2014年9月

2014年9月28日 (日)

9月24日は吉原による、箏のソロで有名な沢井忠夫作曲「鳥のように」を題材にしたワークショップでした。

内容は以下です。

ワークショップ名「鳥のように」を題材にした箏ワークショップ

ワークショップリーダ 吉原佐知子

使用楽器 箏1人1面

目的

・箏に親しみむ。

・箏の名曲を知り、それと同じ調弦、構成による音楽づくりをすることにより、題材をより深く理解しつつ、箏で様々な奏法を駆使しつつ自分たちで自在に音楽づくりにチャレンジする。

・音楽づくりをする際、構成や調弦が大事であることを実感する。

〈流れ〉

1、吉原による沢井忠夫作曲「鳥のように」の演奏を聴く

2、「鳥のように」の調弦を説明し、鳥のようにに出てくるいくつか反復パターンをみんなで練習。

3、練習した6/8拍子のパターンの上で、ソロ回しや対話をしてみる。

4、無拍の部分の練習。トレモロや打ち爪の上で新しい技を探して回したり、様々な奏法で対話する。

5グループに分かれて創作

約束は以下の構成であること。

A(6/8拍子)-B(無拍)-A(速い6/8拍子)

6、発表

「鳥のように」による音楽づくり
YouTube: 「鳥のように」による音楽づくり

7、感想&講評

生徒たちの感想は以下です。

・オリエンタルな感じだった。

・ハープみたいだった。

・曲の構成が決まっているとつくり易かった。

・かっこよかった。

・イメージがわきやすかった。

ワークショップリーダーの私の感想としては、前回の「みだれ」によるワークショップよりもそれぞれ大きい音がだせるように指導した成果が出ていて、それぞれが出したい音や表現したいものが出せていて音楽的にも技術的にもレベルアップしていると思いました。

私自身の反省としては、最初にアイスブレイクとして手拍子で6/8拍子のリズムで音楽づくりをしておけばもっとスムーズに箏ですぐに6/8拍子の音楽がつくれたので、次回はちゃんとアイスブレイクからしたいと思いました。

以上 授業担当 吉原佐知子 記

2014年9月18日 (木)

9月17日の授業の模様です。
今回は三味線に焦点をあて、阿波踊りのリズムで音楽づくりをしました。
阿波踊りをテーマに音楽づくり
実施:2014年9月17日
対象:大学生
使用楽器:三味線(HEA)
目的:三味線の奏法をマスターし、さらに独自の音を見つける・日本の伝統的お祭り「阿波踊り」のリズムを体験し音楽づくりする・リズムを使った音楽づくりのヒントをみんなで模索する
授業内容
①三味線準備
②基本奏法復習
③独自の音開発・発表
④特殊奏法復習
⑤阿波踊り説明・基本リズム練習
☆リーダー(打楽器)の提示する遅速・強弱に合わせて変化させていく→阿波踊りにおける決まり事の一つ
⑥基本リズムでパターン作り・ソロまわし・みんなで阿波踊り合奏
☆リーダーの提示する鐘のリズムに合わせてどんどん変化させていく
⑦阿波踊りで音楽づくりグループ実習
約束1.リーダーを決める
約束2.独自の奏法を入れる
約束3.自由なソロまわしを入れる
⑧中間発表・意見交換
各グループとも打楽器的要素がとても強く、メロディックな部分を作ることとfはもっとしっかり弾くことをアドバイスしました。
⑨発表会・まとめ
グループ1. リーダーが提示している基本リズムは音の変化に富み、最後のコスリでのアンサンブルは統一感があっておもしろい終わり方でした。どうしても弾くのでいっぱいになってしまうので、ソロ部分などは特にお互いをもっと聴きあってできるようアドバイスしました。
グループ2. それぞれの役割がどんどん変わり、三味線の扱い方も出てくる音も色々な要素がふんだんに盛り込まれてとてもおもしろい音楽でした。画期的な弾き方で目からうろこ!
みんな構え方や弾くのに苦労していましたが、音楽づくりでは自分たちなりにどうやれば弾けるかじっくり考え、実践できていました。新たな弾き方やおもしろ音がたくさん飛び出し、私もとても楽しい授業でした。学生さんによる授業でもぜひ三味線を扱ってもらえたらうれしいです。
授業担当:市川香里
2014年9月10日 (水)

