5月9日。今回から順次、実際に学生にワークショップをリーダーとして担当してもらうことになります。今年、初めて履修した学生には実施の様子を見てもらうため、複数年受講している現代邦楽コースの学生から担当してもらうことにしました。初回は4年生、箏専攻のMさんです。Mさんは受講3年目のベテランなので、ワークショップの計画、実行、報告までを課題としました。以下にMさんのワークショップ実施報告を記載します。
【Mさんの実施報告】
テーマ:「春の海」を用いてのコールアンドレスポンス
実施日:2012年5月9日
◆ワークショップの実施目的、目標
宮城道雄作曲「春の海」という馴染みのある曲を題材にし、楽曲中にもあるコールアンドレスポンスを用いて、楽しみながら和楽器に触れる。コールアンドレスポンスを通して人とのコミュニケーションを深め、楽しんでもらう。
◆用意する楽器や人員
箏・その他打楽器
◆実施プログラム
1、アイスブレイク
体をほぐしリラックスすると同時に、コールアンドレスポンスとはどういうものか、実際に手拍子をして体験してもらった。
・手拍子回し
①4拍叩き、4拍でレスポンスのリズム回し。
②最初の1拍を叩き、残りの3拍でレスポンス(計4拍)のリズム回し。
2、「春の海」鑑賞、解説
山口先生と吉原先生に実際に「春の海」演奏していただき、曲中にコールアンドレスポンスがどこにあるかを確認した。
3、実習
・「春の海」の調弦
BDEFABDEFABDE
一二三四五六七八九十斗為巾
(音楽づくりで使用した箏の調弦は上記の完全四度上)
「春の海」冒頭部分に当たるBDE(一二三、六七八、斗為巾)を用いて実際に楽器に触れ、コールアンドレスポンスを実施した。
①BDEを用いてのドローン、ソロまわし。
②最初の1拍を弾く(ドローン)→残り3拍をレスポンス(計4拍)を回していく。
③最初の2拍を弾く(ドローン)→残り3拍をレスポンス(計5拍)を回していく。
④4拍好きなリズムで弾く→前の人の真似をし、さらに4拍好きなリズムでソロまわし。
4、グループ分け、発表
・2つのグループに分け、「冬の海」というテーマで音楽づくりをしてもらった。
ここで長沢勝俊作曲「冬の一日」を参考資料として鑑賞した。
冬の情景の表し方として、太鼓をドンドンと静かに叩き雪がしんしんと降っている様子や、高い音のグリッサンドなどを使って氷や雪が光を浴びてキラキラする様子などを解説した。
さらに条件として
◎BDEをどこかに入れる
◎コールアンドレスポンスを必ず用いる
◎様々な奏法を使う
と提示し、音楽づくりを行ってもらった。
Aグループは歌舞伎の雪のシーンで奏される太鼓のゆっくりとした連打をBグループは鈴の音を音楽の中に取り入れて、冬のイメージを形にした。
◆まとめ
準備不足もあり戸惑う部分もあったが、学生達の高い音楽性と適応力のおかげで授業が進んでいってくれたよかった。音楽づくりでは、1対1だけのコールアンドレスポンスではなく様々な形のコールアンドレスポンスを行ってくれた。さらに「冬の一日」ででてきた奏法などをさっそくたくさん用いてくれて、各々の冬の海がよく出来上がっていた。
以上。
【担当講師からのコメント】
学生ワークショプの初回ということで、開始当初は緊張ぎみだったMさんでしたが、箏の吉原先生のサポートもあり後半は落ち着いて、進行していました。「冬の海」をテーマとした音楽づくりに際して、「冬」の音楽における表現例を実例に即して事前に提示した点が評価でき、これによって音楽づくりが単なる気分やイメージで音を出すだけに終わってしまうことを避け、音楽の形を明確にすることに役立ちました。今回は箏の奏法や表現法についての説明や見本演奏について吉原先生のサポートがありましたが、今後はこれも自身でできるようになれば、リーダーの役割が担えるようになるでしょう。
また音楽づくりの際、邦楽コースの学生がグループ内で上手くサポーターの役割を果たし、他コースの学生をまとめつつ発表に持っていきました。今まで研鑽を積んだ成果を垣間みることができましたが、今後は他コースの学生にもそのサポーターの役割が果たせるような仕組みを考える必要も感じました。
また、邦楽ワークショップの際に使える打楽器が少ないので、テーマに合わせて事前に借りて用意できるようしたいと思います。それによてつくられた作品のクオリティーも上がることが期待出来ます。
担当教員:山口賢治
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