2013年5月 2日 (木)

尺八による音楽づくり 〜音響から音楽へ〜

■テーマ:尺八による音楽づくり 〜音響から音楽へ〜
■担当:山口賢治 ■実施日:5月1日
■ワークショップの狙い
 ①尺八を実際に演奏し、尺八の楽器特性を知る。
 ②限られた音素材を用いて、音楽の材料となる音響をつくる。
 ③音響から音楽へのするための方法を考える。
今期は昨年からの継続受講学生が少ないので、音楽づくりについて基本的に立ち返って授業を行った。一般的に未経験者にとって尺八の場合、旋律を演奏するのための楽音をすぐに出すことは難しい。さらに音楽づくりに必要な音材料が箏や三味線ほど最初から比較的容易かつ豊富に用意できない問題や、吹奏するための体力の問題も有する。従って、今回は尺八を使って極めて限られた材料で音楽を作るためのはどうしたら良いかについて考える機会を提供した。また、この尺八を使った音楽づくりの方法論はリコーダーにも応用できると考えられる。
■実施プログラム
1、尺八を吹いてみる。
尺八の基本奏法の説明と練習を行った。音が出ない人にはアダプターを装着してもらい、自分が出せる音を各自で探してもらった。
2、尺八の楽器や音楽の特徴を知ってもらう。
尺八の特性についての説明と見本演奏を行った。廣瀬量平 作曲「鶴林」を抜粋で実演し、尺八の特徴としてポルタメント奏法と音色の変化や多彩さを知ってもらうことを意図した。
 
3、集団で音響を生成させる。
尺八の風息音などをベースに音を集団で重ねて一定の音響をつくった。耳を澄ませて聴くと、音響の中に様々な音色の生成消滅があることが聴き取ってもらうことを意図した。
音響から音楽へと移行する準備として尺八の風息、箏と三味線の軋みや擦れ音など非楽音を主体とした音楽作品も存在すること示すために細川俊夫 作曲「断章」1~尺八,箏,三絃のための〜の一部分をCDで鑑賞した。
4、音響から音楽へ
ここで、音響から音楽にするためにはどうすれば良いか、暫く皆に考えてもらった。手がかりとして作曲家、湯浅譲二 氏が著書や曲解説で述べている言葉『音楽とは音響エネルギーの推移であり、コスモロジーの反映である』を紹介し、この考え方の前半を借用し音響現象のパラーメータを具体的に決めて、そのパラメータを時間軸に対して変化させてることを試みた。学生からの意見でまず音量を推移させる提案が挙った。しかし個々の奏者が音量を制御することは今回は難しいので、一人ずつ音を重ね、音源数を増減させる方法を採用した。
 
次の音程を推移させることを提案があったので、トレモロを主体に音程を上行させてみた。リーダーを決めて、リーダーの音の動きに全員が同調することとした。
5、音楽づくりの様子と発表
2つのグループに分かれて、音響から音楽にすることを試みてもらった。具体的に時間軸に対して推移される要素と変化のさせ方を共有してもらうことを約束ごととして、あとは自由に5分でつくってもらった。

YouTube: 尺八をよる音楽づくり 〜音響から音楽へ〜4

5、授業を終えて
出席者全員が邦楽ワークショプを今年度はじめて受講する学生であり、開講して日が浅いので、当初は戸惑いの雰囲気があった。しかし、要所要所でリーダーを指名したところ、指名された者は的確に課題に沿って、音楽をつくりまとめることが出来た。当然ながら音楽づくりの手法をまだ多く有していないため、短い音楽の断片しかまだ作れなかったが、経験を積めば優秀なワークショップリーダーがこのクラスから何人も輩出されるであろう。
授業終了後に尺八に興味を持ってくれた学生が何人かが質問に訪れ、希望者には楽器を貸し出した。また今月末から行われる末長小学校の出張ワークショップにも早速、参加希望者がいるなど意欲や積極性があり、今後にとても期待が持てる。

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コメント

尺八の1回目のワークショップとしては、新しいアプローチですね。
さすがです!
今週のお筝も何か新しいことを考えます!

尺八は生まれて初めてやりました。
なかなか音が出ず難しく感じましたが音が好きなので楽しく受講できました。