■実施日:6月18日
■担当:山口賢治
■テーマ:移調の限られた旋法 第2番による音楽づくり
■狙い:移調の限られた旋法 第1番である全音音階による音楽づくりは過去に実例がある。今回は第2番の旋法を用いて音楽づくりを行った。3回転調すると元に戻る第2番の旋法の中でD E♭ F F♯ G♯ A B C Dを選び箏の調絃を行った。理由は尺八の一尺八寸管の筒音Dが中心的な音に当たるため、この調を採用した。
全音音階の場合、旋法上の隣り合う音の間隔がすべて同じ全音なので、旋律を即興で奏でてもフレーズの終止感がはっきりしないことが特徴であるが、第2番は例えばD F G♯ Bを一応のフレーズの納め先の音と定めることが出来る。また旋法上の構成音を使って即興で和音を作る場合、第1番[D(♯5)/D7(♯5)など]に比べて多彩な和音[D D7 Dm Dm7 Cm(♭5) Cdim Cm(♭5)M7など]が拾えることが利点であることを利用した。
■実施プログラム
①前回のオトシの音形の復習をした。
②前回の応用として箏を使ってオトシの積み重ねによる音楽づくりを試みた。
目的:この後の音楽づくりの活用材料にするため
③移調の限られた旋法 第2番についての説明した。
作品例「セリオーソ」浦田健次郎 作曲を鑑賞。
※ 2008年度全日本吹奏楽コンクール課題曲
YouTube: 2008年度課題曲III.セリオーソ*クリニック*
④箏で任意の和音を繋げて奏した。
目的:第2番の旋法の構成音によってつくられる響きを知ってもらう。
⑤ ④の響きを背景にクラリネットで即興のメロディーを載せた。この後、グループに分かれて様々なヴァリエーションの音楽づくりを試みた。下記動画参照。
■考察
2回転調可能な第1番旋法(C D E F♯ G♯ B♭)(C♯ D♯ F G A B)の内、それぞれ四つの音(赤文字)が第2番旋法の中の構成音(D E♭ F F♯ G♯ A B C D)に含まれている。従って箏の場合に押し手や柱を動かすことによって第2番旋法の調絃で第1番旋法の両方の調の演奏も可能である。今回の授業では箏専攻の学生がいないため出来なかったが、今後の課題として第1番旋法と第2番旋法を切り替えて演奏することが考えられる。移調の限られた旋法には全部で7番まであるが、3番以後は隣接する音程が2回以上続けて半音となる箇所があるので、箏の場合を考えると余韻が著しく濁ってしまい、扱いが難しいと思われる。
■まとめ
今回の授業ではクラリネットの学生の活躍が重要な要素となった。滞りなく即興でメロディーを奏でられる人が一人でもいると、作られる音楽の質が劇的に向上することが明らかになった。また複数の奏者が同時にメロディーを即興演奏しても違和感がなかった。
音楽的レベルの高い人はメロディーを即興し、高くない人は任意の和音を演奏することでアンサンブルに参加できるので、様々な音楽レベルの人が一緒に演奏可能な方法として活用が期待できる。初めのうちは、移調の限られた旋法 第2番の音響に戸惑いを持っていた学生もいたが、演奏を重ねるうちに感覚を捉まえてくれたことは流石であった。
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