2014年9月10日 (水)

尺八の奏法を活用した音楽づくり 〜「鶴之巣籠」を参考に〜

■テーマ:尺八の奏法を活用した音楽づくり 〜「鶴之巣籠」を参考に〜

■担当:山口賢治  ■実施日:H26年9月10日

■狙い

「鶴之巣籠」は尺八の名曲として様々なヴァリエーションが存在する。どのヴァリエーションにおいても共通して玉音、コロコロの技巧が効果的に使用されている。尺八の場合、初心者はすぐには音が出ないが、尺八アダプターを使用すれば奏法上の制約を受けるものの、一応誰でも音を出すことが可能である。尺八アダプターを装着することを前提に全員が尺八を演奏し、玉音、コロコロの奏法を中心に音楽づくりを行う。玉音、コロコロの奏法を試みる過程を通じて、単純な構造でありながら多彩な音色が得られる尺八の特性の一端を少しでも体験してもらうことが狙いである。

■想定対象者:小学校高学年以上

■実施プログラム

① 尺八の基本的な吹き方の説明した。鳴らない人にはすぐにアダプターを装着してもらった。

② 各地方に伝わる様々な「鶴之巣籠」の演奏例を聴き、共通した表現法や奏法を聴き取ってもらった。鶴の巣籠 (奥州系/都山系/ 蓮芳軒・喜善軒所傅)、巣鶴鈴慕(琴古流)

③ 玉音、コロコロの説明と練習を行い、「鶴之巣籠」の様々な手の一部を模倣してもらった。

④ ②③を受けて自分の「鶴之巣籠」の手(音形パターン)を作ってもらい、トリル、トレモロ、玉音などを組み合わせて、音響の断片をつくってもらった。その後、2グループに分かれて創作発表した。

⑤アナログシンセサイザーと尺八との音遊びを試みた。

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■まとめ

尺八の場合、音楽を構成音のひとつひとつを取り出しても、その音そのものに様々な音色やフォルムなどの多様な要素が含まれている。一般的に西洋クラシック音楽において使われる管楽器の音にくらべて、尺八は音に含まれる情報量が多いと言える。伝統的な尺八音楽はこのような音の特性を効果的に活かした曲が多い。また尺八の演奏技巧に、このような音の特性を顕在化させるための工夫の体系が含まれている。例えば西洋の管楽器の場合、転調によって大きく音色が変わることはないが、尺八の場合には調によって全体の音色感が大きく異なる。なので音色や音量のバランスを考量し、運指や使用する楽器の長さの選択の判断がとても重要になる。 「鶴之巣籠」は、こうした尺八が有する特性を最大限に発揮した曲の例である。また鶴の誕生から死までのストーリーを曲構成に当てはめた曲もあり、「鹿の遠音」とならんで、名曲であると同時に音楽づくりの題材としても適している。 

尺八アダプターを装着したとはいえ、尺八の特徴である指孔が5つあり、かつ指孔が大きく、キーがついていない特性は失われないので、尺八の持つ性質の一部は体験できたと思う。学生達に「鶴之巣籠」の特徴的な部分の模倣をしてもらったが、最初は戸惑いを感じていたようであった。しかし自分なりに尺八の音のひとつひとつの感触を得ることはできたと思う。また副科で尺八を専攻している学生が一人いたのでワークショップを進行していく上で助けになった。このような試行を通じて音色そのものに対し、より傾聴する鑑賞態度に繋げることの効果が期待出来る。

また後半はアナログシンセサイザーと尺八との音遊びも試みた。最近は安価に様々な玩具の電子音具が入手できる。電子音玩具は、メロディーやハーモニー以前に、音そのものの面白さや音色の変化を楽しむ体験が気軽にできる。小さい子どもには、このような電子音玩具を使った音遊びから、尺八へと繋げることにより、違和感なく尺八古典本曲を鑑賞させることが可能ではないかと予想している。機会があれば試してみたい。

時間が足りなかったので、尺八の音や手を要素として音楽として構造化するまでには到らなかった。次回があれば、このワークショップを前段階として、その応用を進めたいと考えている。

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