■テーマ:尺八の奏法を活用した音楽づくり 〜「鶴之巣籠」を参考に〜

■担当:山口賢治  ■実施日:H26年9月10日

■狙い

「鶴之巣籠」は尺八の名曲として様々なヴァリエーションが存在する。どのヴァリエーションにおいても共通して玉音、コロコロの技巧が効果的に使用されている。尺八の場合、初心者はすぐには音が出ないが、尺八アダプターを使用すれば奏法上の制約を受けるものの、一応誰でも音を出すことが可能である。尺八アダプターを装着することを前提に全員が尺八を演奏し、玉音、コロコロの奏法を中心に音楽づくりを行う。玉音、コロコロの奏法を試みる過程を通じて、単純な構造でありながら多彩な音色が得られる尺八の特性の一端を少しでも体験してもらうことが狙いである。

■想定対象者:小学校高学年以上

■実施プログラム

① 尺八の基本的な吹き方の説明した。鳴らない人にはすぐにアダプターを装着してもらった。

② 各地方に伝わる様々な「鶴之巣籠」の演奏例を聴き、共通した表現法や奏法を聴き取ってもらった。鶴の巣籠 (奥州系/都山系/ 蓮芳軒・喜善軒所傅)、巣鶴鈴慕(琴古流)

③ 玉音、コロコロの説明と練習を行い、「鶴之巣籠」の様々な手の一部を模倣してもらった。

④ ②③を受けて自分の「鶴之巣籠」の手(音形パターン)を作ってもらい、トリル、トレモロ、玉音などを組み合わせて、音響の断片をつくってもらった。その後、2グループに分かれて創作発表した。

⑤アナログシンセサイザーと尺八との音遊びを試みた。

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■まとめ

尺八の場合、音楽を構成音のひとつひとつを取り出しても、その音そのものに様々な音色やフォルムなどの多様な要素が含まれている。一般的に西洋クラシック音楽において使われる管楽器の音にくらべて、尺八は音に含まれる情報量が多いと言える。伝統的な尺八音楽はこのような音の特性を効果的に活かした曲が多い。また尺八の演奏技巧に、このような音の特性を顕在化させるための工夫の体系が含まれている。例えば西洋の管楽器の場合、転調によって大きく音色が変わることはないが、尺八の場合には調によって全体の音色感が大きく異なる。なので音色や音量のバランスを考量し、運指や使用する楽器の長さの選択の判断がとても重要になる。 「鶴之巣籠」は、こうした尺八が有する特性を最大限に発揮した曲の例である。また鶴の誕生から死までのストーリーを曲構成に当てはめた曲もあり、「鹿の遠音」とならんで、名曲であると同時に音楽づくりの題材としても適している。 

尺八アダプターを装着したとはいえ、尺八の特徴である指孔が5つあり、かつ指孔が大きく、キーがついていない特性は失われないので、尺八の持つ性質の一部は体験できたと思う。学生達に「鶴之巣籠」の特徴的な部分の模倣をしてもらったが、最初は戸惑いを感じていたようであった。しかし自分なりに尺八の音のひとつひとつの感触を得ることはできたと思う。また副科で尺八を専攻している学生が一人いたのでワークショップを進行していく上で助けになった。このような試行を通じて音色そのものに対し、より傾聴する鑑賞態度に繋げることの効果が期待出来る。

また後半はアナログシンセサイザーと尺八との音遊びも試みた。最近は安価に様々な玩具の電子音具が入手できる。電子音玩具は、メロディーやハーモニー以前に、音そのものの面白さや音色の変化を楽しむ体験が気軽にできる。小さい子どもには、このような電子音玩具を使った音遊びから、尺八へと繋げることにより、違和感なく尺八古典本曲を鑑賞させることが可能ではないかと予想している。機会があれば試してみたい。

時間が足りなかったので、尺八の音や手を要素として音楽として構造化するまでには到らなかった。次回があれば、このワークショップを前段階として、その応用を進めたいと考えている。

尺八の奏法を活用した音楽づくり 〜「鶴之巣籠」を参考に〜
YouTube: 尺八の奏法を活用した音楽づくり 〜「鶴之巣籠」を参考に〜

2014年9月 7日 (日)

