■実施日:6月25日 ■担当:山口賢治
■テーマ:移調の限られた旋法 第2番による音楽づくり
■狙い:前回(6月18日)の授業で行った試み
https://blog.senzoku.ac.jp/hougaku/2014/06/post-1000.html
の続きとして移調の限られた旋法 第2番(D E♭ F F♯ G♯ A B C D)をもとに箏群の調絃を変形して音楽づくりを試みた。この旋法を分解抽出して、以下の四つの五音音階をつくりそれぞれ1面づつの箏に振り分けを行った。
A1(C D F♯ G♯ B C)
A2(F♯ G♯ C D F F♯)
B1(E♭ F A B D E♭)
B2(A B E♭ F G♯ A)
①A1の旋法を短3度づつ移調してA2、B1、B2の旋法が得られる。
②A1とA2は移調の限られた旋法 第1番のC D E F♯ G♯ B♭と四つ音で共通音
B1とB2は移調の限られた旋法 第1番のE♭ F G A B C♯と四つ音で共通音
④A1、A2、B1、B2全ての音を合成すると旋法 第2番(D E♭ F F♯ G♯ A B C D)
になる。
箏について旋法 第2番の構成音を用いつつ、旋法 第1番に近い響きを抽出しやすく工夫し、十七絃、キーボード、管楽器は旋法 第2番のままとして実験を行った。
■実施プログラム
①前回の授業の復習と今回の授業の狙いの説明をした。
②演奏の構成の参考として一柳慧 作曲「襞」(ヴァイオリンと十七絃の二重奏曲)を
鑑賞した。これを参考にペアを組み下記の構成で音楽づくりを行った。
Aブロック…二つの楽器のぶつかり合い対峙する。
Bブロック…一方の楽器が上行するパターン音形を奏し、これを背景にアドリブ
独奏を行う。
Cブロック…パターン音形の演奏とアドリブ独奏を入れ替える。
Dブロック…コーダ
③全員で上行するパターン音形を背景にふたりづつアドリブを回す。
④箏がオトシの音形を基盤に和音をつくり、十七絃、キーボード、管楽器で旋律を
絡め合わせた。
YouTube: 移調の限られた旋法 第2番による音楽づくり その2
■考察と反省
旋法 第2番の構成音から全音音階的な響きの分離を意図したが、明瞭な響きが得られにくく、また分割した旋法から紡ぎだした旋律も明確ではなかった。この問題を解決するために途中で下記の調絃替え
A1(C D F♯ G♯ B C)⇆(C D F♯ G♯ B♭ C)
A2(F♯ G♯ C D F F♯)⇆(F♯ G♯ C D E F♯)
B1(E♭ F A B D E♭)⇆(E♭ F A B C♯ E♭)
B2(A B E♭ F G♯ A)⇆(A B E♭ F G A)
を行うことが考えられる。今回は試せなかったので今後の検討課題である。
■まとめ
今回たまたま居合わせた現代邦楽研究所研究生に参加してもらい、試演を聴いてもらったり一緒に演奏に加わってもらった。一人でも外部の目が入ると良い意味で緊張感が出た。
今期の課題のひとつに邦楽器と洋楽器(専攻楽器)の混成による音楽づくりがある。邦楽、洋楽どちらかの音楽様式に偏らせた場合、つくられる音楽に不自然さ、違和感や陳腐さが表出される危惧があるので、慎重さが求められる。移調の限られた旋法による音楽づくりの場合は、洋楽(伝統的なクラシック音楽)とも日本の伝統音楽の要素とも異なるので、互いの音楽の伝統や様式から等距離にあると方法論であると言える。双方を融合させる音楽づくりの手法として移調の限られた旋法 第2番は有力であること思われる。
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