2015年10月

2015年10月17日 (土)

「呼び掛けと応答、循環」要素による音楽づくり2 〜尺八を使って〜

 

担当:山口賢治  実施日:2015年10月14日

 

概要:前回(10月7日)のワークショップ

「呼び掛けと応答、循環」要素による音楽づくり 〜声、手拍子、トーンチャイムを使って〜

について、同様の方法論に基づき、楽器を用いて音楽づくりを行った。この授業では尺八を用いた。但し、通常では尺八の場合、楽器に習熟していないと発音が困難である。そこで、下記の写真に示すリコーダーのヘッド形状をしたアダプターを装着した練習用尺八を用意した。これにより誰でも音を容易に出すことが可能となる。また尺八を用いるメリットとして、尺八の基礎音D、F、G、A、C(一尺八寸)は音階上に半音を含まないため、ランダムに音を配置しても、偶発的に音楽的な旋律線や和音が得らやすい。

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実施内容

音楽づくりの素材として、前回の基本テーマを変形して

【基本テーマ】

呼び掛け「○○ちゃん、遊っびましょ。」→応答「あとで、」→ブリッジ 「尺八吹奏」

として、これを発展させて様々な音楽づくりを試みた。


YouTube: 「呼びかけ、応答、循環」要素による音楽づくり2

以下に動画の説明をする。

① 円陣を組み、基本的テーマを受け渡す。ブリッジ部分は全員でC音を吹く[0:00~]

② ブリッジ部分の吹く音程を各自任意に選ぶ。吹くたびに音程を変えている。和音の構成音(D、F、G、A、C)は変わらないが、音の重なり方が毎回ランダムに変化するので、微妙な響きの違いを聞くことができる。[0:25〜]

③ ブリッジ部分の尺八発音を常に3名とし、順番に音を重ねる。各人は出す音程を予め定めてあり、自分が吹く番が回ってきたら、定められた音をロングトーンで吹く。これは同じ音程が2名以上で重ならないようにし、常に3和音の響きを発生させるための工夫がしてある。[1:08〜]

④ ③のロングトーンをトリルにする。[1:48〜]

⑤ ④の呼び掛けと応答の部分を声でなく、尺八に置き換える。[2:20〜]

⑥ Aが呼び掛けのテーマを吹きながらBに近づく。Bはそれを受けて応答のテーマをAに向かって演奏する。次にAとBが任意の音程でブリッジを演奏する。さらに続けてBは呼び掛けのテーマを吹きながらCに近づく。Cはそれを受けて応答のテーマをBに向かって演奏し、BとCでブリッジを演奏。これを繰り返す。[2:57〜]

⑦ ⑥を2組同時進行で行う。ひとりの人Eが二人から同時に呼びかけられてしまったら、Eは2回誰かに呼び掛け演奏を行う。これにより2組同時進行に戻すことができる。[3:41〜]

⑧ ⑦を基音が異なる尺八で行う。ここではD、Es、Eの3種類の尺八が混在している。[5:03〜]

⑨ ⑧の場合、音の重なりが複雑になりすぎたので、メトロノームに合わせて演奏している。[7:28〜]

 

まとめ:楽器を使った一例として尺八を用いたが、鍵盤ハーモニカでもまったく同様の試みが可能である。何故なら鍵盤ハーモニカの黒鍵のみを使用すれば、その音の配列は一尺七寸管の尺八の基礎音と一致する。一尺七寸管はあまり普及していない長さの楽器なので、数多く揃えることは困難であるが、リーダーやサポーターが一尺七寸管の尺八、参加者が鍵盤ハーモニカの組み合わせは可能である。機会があれば、この組み合わせも実施してみたい。

その他の楽器でもこの方法論の応用の可能性はある。但し、この方法論を活用する上での注意点は、使う音の事前設定にある。各自がランダムに音程を選択しても全体として音楽の形になるように音や演奏法の選択枠を計算して設定することが必要である。尺八を用いる場合は、この点で音や演奏法の選択枠の設定が容易にできることにある。

この日の授業には外部の人の参加が2名いた。一人は本学出身者でかつて在学中に邦楽ワークショップを受講していた経験者、もう一人はその人の連れで楽器は何もやっていない人。普段の授業では音楽を専門にする学生ばかりを相手にしているので、これは特殊な状況といえる。今回は一人だけだったが音楽的訓練をほとんど受けていない人が加わって、一緒に受講してくれる貴重な機会となった。音楽にあまり習熟していない人がどのような反応を示すのか、どの程度理解してくれるのか、ワークショップに加わって一緒に楽しんでもらうことができるのかなどについて知ることができた。最初は戸惑いながらも、笑顔を覗かせながら最後まで受講してくれたので、成果はあったと判断している。

