【実施日】2014年6月11日 【担当】山口賢治
【主旨】
日本の伝統音楽において(特に江戸の近世邦楽において)聞かれるオトシの音形は日本人にとても馴染み深い。その音形は歌舞伎の中や尺八音楽、山田流箏曲の中だけでなく日本人作曲家の芸術音楽の中にも見いだせる。日本の伝統音楽では1拍自体が伸縮する音楽とされ、オトシの音形は連打の各拍が順次縮まり、切迫した音空間をつくる。 このオトシの音形を手がかりに音楽づくりを行った。
【用意するもの】
拍子木、木魚など、細かい刻みが容易に演奏出来る打楽器。
【実施したプログラム】
① ”オトシ”の音形の説明と参考映像を見た。
歌舞伎の幕開きの拍子木、山田流箏曲「竹生島」、尺八本曲「鹿の遠音」
② 手拍子で”オトシ”の音形による音楽づくりを行った。
a 全員一緒。
b 1人→2人→3人と重ねる。
c ペアで掛合形式。
d 順次重ねる。ランダムに重ねる。 等
③ 現代邦楽や日本人作曲家の作品で扱われている”オトシ”の音形の使用例を鑑賞した。
「第3風動」杵屋正邦 作曲
「饗宴」黛敏郎 作曲
「祝典序曲」三善晃 作曲
「クロノプラスティックII」湯浅譲二 作曲
「箏とオーケストラのためのENGEN」一柳慧 作曲
④ 打楽器や声を使って②を試した。
【まとめ】 日本人に馴染み深く、誰でも普通にできる音形であり、欧米人にとっては拍自体を凝縮していく音楽概念が元来ないので”オトシ”の音形を叩くことに苦労するとの説がある。日本のリズムの概念を知り体験する良い題材であり小学生から老人まで幅広く活用出来ると思われる。この題材をもとにしたワークショップから近世江戸の音楽の鑑賞に結びつけるプログラムも可能であろう。実施プログラム④ではバリエーションを広げるために様々な種類の打楽器を用意したが、音階がプリセットされた楽器の場合は音程の選択に工夫をする必要があると思われる。
オトシは日本人にとって馴染み深いとありますが、メトロノームで練習するというより、感覚で練習するしかない、とても難しいものというイメージがあるので、一番興味深い授業でした。
思っていたよりオトシを使用した楽曲が沢山あって驚きました。また、人によって同じオトシでも幅が広かったり狭かったりと速さが違う所が面白いと思いました。