2014年10月

2014年10月15日 (水)

10月15日は音楽音響デザインコースのNさんによる「邦楽器でフラメンコの音楽を作ってみよう」というワークショップでした。

邦楽ワークショップ初のフラメンコを題材にしたワークショップでしたが、よく題材研究もされていてスムーズな授業展開となっていました。

やはり音階がはっきりしているので、音楽づくりもしやすかったのだと思いました。

授業内容は以下です。

授業担当:吉原佐知子 記

【邦楽器でフラメンコの音楽を作ってみよう!】

ワークショップリーダー:音楽音響デザイン学生

実施日:10月15日 対象:大学生

使用楽器:箏(十三弦と低音箏)、フラメンコカスタネット、手拍子

概要と目的:間を大事にする、どちらかというと決まったビート感のない日本の音楽と 踊りの伴奏音楽であり拍子感がはっきりとしたラテン音楽のフラメンコは、多くの面で正反対な音楽。この対象的な2つの音楽を組み合せ、自分なりのフラメンコを完成させる。

それぞれの音楽の特徴を理解し、民族音楽に対する興味関心を深めてもらいたい。

ワークショップ内容:

① 導入~フラメンコについて~。フラメンコの成立についておおまかな説明。(地図の画像を用いて)、PC を用いて映像資料を見せる。(本場スペインでの実際のフラメンコの様子、フラメンコギターの演奏映像など)フラメンコ音楽で用いられる用語についても触れる。5分

② アイスブレイク~パルマ(手拍子)、ピトース(指ならし)、を用いてフラメンコのリズムを体験。(初めにパルマの映像資料を提示。その後6/8、2パートに分かれた短い課題を用意し、各自練習した後に2つに分かれて全体でやってみる。)10 分

③ 全体でリズム、楽器練習:箏を用いてトケ(フラメンコギターの伴奏)を再現する練習。 ボディを叩く奏法など、各自で工夫を考えてもらう。全体で箏のみのフラメンコ音楽をやってみる(6/8伴奏の上でソロをまわす)5分

④ グループワーク:2グループに分かれ、音楽作り。20 分 この際調弦は、AB♭C(♯)DEFG(♯)AB♭C(♯)DEA

(C,G はしばしば♯するので押し手しても良い)

各グループ低音箏一面ずつ。(オクターブ低く調弦)

○/8拍子、トケ(伴奏)/カンテ(旋律)/パルマ(手拍子、リズム)の3つの役割が必ず存在するようにする。・・・という縛りの元で音楽作りをしてもらう。

役割は途中で変わっても良いものとする。音楽の構成などを考えている間、各グループをまわり、独特のダイナミクスや、押し手、トレモロ、奏法についてや、日本音楽にみられる掛け合いや、間なども用いてみるようにアドバイスした。

⑤ 発表。各グループ5分ほど。

第一グループ・・・叙情的でかっこいいカンテパート。中間部に日本的な間のある間奏を取り入れ、その後低音箏でのソロやサンバ風な4拍子リズム。

第二グループ・・・3、7音の押し手多用により、1組めよりもよりアラビア的な雰囲気が感じられた。ダイナミクスを付けてくれて良かった。

⑥ まとめ、感想

【まとめ、感想】 

今回題材として用いたフラメンコは、スペインのアンダルシア地方の伝統芸能であり、誰もが一度は耳にしたことのある民族音楽だと思います。ですが実際自分でやってみるとなると、馴染みのある日本音楽と異なりすぎて少し難しいのでは?と心配していました。しかし、やってみると皆さん見事に独自のフラメンコを再現していたので驚きました。特にクラシックをやってきた方はビゼーの≪カルメン≫で、フラメンコなどスペイン的な音楽に触れたことがあり、やりやすかったのではとおもいます。また、フラメンコの音階が箏に良く合い、日本的な要素とも上手く絡んだのも、フラメンコ音楽が東洋からやってきたジプシー達の影響を大きく受けている、という成立を考えると頷けます。東洋のオリエンタリズムを西洋音楽に取り入れたドビュッシーやラヴェル、そしてスペイン音楽を取り入れたフランス人ビゼー・・・そして今回のワークショップを通じて、日本独自の音楽に、他国の土俗的なリズムや音階、楽器などを取り入れることによって生まれる音楽の可能性を身を以て感じました。作曲を学ぶものとして、とても勉強になったワークショップでした!