2015年10月10日 (土)

「呼び掛けと応答、循環」要素による音楽づくり

~声、手拍子、トーンチャイムを使って~

 

担当:山口賢治  実施日:2015年10月7日

概要:声、手拍子、トーンチャイムを使って音楽づくりを行った。基本的な音楽づくりから、段階的に高度な課題を課した。ワークショップ参加者の年齢や音楽的能力に応じて、援用される方法論を実施した。

 

目的:受講学生に音楽づくりの主要素である”呼び掛けと応答、循環”を認識もらうことを念頭においた。今後、学生が自分の専門や得意な分野を応用、活用してワークショップ案を計画、作成する上で、骨格を示すことが狙いであった。

 

実施内容

音楽づくりの素材として、下記のテーマを示した。

【基本テーマ】 呼び掛け「○○ちゃん、遊っびましょ。」→応答「あとで、」→ブリッジ「手拍子」

これを繰り返す。(循環)

 

上記の基本テーマとして、様々な展開を試みた。


YouTube: 「呼びかけ、応答、循環」要素による音楽づくり


以下に動画の説明をする。

 

① 円陣を組み、基本的テーマを受け渡す。[00:00~]

 

② 手拍子部分に” 呼び掛けと応答”を付加する。[00:55~]

 

③ Bの手拍子部分をボディーパーカッションに発展させる。[01:36~]

 

④ 基本テーマの動きを加える。「あとで、」の応答を行った人は後ろに下り、次の人に受け渡す。これを繰り返すことによって、円陣が自動的に広がっていく。空間的な音の広がりが形成され、学校の体育館など広いスペースで効果があがる。[02:15~]

 

⑤ ④を発展させ呼び掛けの対象者を隣の人に限らず、任意に指名出来るようにする。呼び掛ける人Aは指名した人Bに向かって前に3歩近づく。指名された人Bは後ろに一歩下がる。一歩下がった後、Bは次に任意の人C向かって3歩近づき、Cは一歩下がる。これを繰り返す。これによって揺らぎの要因が付加される。[05:00~]

 

⑥ ひとり一個ずつトーンチャイムを持ち、①の基本形の手拍子部分をトーンチャイムの打音に置き換える。これにより和音の要素が加わる。[06:58~]

 

⑦ ④の手拍子部分をトーンチャイムの打音に置き換える。[07:28~]

 

⑧ ⑥のトーンチャイム打音部分について、円陣の並びの順番に打音を1回ずつ回す。これによりトーンチャイムの音の連なりによる旋律要素が加わる。[08:27~]

 

⑨ トーンチャイムを一人2本持ち、⑧を行う。和音の連なりの要素が加わる。[09:00~]

 

⑩ 基本テーマの変形型として「○○ちゃん遊ぼ」→「はーい」→手拍子と定める。

このテーマの手拍子部分の打数を5回、4回、3回、2回、1回と変化させていく。これにより音楽的持続の中での凝縮感を体験させる。[10:36~]

 

⑪ 二つのグループA,Bに分けけて⑩を同時進行で行う。但しAグループは手拍子を5回、4回、3回、2回、1回と打数を順次減らしていき、Bグループは1回、2回、3回、4回、5回と増やしている。出来上がった音楽のユニットをさらに組み合わせて、より発展させた音楽づくりの一例を示している。[11:14~]

 

⑫ ⑪での組合せ例の提示を受けて、学生からの提案があり、⑩の手拍子部分を全員が同時に叩くのではなく、円陣に沿ってひとりずつ叩く方法を試みている。[11:37~]

 

⑬ ⑩の手拍子部分をトーンチャイムで行う。最初は円陣に沿って『呼びかけと応答』を行い、次に任意に『呼びかけと応答』をしている。[12:26~]

 

 

まとめ

音楽づくりの基本要素『呼び掛け、応答、循環』によって音楽づくりを行い、これに『変化、揺らぎ』を加えることによって、音楽を発展させることの実例を示した。今年度は受講学生数が少ないが、参加学生は協力的でやりやすく、また課題に対する対応力の高さが評価できる。意欲ある学生には、参加人数の多いワークショップの場を経験させる機会を与えたいと感じた。