9月3日は後期最初の授業ということで、「みだれ」を題材に基本的なワークショップをしました。

後期は10月から学生によるワークショップをしますので、自分たちなりのワークショップ案を考えてもらえるようにワークショップをしながら手順を説明しつつ進めました。

ワークショップ内容は以下です。

ワークショップ名「みだれによる箏の音楽づくり」

ワークショップリーダー 吉原佐知子

題材 筝曲「みだれ」

使用楽器 箏7面(一人一面)

調弦 平調子

題材説明 「みだれ」は「六段」と同じく八橋検校作曲の段物の一つである。

「六段」は6つの段からなり、どの段も同じ拍数でつくられ、除々に速くなり、六段目の最後だけゆっくり弾いて終わるようにつくられているが、「みだれ」は10段である上に各段の拍数もばらばらで、段の途中でもゆっくりになったり、早くなったり、演奏も奏者によって様々であり、六段より音楽的で自由に演奏されている。

ワークショップの目的

1、箏の代表曲「みだれ」を知り、箏の基本的手法を身につける。

2、日本の音楽と西洋の音楽の違いを発見する。

3、「みだれ」の構造(よく使われている音型をちりばめる。だんだん速くなったり、突然ゆっくりになったり、間に注目)に着目した音楽づくりをする

ワークショップの流れ

1、アイスブレイク(手拍子回し)

・円になって手拍子で一人1回ずつ手拍子を回してだんだん早くしてみる。

・2人組になって手拍子でだんだん早くしたり、だんだん遅くしたりしてみる。最後は間をとって掛け声を入れて一発たたく。

2、吉原のよる「みだれ」の実演を聴く

3、「みだれ」をきいて、自分たちが普段やっている西洋音楽とどこが違うかを一人づつ発表する

「みだれと西洋音楽との比較」生徒の意見

・ベース(一と二のシャン)がずっと一緒

・エンディング(コーダ)がない(ように聞こえる)

・テンポが演奏者まかせ

・主題がない(ように聞こえる)

・一定のビート感がない

・間の取り方

・コーロリンがよく鳴ってる

・自由な感じに聞こえる

・掛け合いみたいなところがある。

4、全体ワークショップ

・「みだれ」の冒頭練習

・よく聞こえてきた手法やフレーズの練習(コーロリン、シャンテンシャンテンシャンテン、テントンシャンなど)

5、グループに分かれて音楽づくり

約束

・だんだん早くして途中で一度ゆっくりする。また早くしてゆっくりしておわる。

・ベースは一と二のシャンをどこかにいれて自由に考える

・よく聞きあって自由に音を重ねる

・3で気付いた、日本らしい音型や間合いを取り入れる

6、発表

みだれによる音楽づくり① 邦楽ワークショップ
YouTube: みだれによる音楽づくり① 邦楽ワークショップ

みだれによる音楽づくり② 邦楽ワークショップ
YouTube: みだれによる音楽づくり② 邦楽ワークショップ

7、講評、感想

 一つ目のグループはリーダーのベースの上で他の3人が掛け合いをしたり、まねっこしたり、メロディーを重ねたりと、とてもよく聴きあって、速さの調整も上手にできていて、しっかりとした、構造が見える作品になっていた。

 一方、二つ目のグループはリーダーがしっかりベースを弾いてだんだん早くしたり遅くしたりしているのだが、その上で他の二人はそのリーダーの速さに合わせてそれぞれがパターンやメロディーを重ねているだけにとどまり全体を聴いての音楽づくりまで出来ていないように聞こえた。ベース以外の二人がお互いをもっと聞きあって構造を考えて掛け合いをしたり少し相手のまねをしたりと、よく聞きあって音楽づくりをしてくれればさらに良い作品になったと思う。最後もみんなで一と五のシャンで終わる約束だったが、ベースの子のみで終わってしまったのは、自分のことで精いっぱいで回りが聞こえていない証拠なので、今後はもっとよく回りの音を聴いて音楽づくりをしてもらうように導いていきたいと思う。

また、学生たちは全員、洋楽器などの邦楽以外の生徒達であり、後期の1回目で久しぶりに箏に触れての音楽づくりだったため、音もまだしっかり出せていない学生もいるので仕方ないところもある。これからの授業でもどんどん邦楽器に触れて、良い音が出せるようになれば、余裕も出てきてまわりの音も聞こえてくると思うので、今後もたくさん邦楽器に触れてもらえるように授業を進めていきたいと思う。

以上

授業担当 吉原佐知子 記