ほかの有名な日本の曲でも応用して行える内容だと思います。
実際に授業をするときは、前々回、前回とJazz科の方が行っていたので、Jazzの要素も入れました。今回の授業のメンバーだからこそ、即興的なアドリブやジャズアレンジで果敢に挑戦できたと思います。
ほかの場面で実施するときに、誰もができるように、ジャズのアレンジの仕方のレクチャーの時間もいれるとさらに取り組みやすい課題になると思い、反省点となりました。
音楽づくりでは、AグループとBグループで、対極の音楽ができ、どちらもとても素敵でした。
前期では、グループ活動に入ると邦楽科の方が中心で行うことが多かったのですが、後期に入ってからは、邦楽科以外の人も積極的に自分の技術を生かして参加してる様子がみられ、一年を通して行う授業だからこその成長があり、とても嬉しいです。
先生方のフォローや、生徒のみなさんの音楽性に支えられ、無事授業を終えることができてよかったです。ありがとうございました。
【担当講師からのコメント】
「春の海」を題材としたワークショップは過去に何度か行われましたが、今回は「春の海」のオリジナル形式(箏、尺八)以外の様々なアレンジを活用することに着眼した部分が注目点でした。
評価出来た点として
①ヴァイオリンと箏、箏合奏群、ジャズアレンジ、サックスカルテットなど様々な様々な参考音源資料を集め、音楽づくりに役立たせた。
②吉原先生(箏)の協力を得て、自らフルートで「春の海」の見本演奏を行った。
③「春の海」の旋律から参加者各自が技量に応じて、即興演奏を導き出すことに成功した。
④箏、「春の海」という日本の伝統音楽要素や題材に、サックスやフルートによる邦楽器以外の楽器が加わるためのプログラムを提供することができた。
”
ジャズコースの学生が2名(サックス)おり、グループ別の分かれる際に、それぞれのグループにひとりづつ配置できたので、その後の音楽づくりが円滑に進みました。ジャズコースの学生の能力を上手く引き出せた点で良い結果が得られたと思います。実施対象者てして大学生以上を想定しているので、参加者それぞれの専門能力をどう組み合わせて活かすかが重要になりますが、その点では成功したと思います。ただ、本人の反省にもある通り「春の海」をジャズ的に扱うに際して、ジャズ足らしめる具体的な音楽的要素(スイング、テンションなど)の説明や演奏上の工夫についての言及がまったく無かったので、雰囲気や感覚のみに頼る結果になってしまいました。限られた時間の中でも、その点について分かりすく簡単に触れることができれば、さらに充実したプログラムになったでしょう。
今回は冒頭分のモチーフを活用しましたが、中間部の掛合の箇所など、別の部分から要素を抽出することもできるので、音楽づくりの題材として「春の海」は様々な応用の可能性があることを実感しました。
担当:山口賢治
コメント