実施日:6月5日
担当:味府美香
実施概要:『音あそびするものよっといで』のアイディアを使って
『Sound Fun』は、イギリスの作曲家トレヴァー・ウィシャートの1975/1977年の著書です。日本では坪能由紀子・若尾裕によって1987年に翻訳『音あそびするものよっといで(1)(2)』として出版され(2012年に再出版されました),学校現場や音楽づくりのワークショップなどで取り入れられてきました。今回は,『音あそびするものよっといで』のアイディアの中から「手拍子まわし」「穴うめゲーム」「くっつけっこ」をお箏(平調子)を使って挑戦してみました。お箏でやってみたことで新たなアイディアが生まれたり,お箏でやるからこその面白い音や音楽も出てきました。
1.「手拍子まわし」
「手拍子まわし」は一人が1つの手拍子を順番にまわしていく音楽ゲームです。手拍子では,音をまわすスピードや,音の大きさ,音色,音をまわす方向,音を2つにするなど工夫して楽しむことができます。これをお箏でやってみました。
①一人1音をまわす→13弦の中から学生はなるべく人とかぶらない音を選んでいきました。しかし,13弦も使える音があるのに一人1音ではつまらない…ということで,音の数を増やし,自分の持ち音の間と自分の前の人と自分の間も工夫することにしました。音を複数にしたことで,単音だけでなく和音を使う学生も出てきて,一人ひとりの音が連なると素敵なメロディーになっていきました。
②音色の工夫(特集奏法)も入れ,さらにドローンを入れることにしました(ドローンは味府が担当)。
③一番音数の多いグリッサンドを順番にまわしてみました。ウェーブのように音が連なって,下から上へ,上から下へ,長いグリッサンド,短いグリッサンドなど色々な組み合わせを楽しむことができました。
2.「穴うめゲーム」
「穴うめゲーム」は,リーダーのリズムの休みの拍に手拍子を入れる活動です。お箏を使うと音高が出てくるので,リーダー(味府)と学生で即興的に一つのメロディーができます。最初は,リーダーの休みの拍に音を1音だけ入れていた学生も徐々に1拍を複数の音やリズムを工夫して埋めるようになって,どんどん複雑な面白いメロディーができていきました。
3.「くっつけっこ」
「穴うめゲーム」の発展として取り入れました。「穴うめ」では,1拍をそれぞれが工夫しましたが,「くっつけっこ」は,リーダーの前半のメロディーをうけてその続きを即興でつくってくっつける活動です。活動の節々に『さくら』のメロディーの断片が何度か出てきていたので,リーダー(味府)は「さくらさくら」を前半のメロディーとして,学生はその後にメロディーを足していきます。リーダーのメロディーと学生のメロディーがくっついて一つのメロディーになっていきますが,学生一人ひとりのメロディーが充実してくると,「さくらさくら」(のメロディー)を挟んだ一種のロンド形式のように展開してきました。
今回,取り組んでみたこれら3つの音楽ゲームを箏でやってみて,音高のある楽器での即興の可能性と即興的な音楽の広がりの二つがあったことに気づきました。それは,お箏が音高のある楽器でありながら,旋律を即興的につくる際に間違いが起こりにくいということ,使用できる13音に加え押し手や弾き色による半音,さらには特殊奏法を加えることができるために音楽的広がりをつくることです。そして,即興的な音楽をつくることができたのにはトレヴァーの音楽ゲームのルール(=音楽のつくり方)が大きなよりどころとなっていました。今後は,こうした音楽のルールをもっと学生と共有したり自分たちで見つけ出したりしながら,箏や他の邦楽器での即興的な音楽活動を展開していきたいと思います。
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