2018年10月

2018年10月18日 (木)

■実施日 9月19日

■担当:山口賢治

■テーマ:尺八のアタック法(アタリ)と各種技法を用いた音楽づくり

■用意する楽器:アダプター付き尺八

■概要とねらい。
全員、音が出せるように原則尺八アダプター(尺八歌口部に装着するリコーダーの吹き口のような吹奏補助具)をつけた楽器を用いた音楽づくりを行った。アダプターを装着すると尺八の吹奏法の特徴である顎の動きが制限されてしまうので、フィンガリングのみの技法を音素材とした。
尺八は原則としてタンギングを行わないので、フィンガリングによるアタック法を用いる。このアタック法の体系をアタリを呼ぶ。アタリは曲や流派、奏者によって様々であり、この技法と息の使い方で曲調が左右される。
具体例を示しながらアタリの技法の説明と実践を通じて、西洋の管楽器の基本技術であるタンギング奏法とは異なるアタック法について知ってもらうことと、その他各種の尺八技法を組み合わせて音楽づくりを試みた。

■プログラム
①尺八の持ち方、吹き方の復習をした。
②フィンガリングによる連続音の処理やアタック法の説明を行った
③それらの技法を用いた曲の演奏例として古典本曲「本手調子」を演奏した。
④「本手調子」の中で頻繁に出てくる”ツレ(FG)”の音形を例アタリの実例を示し、アダプター付き尺八で真似をして貰った。
⑤トレモロやトリルの奏法に該当するコロコロ、カラカラなどの技法の説明と実践した。
⑥2群に分けて、上で試した技法による音の集積音群の音量変化により音楽づくりを行った。さらにソリスト(独奏尺八やピアノをソロ楽器に指定)を決め、集積音群を背景にソリストによるアドリブ演奏も試みた。集積音群をコントロールする指揮役とソリストやソロ楽器の組合せを変えて、何回か試奏した。
⑦ ここまでを参考に各自が特殊技法や手を作って一人ひとり発表してもらった。重音とトレモロの組合せなど様々なアイディアで一本の尺八出る音の多様性を感じてもらった。

■まとめ
⑦のプログラムセクションで、他人が発した音や音響に対して、他の学生にランダムに指名して、何かしらのコメントをしてもらった。ワークショップで大切ことのひとつのコメント力が求められる。受講学生は各々専門の音楽知識と技術を持っており、それを元に音楽表現する経験は積んでいるが、コメント力はまた経験が浅く未熟な面があると感じられた。次回より学生がリーダーとなってワークショップを行うが、リーダーには特にこのコメント力が必要に迫られるので、今後、この点を学ぶ機会として各学生に頑張ってもらいたいと思っている。

■授業日:9月26日
■担当教員:山口賢治
■ワークショップリーダー:ロック&ポップス学生
■テーマ:メロディーのくっつけっこ遊び 
 〜短い音形断片の連結による旋律づくり〜
■実施概要
ひとり一人がつくった短いリズム断片や旋律断片を数珠繋ぎにして、フレーズを紡ぎ出す方法による音楽づくりを行った。

参加者Aの提示音形 ♩♩♩✓
参加者Bの提示音形 ♪♩♪♩✓
  ↓
AとBを繋げて ♩♩♩✓│ ♪♩♪♩✓
    ↓
参加者Cの提示音形 ♬♬♫♩♩
  ↓
AとBとCを繋げて ♩♩♩✓│ ♪♩♪♩✓│♬♬♫♩♩
  ↓
参加者Dが提示音形 ♬♪♬♪♫♩
  ↓
AとBとCとDを繋げて ♩♩♩✓│ ♪♩♪♩✓│♬♬♫♩♩│♬♪♬♪♫♩
以下同様

上記の原理に従い、様々なヴァリエーションで音楽づくりを行った


YouTube: リレー形式による旋律作りとその応用

 

■考察
フレーズの連なりが、長くなるにつれてメロディーが憶え切れなくなることが予想されるので、4〜5名までに留める予定であった。しかし受講生は訓練を受けた音大生なのでどこまでフレーズを長く記憶できるかにチャレンジしてみた。リーダーを務めたヴァーカルの稲川さんは大変優秀で、どんなに旋律断片の連なりが長くなっても、すべて順番通り記憶し、再現して歌うことができた点に高い評価が与えられる。リズムや旋律の記憶と再現の訓練に役立つ方法論であった。