2022年5月

2022年5月30日 (月)

今回は三味線ワークショップ第2回目、「さくら」をテーマに音楽づくりをしました。
その模様をお伝えします。

『さくらモチーフで音楽づくり』
実施日:2022年5月25日
対象:音大生21名
使用楽器:三味線(HEAの三下り)
目的:三味線初心者が大半を占める中、簡単に会得できる「さ(A)く(A)ら(H)」のモチーフを使って三味線の基本的奏法習得から音楽づくりに繋げ、独自のさくらミュージックへと展開させることを目指す。

〜授業の流れ〜
①楽器準備、調弦、基本バチの練習

②基本奏法・特殊奏法の紹介と練習
⚫︎基本奏法→スクイ、ハジキ、ウチ、スリ
⚫︎特殊奏法→コスリ、アテハジキ、ウラハジキ

③基本奏法・特殊奏法を使用した独自のパターン作りと発表→4拍のパターン

④さくらモチーフの練習

⑤さくらモチーフを使用したパターン作りと発表

⑥グループ実習
7名ずつの3グループに分かれ、「さくらモチーフを使用する」「三味線の奏法を採り入れる」「始まりと終わりを決める」この3つを音楽づくりの約束とし、それぞれのグループでさくらモチーフを使用した音楽づくりをしてもらった。
中間発表でのアドバイスやお互いのグループの音楽観を踏まえてそれぞれのグループで音楽をまとめ、最後に発表会を実施。


YouTube: さくらモチーフで音楽づくり①〜2022年


YouTube: さくらモチーフで音楽づくり②〜2022年


YouTube: さくらモチーフで音楽づくり③〜2022年



グループ①は津軽三味線のさくらがリードする中、独自のさくらパターンを重ねて伴奏とし、正統路線のさくらミュージックが出来上がった。さくらパターンの変化やリズムの導入、拍の変化などをもっとつけるとより音楽が広がっていくと感じた。

グループ②はリーダーの特徴的なリズムに乗せて順番に自分の音楽を重ねていき、最後はコスリで統一して終わった。音楽が重なっていく度に複雑な音形となり、いなくなる度にシンプルな構成になっていく様は、強弱や拍での変化をつけなくとも音形のうねりが感じられ、印象的であった。

グループ③は邦楽の音楽観とは全く異なり、ジャズ的な音楽づくりであった。三味線を打楽器に見立てた部分や歌を採り入れたのもポイントであった。個人的にはLiveを見ているかのようで気持ち良く楽しめた。

このテーマは毎年初期頃に授業で扱っているが、今回の音楽づくりを聴いて改めて、三味線の打楽器的展開と和音展開の可能性の幅を感じた。
今後の授業でどのような三味線の可能性をみせてくれるか、非常に楽しみである。

授業担当:市川香里 

2022年5月 3日 (火)

■実施日 2022年4月27日
■担当 山口賢治
■テーマ
宮島達男のデジタルアートから音楽を考える
〜《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》の作品構造から音楽づくり〜
■概要
発光ダイオードカウンターなどのデジタルデバイスを使用した作品が代表作がある現代美術家である宮島達男の作品構造をヒントに音楽づくりを試みた。
宮島達男


YouTube: SOPH.20th Project "SOPHNET. x 宮島達男"

宮島作品の《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》はデジタルカウンターが平面上縦横に配置されており、一定の周期で1から9までのカウント表示とブランク(数字表示がオフ)を繰り返す。表示周期は各々のカウンターごとに異なり、巨視的には赤い光による表示と明滅の揺らぎが立ち現れる。


・音楽構造と数列の関係について、フィボナッチ数列(1 1 2 3 5 8 13 21)によって組み立てられたバルトーク作曲『弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽』を鑑賞し、参考とした。


YouTube: Béla Bartók Music for Strings, Percussion and Celesta

・音楽づくりでは最も単純な等差数列であり《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》の「1から9までのカウントとブランク」の構造を活用して音楽づくりに取り組んだ。

【授業記録動画】


YouTube: 宮島達男の作品をもとに音楽づくり
コロナの状況でのマスクを着用のため聞こえるように大きな発声ができないためあまり聞き取れない点はご了承ください。
 ①0’00”〜0’29”
  全員で「1から9までのカウントと休符」を繰り返し唱えた。音楽づくりのベースとなる構造
  の確認作業となる。 
 ②0’30’”〜1’19”
  「1から9までのカウントと休符」を繰り返しを各々異なる周期で唱えた。
 ③1’20”〜1’55”
  ②を背景に声のによる自由な掛け合い(コールアンドレスポンス)を行った。
 ④1’56”〜2’44”
  ①で休符のかわりに楽器の音を挿入した。
 ⑤2’45”〜3’19”
  リズムドローンを加えて④を行った。
 ⑥3’20”〜4’03”
  ②の方法で休符のかわりに楽器の音を挿入した。
 ⑦4’04”
  「1から9までのカウント」に合わせて、数字が増えるにつれて音数、音程、音量がなどが
  漸次的に増大する発音イベントを重ねる試みを行った。あまり狙い通りの効果を実現する
  前に時間切れになってしまった。

■授業を振り返って
 音具や楽器を持参して参加したくれた学生が多かった。トーンチャイムに三味線、ヴァイオリン、ベースipadなどに加えて北欧の楽器であるニッケルハルパも加わった。様々な音色が混じり合い、とても色彩感のある音響を実現できたことに興味が持てた。
 この授業では単純なカウントに基づく音楽づくりであった。そのため子供でも老人でも、楽器がまったく演奏できない人でも参加できる方法論であり、様々な応用が可能なプログラムであると同時に、音楽と美術作品の関連について学ぶことができる話の流れも組み立てることができた。
 音楽づくりのテーマや手法は同じ音楽の世界の中から見つけ出すことが多いが、音楽以外の芸術分野から音楽づくりのコンセプトを取得することも考えられる。遊び、美術、さらには広くは建築や工芸とも音楽との相互関係を見出し、文化的に共通する背景を探ることによって新しい音楽教育プログラムを拡げることができる。音楽づくりワークショップ教育の研究や実践が普及している現在、さらなる発展のためには隣接する分野や文化にも目を向ける段階ではないと思った。