通常の歌声でなく日常の話し言葉を題材に音響空間をつくることを試みた。会話の中の言葉の響きやニュアンスをあらためて音素材として取り出し、再構成した。また様々な工夫をして声の変調を試みた。
【実施日】2016年6月29日
【実施プログラム】
① 0:00 〜 リズムに合わせて発声練習を行った。
アエイウエオアオ カケキクケコカコ
サセシスセソサソ タテチツテトタト
ナネニヌネノナノ ハヘヒフヘホハホ
マメミムメモマモ ヤエイユエヨヤヨ
ラレリルレロラロ ワエイウエヲワヲ
これを題材に様々な声によるヴァリエーション展開を試みた。
② 0:17〜 輪唱形式で重ねた
③ 0:42~ ①を題材にリズムを十六分音符2個と八分休符のリズム単位で唱えた。
④ 1:21~
グループAは八分音符の連なりで唱え、グループBは③で行った十六分音符2個+
八分休符のリズム単位で唱えた声を重ね合わせた。
ズレの効果によりエコーのような響きが得られた。
⑤ 1:45 ~
④の試行を発展させ、さらにグループCとして、付点八分音符+十六分音符の
リズム単位を重ね、さらに複雑な響きを得た。
⑥ 2:31~
「あいうえお」の中から声の断片を選び、下記の二つルールで声を重ね合わせた。
ルール1:一人ひとつのことしかしてはいけない。
例)Aの人は「あー」のみ、Bの人「うえうえうえ」のみ、、、発声する。
声の高さやニュアンスは自由に変えて良い。
ルール2: 声は繰り返して出す。繰り返しの周期は自由。時々休んでも良い。
他人の声を良く聞き、全体の音空間の中で自分の声をどのような音質、高さ、
タイミング、ニュアンスで発すれば効果的かつ音楽的になるか常に意識させた。
⑦ 3:15 ~ ⑥の試行を歩き回りながら行った。空間的な響きの移動企図した。
⑧ 4:12 ~
⑦のヴァリエーションで、各自が定めた発声テーマとはまったく別のサウンド
イベント(別の言葉やボディーパーカッション、パフォーマンス)を1回だけ
行っても良いルールを加えた試行を実施した。
どのタイミングでどんなことをすれば目立てるかを課題とした。
⑨ 5:01~
基本的に⑦のルールに従うが、途中で発声のテーマを変更を可とし、音響の変化や
発展を狙いとした。
⑩ 6:09 ~
湯浅譲二 作曲「ヴォイセスカミング」を観賞後、この作品を参考に電話の呼び出し
や会話を想定して声遊びを行った。
⑪ 7:34 ~
声を変調する様々な方法を試みた。紙コップ、セロハン、ボイスチェンジャー、
ヘリウムガス(パーティーグッツ用の安全なガス)などの手段を試した。
⑫ 7:59 ~ ⑪で試した方法を組み合わせて⑩を行った。
【まとめ】
特に詳細な打ち合わせを行わなくても、お互いが感応し合い、自然に声の重なりのピークが形成されたり、暫時的にフェイドアウトして終止するなどの現象が起こり、受講学生の感受性と豊かさと繊細さにあらためて感心させられた。日常の言葉は通常”意味や内容”と”語感や声質”が一体的に結びつけられている。しかし、これを一旦分解し再統合する作業を通じて声や言葉についての新しい発見や、自覚が促されると思われる。今後の課題として、これらの声遊びのワークショップから日本の伝統芸能の<声><語り>へと繋げらるワークショッププログラムを考えたい。(担当:山口賢治)