邦楽でフラメンコ 邦楽ワークショップ
YouTube: 邦楽でフラメンコ 邦楽ワークショップ

邦楽でフラメンコ2 邦楽ワークショップ
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2014年10月 6日 (月)

10月1日に行われた授業の様子です。
今回から学生による授業が始まりました。トップバッターのピアノコース4年M.Yさんは緊張の面持ちでしたが、早い段階から準備をしっかりしていたのでとてもよくまとまった授業でした。素晴らしかったのが、実際にお箏を弾きながら奏法や音楽づくりアドバイスをたくさんしていたことです。逆に学生さんの意見を聞きすぎて時間に隙間ができてしまう場面が何度かあったので、そこをうまくリードしていけるようアドバイスし終わりました。
下記、M.Yさんからの授業報告書です。
授業担当:市川香里 記
『ドビュッシーの"前奏曲"をお手本に、箏を使って"前奏曲"を作ってみよう!』
実施日:2014年10月1日(水) 
対象:大学生6名
使用楽器:全音音階と五音音階に調弦した箏・必要があれば打楽器
概要と目的:西洋で多く使用されている全音音階、日本でも親しまれている五音音階で音楽づくり。
様々な音階を組み合わせることに挑戦し結果多くの傑作を生み出したドビュッシーに習いながら、今回は上記の2つの音階を効果的に使用し自分たちなりの"前奏曲"を作る。
授業内容
①楽器準備 (10分)
全音音階 三面
五音音階 三面
②まずは、これから参考にするドビュッシーのことを知ってもらうため、彼の音楽や作曲技法について(ジャポニズムに興味を持ちはじめた頃の話を軸に)簡単に説明。
拍や刻み、メロディと伴奏、表現面も明確であるのがクラシック音楽の基本であった時代。そこからの脱却を試み、宙に漂うような壮大な世界を追求したドビュッシーの音楽性についても触れる。(5分)
③全音音階と五音音階を使って書かれているドビュッシーの作品を抜粋して鑑賞。
参考資料として譜面も配布。(5分)
1.映像第二集より「葉づえを渡る鐘の音」
2.映像第二集より「そして月は廃寺に落ちる」
前奏曲第一集より「ヴェール」の楽譜を参照し、彼の前奏曲のタイトルの特徴を説明。
※ドビュッシーは前奏曲の各曲の標題を、固定観念に縛られず自由に音楽を味わって欲しいという想いから、
冒頭には書かず、各曲の終わりの余白に小さく書込こんでいた。
④CD鑑賞・譜面閲覧から得たものを生かし、まずは一つの標題をみんなで考えて音楽づくり。今回はドビュッシーの風流な標題をいくつか読み上げ、それを参考に皆から出た"もみじ散る ひらひら"というタイトルに寄せて音楽づくりをした。
まずは一人一人にタイトルから得たインスピレーションを生かしたパターンを作ってもらい、発表。(この際に自分のパターンがどんな風景や表情を表現しているかも説明してもらう)
どんな工夫をしたら標題を音楽で表現することができるか、リズム、音形、強弱、箏の奏法の可能性などを話し、その後こちらが役割分担(パターン・かざり・ソロ)をし、五音音階組・全音音階組それぞれ重ねた後、最後に全員で重ねてもらう。(10分)
⑤慣れて来たところで、全音音階組と五音音階組にわかれてもらい、先ほどと同じようにドビュッシーの音楽をお手本に、自分たちなりの小さな前奏曲(標題音楽)を作ってもらう。
(20分)
※今度はドビュッシーの前奏曲の題名の付け方の工夫に習い、2グループはお互いに最後まで秘密事項として標題を伏せ、聴く者に想像を全て委ねることを試みる。(どれだけ音だけで世界を表現出来るか、想いを伝えることが出来るかを体感する為。)
⑥相手グループに聴こえないようひそやかに、各グループごと中間発表として私に聴かせてもらう。
それぞれの標題をさらにリアルに表現するにはどうしたらよいかをドビュッシーの余韻や時間の使い方を参考にアドバイス。求める世界観に必要であれば打楽器の使用も認める。(20分)
⑦各グループ演奏発表。
お互いの標題予想・発表。  (15分)
ちなみに今回は…
全音音階組
「ハロウィンの夜」
(家を探し、ノックをし、いたずらをし、そして逃げる)
五音音階組
「滅びの夢から醒めると、そこは天女のパラダイス」
でした!
⑧感想。片付け。  (5分)
♪まとめ♪
私の方も得るものが大きな授業となりました。音階の世界観と箏との相性がとても良く、ドビュッシーならではの響きや余韻、うつろい、微妙な揺れなど、絶妙な雰囲気を醸し出せたのだと思います。
音楽づくりでは、標題をつけることでイメージを仲間内で共有しやすくなり、標題を伏せることで"相手に伝えたい"という強い気持ちも生まれ、技術に凝るのではなく、リアルな感情の起伏のあるとても豊かで音楽的な世界観が表現出来ました。
どんな音楽づくりでも明確なイマジネーションを持ち、取り組むことが鍵なのだと感じました。想像力を掻き立てるような授業のもって行き方、助言など、そういう工夫を凝した面は良かったなと思いました。
標題音楽に寄せるための実践に使える箏の奏法を説明したけれど、もっと多くの奏法をお伝えできれば良かったな、というのが後悔です。それと授業の進行をもっとスピーディーに出来るよう、頭の中を整理して話が滞らないように先のことを考えることも大切なのだと感じました。
最後に素敵な作品が出来上がり、みんなが怖がらず、楽しそうに演奏していた姿を見られたことが何より嬉しかったです!